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女優の黒木華さん主演の映画「日日是好日(にちにちこれこうじつ)」(大森立嗣監督、13日公開)は、一人の女性が“お茶”を習い始めたことをきっかけに、人生が豊かに彩られていく様を描いていく。この作品のために、お茶を初めて習ったという黒木さんに、役作りや見どころについて聞いた。
◇変化したお茶に対するイメージ
映画「日日是好日」は、エッセイストの森下典子さんの自伝エッセー「日日是好日 『お茶』が教えてくれた15のしあわせ」(新潮文庫)を映画化。エッセーでは、茶道教室に通い始めたころからの、森下さん自身の体験とお茶の魅力がつづられている。映画では、黒木さんが主人公の典子を演じている。また、典子のお茶の師匠となる武田先生を9月15日に亡くなった樹木希林さんが、典子と共にお茶を習い始める同い年のいとこの美智子を多部未華子さんが演じている。
黒木さんは、典子を演じるにあたり、約1カ月間、茶道の稽古(けいこ)を積んだ。それまでお茶には、「マダムたちが集まってする高尚なもの」というイメージがあり、茶室で最も重要とされる掛け軸の見方や、奥深い茶わんの世界は「分からない」と思っていたそうだが、実際にお茶に触れ、「掛け軸を絵のように眺める。その上で、描いた人のことを教わると、難しく構えていたけれど、もっと簡単なところから入ってよかったんだなということに気づきました。このまま続けていくと、また違った世界が見えるのだろうなと、ちょっと門を開けたぐらいの経験をさせていただきました」と話す。
◇原作者を演じる
典子は、原作者の森下さん自身を反映している。原作者がそばにいることは「本当に心強かった」という半面、当初は恥ずかしさとともに「ご本人と違っていたらどうしよう」と不安を覚えたという。しかし、「私は私なりに想像する典子さんを演じようと思いましたし、典子さんがお茶に出合って、お茶に対する態度や、お茶との関わり方がやっぱり(映画の)肝だと思っていたので、そのあたりはすごく大事にやらせてもらいました」と役作りを振り返る。
黒木さんは今回、20歳から45歳までを演じる。現在、28歳の黒木さん。自身がまだ経験していない年齢を演じることは「結構難しかったです」と明かす。「若い頃は、自分の経験値で想像できますが、年を重ね、いろいろな経験をした女性のたたずまいというのは、やっぱりなかなか出せないと思いました。それに、(典子が)お茶を続けてきた25年間分の重さというものを、どうしたら表現できるのだろうと思いましたが、そこは、大森監督やメークさんと相談しながらやっていきました」と明かす。
年を重ねた典子を演じる際、気をつけたのは、実際の森下さんが、「お茶をたてていらっしゃるとき、まとうものが、柔らかくしなやかでありながら、しっかり立っている感じがあるんです。それは、お茶を長年続けて来られた方の空気感だと思うのですが、そういう雰囲気をなるべく出せたらいいな、ただ立っている、すっと座る、だけではない丸みというものを、まねできればいいな、と思っていました」と語る。
◇気分転換にすることは
就職での挫折や失恋、大切な人との別れなど、つらいこと、悲しいことがあるたびに、お茶に励まされてきた典子だが、黒木さん自身、気分転換には、映画を見に行ったり、本を読んだり、料理をしたりするという。また、疲れたりすると、大阪にある実家に帰りたくなるそうで、「最近はあまり帰っていないですけど、地元に帰ると完璧にオフになります。(実家では)何もしないと決めています。母が作るご飯を食べて、母とデートする」のが、定番の過ごし方のようだ。また、自宅では、実家に帰った折、たまたま寄ったペットショップで「出会ってしまった」という猫を飼っており、今はその猫に「一番癒やされる」という。
今回の映画は、若い人にこそ見てもらいたいと力を込める。「20代から40代を私は演じていますけど、世代が違うとはいえ、本当にみんなが通る道だと思うんです。それこそ、大学を卒業した人たちだったら就職活動し終えて、自分はこれでいいのかとか、何をしたらいいのかと悩むこともあると思います。今は、好きなことを見つけられる人のほうが少ないと思うんです。その点、この作品は、お茶の世界を描いた映画ですけど、ちょっとした生き方のヒントというか、自分に重ねてみることが、どの年代でもできる映画だと思います」と力を込める。
その上で、「私のようにお茶が遠い存在だった人でも、その面白さにたくさん気付ける内容なので、趣味を見つけてみたいと思っている人には、いいきっかけにもなる映画だと思います」と作品をアピールした。
次回は映画の印象深いシーンや、共演した樹木さんについて聞く。
<プロフィル>
くろき・はる 1990年3月14日生まれ、大阪府出身。2010年、NODA・MAP番外公演「表に出ろいっ!」のヒロインオーディションに合格し、本格デビュー。映画デビューは「東京オアシス」(11年)。「シャニダールの花」(13年)で初主演。「小さいおうち」(14年)で第64回ベルリン国際映画祭銀熊賞(最優秀女優賞)受賞。主な映画出演作に「母と暮せば」(15年)、「リップヴァンウィンクルの花嫁」「永い言い訳」(共に16年)、劇場版アニメ「未来のミライ」「散り椿」(共に18年)。公開待機作に「億男」(10月19日公開)、「ビブリア古書堂の事件手帖」(11月1日公開)、「来る」(12月7日公開)がある。NHK大河ドラマ「西郷どん」、日本テレビ系連続ドラマ「獣になれない私たち」に出演中。
(インタビュー・撮影:りんたいこ)