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俳優の阿部寛さん主演の映画「のみとり侍」(鶴橋康夫監督)が18日からTOHOシネマズ日比谷(東京都千代田区)ほかで公開される。エリート侍から一転、女性に愛をお届けする“添い寝業”に左遷され、戸惑いながらも奮闘する主人公を阿部さんが演じている。一歩間違えれば“艶っぽい”作品に陥りそうな内容だが、そこは「後妻業の女」(2016年)を手掛けた鶴橋監督。軽妙洒脱(しゃだつ)な演出で、色っぽくもくすくす笑える人情喜劇に仕上げている。
十代将軍徳川家治時代の江戸。越後長岡藩で勘定方書き役を務める小林寛之進(阿部さん)は、ある歌会の席で藩主の牧野備前守忠精(松重豊さん)に恥をかかせたことから、猫の蚤(のみ)とりに左遷されてしまう。実は、のみとりには、女性に愛の奉仕をする“添い寝業”という裏の顔があった。戸惑いながらものみとりを始めた寛之進の初めての客は、亡き妻千鶴にうり二つのおみね(寺島しのぶさん、2役)だった……という展開。
豊川悦司さん、斎藤工さん、風間杜夫さん、大竹しのぶさん、前田敦子さん、桂文枝さんらも出演している。故・小松重男さんの短編集「蚤とり侍」から、鶴橋監督が「蚤とり侍」「唐傘一本」「代金百枚」の3編を選び出し、1本の脚本にまとめた。
1月に公開された「祈りの幕が下りる時」(福澤克雄監督)でシリアスな演技を見せていた阿部さんが一転、女に添い寝するのみとり侍を、飄々(ひょうひょう)と演じている。のみとり業初日、他ののみとりの男たちに交じって、「猫ののみ、とりましょう!」と奇声を上げながら町を練り歩く姿の、愉快なことといったらない。
おみねに奉仕する場面などキワどいシーンも笑いに変えてしまうところが“鶴橋マジック”。寛之進が、豊川さん演じる江戸随一の色男、近江屋清兵衛から“のみとり技術”を指南される場面は、そのシュールな表現方法に驚きながら、ニヤニヤしてしまった。(りんたいこ/フリーライター)