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綾野剛&北川景子:「パンク侍、斬られて候」撮影秘話語る 奇想天外で「何十年も残るカルト映画になる」

 映画「パンク侍、斬られて候」(石井岳龍監督)は、一人の浪人が仕事欲しさにかけたはったりで自らドツボにはまり、さらに世間にとんでもない惨事をまき散らしていく……という壮大かつ破天荒なエンターテインメント時代劇だ。今作で「超人的剣客」ながら、長らく“失業中”の主人公、掛十之進を演じた綾野剛さんと、ヒロインのろんを演じた北川景子さんに、印象に残るシーンや撮影中のエピソードを聞いた。

 ◇やり過ぎて止められたダンスの練習

 このインタビューのあとに開かれたイベントで、綾野さんは「宣伝不可能」と表現していたが、その言葉通り今作は、本格時代劇でもあり、アクション映画でもあり、ギャグ、さらにラブストーリーでもあるというジャンル分け不可能な作品だ。しかもストーリーは奇天烈(きてれつ)極まりない。そんな今作において、綾野さんが印象に残るシーンに挙げたのは、北川さんのダンスシーンだ。

 綾野さんによると北川さんは「真面目だし、普段ダンスを踊ってきていないからこそ、少しでもよくしたいという精神」から、本番までの間に「とてつもないほど」のダンスの練習をしていたそうで、そのあまりの熱心さに現場のスタッフから、「ちょっと休みましょう」と止められたほどだったという。

 綾野さんが台本を読んだときは、その場面が、ろんが「一番狂っているピーク」になると思っていたそうだが、実際には「一番“平常運転”に見えたので、さすがだなと思いました」と、北川さんの“なりきりぶり”をたたえる。そして、そのときのろんが、腹の前で手を回す動きを、「『北川景子』という人があれをやっていることが最高だなと(笑い)。なかなかあの動きを許容できる女優さんはいないですから」と賛辞を惜しまない。

 それを隣で聞いていた北川さんは、そばでずっと見ていてくれた綾野さんから「よかったよ」と言われたことに勇気づけられたそうで、その言葉を信じて、「恥ずかしがるともっと変になっちゃいますし、特殊な踊りだったので思い切ってやろうと。練習時間を十分設けていただいて頑張りました」とにっこり。

 ◇吹き替えなしの綾野の立ち回りに感嘆

 かたや北川さんが絶賛したのは、綾野さんのアクションシーン。とりわけ、村上淳さん演じる刺客の真鍋五千郎と戦う場面は、台本を読んだときは「どうやって撮るんだろう」と首をかしげていたそうだが、出来上がった映画を見て、「本気のアクションなのにギャグが入っていて、痛々しいだけではなく笑える。笑わせるために全力を懸けているところがすごいなと思いました」と舌を巻く。

 なんでも綾野さんは、高所から飛び降りるシーンで「かかとをやっちゃった」そうで、そのシーンも含め、北川さんは「吹き替えなしで立ち回りをされているのは知っていましたが、これを、あの暑い京都でやっていたんだなと驚きました」と恐れ入っていた。

 ◇猿の数に驚嘆

 北川さんが「なぜか感動した(笑い)」というのは、花火が上がるシーン。花火はCG(コンピューター・グラフィックス)によるものだが、そのあとに続くシーンで、「美しいものを見たなあ」という気持ちで演技をしていたという北川さんは、映画を見て、シーンが「つながってよかった」と喜ぶ。

 CGの威力は、後半の合戦シーンでも見ることができる。その場面は、綾野さんによると「グリーンバックで、風景がまったくない」中での撮影だったという。これに、北川さんが「(完成した映画を見たとき)こんなに猿が増えた、こんなに人が増えているとびっくりしなかった?」と聞くと、綾野さんも「びっくりしたよ。めちゃくちゃ猿いる!と思って(笑い)」と同意。ちなみにそのシーンでは、最も多いところでワンカットに人間が約3000人、猿がなんと1億匹も映っているそうだ。

 今作を綾野さんは、「一見あり得ないでしょ、ということが、あり得る世界になっている」とした上で、「何十年も残っていくカルト映画に、多分なると思いますし、逆にこういう作品を作ったら『パンク侍っぽいね』といわれる“お手本”になる作品だと思います。なかなか“二番煎じ”が出てきづらいのではないかと思います」と映画のユニークな仕上がりに自信を見せていた。映画は全国で公開中。

 <綾野剛さんのプロフィル>

 あやの・ごう 1982年1月26日生まれ、岐阜県出身。2003年俳優デビュー。主なテレビドラマに、NHK連続テレビ小説「カーネーション」(11年)、「最高の離婚」「空飛ぶ広報室」(共に13年)、「コウノドリ」シリーズ(15年、17年)。映画に「そこのみにて光輝く」(14年)、「新宿スワン」シリーズ(15、17年)、「怒り」「日本で一番悪い奴ら」「64-ロクヨン-」(いずれも16年)、「武曲 MUKOKU」「亜人」「ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~」(いずれも17年)など。石井岳龍監督作品には「シャニダールの花」(13年)、「ソレダケ/that’s it」(15年)に続いて今作が3作目。

 <北川景子さんのプロフィル>

 きたがわ・けいこ 1986年8月22日生まれ、兵庫県出身。2003年にモデル、女優として芸能活動を開始。主なテレビドラマに「謎解きはディナーのあとで」シリーズ(11~13年)、「悪夢ちゃん」シリーズ(12~14年)、「HERO」(14年)、「家売るオンナ」(16年)、「西郷(せご)どん」(18年)など。映画に「間宮兄弟」(06年)、「パラダイス・キス」(11年)、「ジャッジ!」(14年)、「の・ようなもの のようなもの」(16年)、「破門 ふたりのヤクビョーガミ」「君の膵臓をたべたい」「探偵はBARにいる3」(いずれも17年)など。待機作として9月公開の「響-HIBIKI-」、11月公開の「スマホを落としただけなのに」がある。

 (取材・文・撮影/りんたいこ)

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