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直木賞作家の角田光代さんの小説「坂の途中の家」が、女優の柴咲コウさん主演で連続ドラマ化されることが29日、明らかになった。「連続ドラマW 坂の途中の家」と題してWOWOWプライムで2019年春に放送予定。柴咲さんは3歳の娘を持つ専業主婦の山咲里沙子役で、柴咲さんの連続ドラマ主演はNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」以来2年ぶり。
原作は、我が子を虐待死させた女性の裁判に補充裁判員として参加することになった専業主婦の姿を描いたヒューマンサスペンス。山咲里沙子(柴咲さん)は、3歳の娘・文香と夫と3人で平穏な日々を送っていた。あるとき、裁判所から刑事事件の裁判員候補者に選ばれたという通知が届く。対象となる事件は、里沙子と同じ年ごろの専業主婦の安藤水穂が、生後8カ月の娘を浴槽に落として虐待死させたという衝撃的な事件だった。
裁判員の誰かが急病などで欠席せざるを得ないとき、代わりに裁判員を務める「補充裁判員」に選ばれた里沙子は、同じ子供を持つ母として、我が子を殺した水穂に嫌悪感を抱くが、裁判の開廷後、徐々に水穂の境遇に自らの記憶を重ねていく。家庭という密室で、夫婦、親子の間で交わされた言葉は、時に刃物のように突き刺さることがある。里沙子はやがて自身の心に眠っていた混沌(こんとん)とした感情に惑わされ……というストーリー。
連続ドラマ「紙の月」などの篠崎絵里子さんが脚本を手掛け、資生堂、LOTTE、FUJIFILMなどのCMや、映画「おじいちゃん、死んじゃったって。」などを手掛けた森ガキ侑大さんが監督を務める。
また、柴咲さんが赤ちゃんを抱く姿や、ぼうぜんとした表情でたたずむ姿を写し出した場面写真や、ドラマの特報映像も公開された。特報には激しく泣く赤ちゃんの姿やパトカーのランプに照らされる女性の姿、沈んだような柴咲さんの表情などが収められている。
◇柴咲コウさんのコメント
台本を読んだ時、衝撃的に面白く、改めて“普通”とは何だろうということを考えさせられました。主人公である山咲里沙子の役柄と私自身の立場は全く違うとはいえ、違う立場であることをいろいろ活用できたら、と思っています。
立場が違うからこそ、母親役のリアルさや真実味を大切にしたくて、周りの母親たちに話を聞いたり、また無意識に日常生活の中にある母親たちの苦悩を感じるようになりました。表面的な幸せではなく、その裏側にある計り知れない家族や子育てと向き合う姿をしっかり表現できたらと思います。
日常をテーマにしているドラマでも、ここまで深く踏み込んで描いた作品はなかなかないと思います。そういったテーマや描写を避けることなく、真っ向から丁寧に描いている作品です。生きることはきれいごとだけではないし、公私があって、公である社会とのつながりと逆に、その裏側にある日常生活の積み重ねの中で人間というものが形成されていると思います。無意識に生きているけれども、その日々の営みが大切なんだと痛感させられました。多様性を大切にと言われていても、生きづらく狭い世の中だと感じる瞬間がありますが、そういった社会を変えるには一人一人の意識が大切なので、この作品がそのきっかけになることを願っています。
◇角田光代さんのコメント
舞台が家庭と法廷で、動きが少ないので、映像化は難しいだろうと思っていました。
なので決まったときは、びっくりしました。
私は篠崎さんの脚本が大好きなので、どんなドラマになっているか楽しみです。小説では描かれていない部分・描けなかった部分が、一番、期待してしまうポイントです。
柴咲コウさんは、芯がとても強い女性というイメージがあります。私の書いた里沙子はすごく弱いので、きっとこの里沙子を柴咲さんが強くしていってくれるに違いないと思っています。
◇篠崎絵里子さんのコメント
角田光代さんが紡いだこの物語の終盤に、ある情景が描かれています。そこにあったのは「子育て」という密室でもがいているすべての母親への救いでした。小さな命を預かる重圧。善良で無理解な助言。弱った心を刺す正しい言葉。閉塞感。劣等感。自責。子供を愛するが故の母親の苦しみには果てがありません。
彼女たちに必要なのは何か、夫は、家族は、どう向き合うのか、答えを探す旅です。重いです。けれど、凜(りん)とした強さと壊れそうな繊細さを併せ持つ柴咲コウさんをはじめ、魅力的なキャスト・スタッフのお陰で極上のエンターテインメントに仕上がりました。恐れずにまず一話、ご覧いただけたら幸せです。
◇森ガキ侑大監督のコメント
今回、この角田光代さん原作の「坂の途中の家」を演出するにあたり、興奮と緊張が交互に押し寄せてきます。この今まで描かれてこなかった社会的問題を鋭く描かれている中、自分の経験値だけで演出できるのか日々葛藤でした。
しかし、多くの母親に取材を重ねていっている中、自然とその母親たちに背中を押されていました。
いま、男である自分がこの社会的テーマを演出する意味がある。
そう信じて準備と覚悟ができた瞬間、脚本の篠﨑さんがとても繊細に、そして大胆に登場人物の葛藤を表現してくれました。
あとは、自分がスタッフ全員でこの物語を丁寧に丁寧につむいでいき、世の中の母親が子育てに悩み、苦しみ、もがいている現実に正面からぶつかりたいと思いました。
そして、素晴らしすぎるキャストの方々とこの作品を一緒に作れる喜びを抑え切ることができません。
必ず素晴らしい作品にして世の母親たちを救うことができればと。