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スティーブン・スピルバーグ監督の最新作「レディ・プレイヤー1」が、20日に全国で公開された。直前に主演のタイ・シェリダンさんとヒロイン役のオリビア・クックさんが来日。映画の見どころや、撮影中のスピルバーグ監督の演出法、さらに映画に登場する1980年代に対する思いなどを聞いた。
映画は、アーネスト・クラインさんのSF小説「ゲームウォーズ」が原作。時は2045年。荒廃した街で暮らす、シェリダンさん演じる17歳のウェイドが、日ごろからのめり込んでいるVR(バーチャル・リアリティー)の世界「OASIS(オアシス)」を開発したジェームズ・ハリデーの遺産を巡り、世界中のプレーヤーと、OASIS内に隠された宝の卵の争奪戦を繰り広げるアクションエンターテインメント作品だ。クックさんは、ウェイドがOASIS内で知り合う謎の美女アルテミスを演じている。
◇VRの世界に驚嘆
現実とOASIS、二つの世界で物語は進む。OASISは仮想現実。幻想的な世界を作り出すために、モーションキャプチャーやアニメーションが駆使された。映画を見たクックさんは、「とにかくびっくりしました。VRの世界を作ったアーティストの方々の才能には、本当に頭が下がる思いです。とても美しく、私の想像をはるかに超えていました」と驚きを隠さない。
シェリダンさんがそれに補足する。「映画を最初に見たときはオリビアと一緒でしたが、彼女、隣に座る僕の腕をつかんで息をのんでいました(笑い)。アニメーションの部分も素晴らしかったし、映像は美しくて衝撃を受けました。撮影のときは、オリビアの細かい表情や動きが本当にきれいだと思いながら演技していましたが、デジタル処理されてアバターになったらどうなるんだろうと好奇心でいっぱいでした。そうしたら、本当に細かいところまで表現されていて……」とスタッフの仕事を手放しでたたえる。
◇シュールな体験
映画には、80年代のポップカルチャーが多数登場する。それらを見つけるのも楽しみの一つだ。96年生まれのシェリダンさんが、80年代と聞いて思い浮かぶのは、「さまざまな冒険映画」。今作は、それらの作品に「オマージュをささげて」おり、シェリダンさん自身は、今作に登場する「アイアン・ジャイアント」が一番のお気に入りだという。「自分のアバターがその(アイアン・ジャイアントの)隣に、しかも、スピルバーグ監督の作品の中で立っているのは、シュールな体験でした」と喜びを語る。
一方、93年生まれのクックさんに80年代は、「映画や音楽、いろんなアートを見ても、色彩にあふれていて、愛に満ちていて、生きることの喜びが表れている、いわゆる祝祭の時代」と映っているそうで、クックさん自身は、故ホイットニー・ヒューストンさんや故ジョージ・マイケルさん、さらにスピルバーグ監督の「バック・トゥ・ザ・フューチャー」(85年)の主人公マーティ・マクフライが思い浮かぶという。とりわけ「バック・トゥ・ザ・フューチャー」こそ、祝祭の時代を体現しており、「カラフルで、テクノロジーの進化によって、これからなんでも可能だという気分に満ちている映画」と評した。
◇「もっと」を連発するスピルバーグ監督の演出
スピルバーグ監督からは、撮影中は、よく「すごくよかったよ。でも、もう1回。今度はもうちょっと速く、もっと大きく。大きすぎることはない」と演出されたというシェリダンさん。クックさんも同様で、「『もっと怒って』とか『もっとショックを表して』と言われるのだけれど、これ以上やるとあごが落っこちちゃうというぐらいでした(笑い)」と振り返る。
シェリダンさんとクックさんによると、スピルバーグ監督は「子供のようなところがあって、常に最先端の技術や流行を追いかけたいという欲求を持っている。すでに超一流の監督なのに、もっと学びたい、もっと向上したいと努力なさっている」(クックさん)そうで、そういった監督の熱意が、自然とスタッフやキャストに伝染し、「僕たちも触発されて、一番いい演技を見せたいという思いに駆られる」(シェリダンさん)のだという。
◇映画のようなことはすでに起こっている
映画は、VRの世界にのめり込むことの危険性と、現実世界の素晴らしさについても語っている。だからこそ「この映画に興味が持てた」というシェリダンさん。「この作品が語っているのは、実際の自分に取って代われるものはないし、バーチャルな世界が現実に取って代わるものではないということです」と指摘し、「僕たちの周りには、スマホやパソコン、ソーシャルメディアがあり、デジタル環境が整い、いろんなものがつながっている。そのせいで、僕自身が、あたかも『OASIS』の中のアバターのような感覚に陥ることがあります。まさに今、僕らが置かれている世界で、映画のようなことが起きているのです。この映画を見た人たちが、そういうことに少しでも気づいてくれたらいいな、という気持ちはあります」と話す。
クックさんも、「すべて、『ほどほどに』が大事だと思います。テクノロジーが発達すれば、医学や科学、教育はその恩恵を受けます。もし旅行ができなくても、(VRの世界でなら)中国やヒマラヤに行くことができるし、さまざまな地形を楽しむことができます。でも、現実の世界というものにそれなりに配慮しないと、たとえテクノロジーが向上しても、その恩恵にあずかれなくなると思っています」と自戒を込めて語る。
◇「金田のバイクのお陰でクールになった」
今作には、日本ではおなじみの、ガンダムや名優の三船敏郎も登場する。ただ、シェリダンさんは、今作に出演するまでガンダムを知らなかったといい、そのことを日本で話すのに恐縮しながら、「ロサンゼルスの試写でも、ロンドンの試写ででも、ガンダムが登場すると大騒ぎになるんです。ガンダムが出てきたとき、日本の皆さんはどんな反応を示すのかな」と興味津々の様子。
かたやクックさんも、自身が演じるアバターが乗る、「AKIRA」に登場する金田のバイクを「実は知らなかったのでリサーチしました」と正直に打ち明けた上で、「(映画を見た観客から)いろんなコメントをもらいますが、私のキャラクターは、あのバイクに乗ったことでさらにクールになったと言われるんですよ」と笑顔で語った。映画は全国で公開中。
<タイ・シェリダンさんのプロフィル>
1996年11月11日生まれ、米テキサス州出身。14歳のとき映画「ツリー・オブ・ライフ」(2011年)でデビュー。「X-MEN:アポカリプス(16年)でサイクロップスの青年時代を演じた。他の出演映画に「MUD マッド」(12年)、「ダーク・プレイス」(15年)などがある。19年公開予定の「X-MEN」シリーズ最新作「X-Men:Dark Phoenix(原題)」で、再びサイクロップスを演じる。
<オリビア・クックさんのプロフィル>
1993年12月27日生まれ、英マンチェスター出身。米テレビドラマ「ベイツ・モーテル」(2013~17年)にエマ・ディコーディ役で出演。映画出演作に「シグナル」(14年)、「ぼくとアールと彼女のさよなら」(15年・日本未公開)、「切り裂き魔ゴーレム」(16年)などがある。
(インタビュー・文・撮影/りんたいこ)