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映画「北の桜守」の一場面(C)2018「北の桜守」製作委員会
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映画「北の桜守」の一場面(C)2018「北の桜守」製作委員会

注目映画紹介:「北の桜守」吉永小百合120本目 激動の時代を生き抜いた母と息子の絆描く

 女優・吉永小百合さんの120本目の出演映画「北の桜守」(滝田洋二郎監督)が10日から丸の内TOEI(東京都中央区)ほか全国で公開される。太平洋戦争末期の1945年から70年代の、いわゆる激動の時代を生き抜いた母(吉永さん)と息子(堺雅人さん)の絆を描いた感動作だ。北の凍てつく大地の中で、深い愛と強い心で息子を守り抜いた母と、そんな母に寄り添い支える息子のつながりに胸を打たれる。

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 1945年5月。南樺太で暮らす江蓮(えづれ)家の庭に、てつ(吉永さん)が大事に育ててきた桜の花が咲く。8月、ソ連軍が南樺太に侵攻。夫・徳次郎(阿部寛さん)は出征し、てつと2人の息子は、「満月の日、4人そろって桜を見よう」という徳次郎との約束を心の支えに、北海道の網走へと向かう。やがて時は流れ71年。米国に渡っていたてつの次男、修二郎(堺さん)が米企業の社長として帰国。札幌での新店オープンに追われる中、てつの異変を知らせる連絡が入り、修二郎はてつが暮らす網走へ向かう……という展開。ほかに篠原涼子さん、佐藤浩市さん、岸部一徳さんらが出演する。

 「北の零年」(2005年)、「北のカナリアたち」(12年)に続く「北の3部作」最終章となる今作。てつは、これまで吉永さんが演じてきたヒロインとはやや趣が異なる。鏡の中の“友達”に手を振ったり、長ネギであらぬ誤解をされ途方に暮れたり……。過去のつらい体験のせいで記憶が途切れがちになり、そんな自分に戸惑うてつに、何度も胸を締め付けられた。

 てつと修二郎の過去を巡る旅に“同行”しながら、当時、北の大地で起きた出来事と、それを乗り越えた人々の苦労に思いをはせた。意表を突かれたのは、ケラリーノ・サンドロビッチさんの演出による舞台演劇とのコラボレーションだ。太平洋戦争下、樺太で実際にあった悲劇をどう語るかで頭を悩ませた製作陣が、考え出したアイデアだという。最初こそ驚いたが、その場面があらわれるたびに心になじんでいき、フィナーレを目にしたときは、てつの苦労が報われた気がして、「てつさん、よかったね」と声をかけたくなった。(りんたいこ/フリーライター)

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