映画「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」のメーンビジュアル(C)2018「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」製作委員会
俳優の大泉洋さん主演の映画「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」(前田哲監督)が、28日から丸の内ピカデリー(東京都千代田区)ほかで公開される。全身の筋肉が徐々に衰えていく難病の筋ジストロフィーを患いながら、人生を前向きに生き、2002年に亡くなった鹿野靖明さんと、鹿野さんを支えたボランティアの交流を描いた感動作。大泉さんは、見事ななり切りぶりで鹿野さんを演じている。
幼い頃に筋ジストロフィーを発症し、34歳には首と手しか動かせない鹿野靖明(大泉さん)。それでも病院生活を拒み、ボランティア(ボラ)に支えられながら自立生活を送っている。ボラの一人で医学生の田中久(三浦春馬さん)の恋人、安堂美咲(高畑充希さん)が鹿野の家を訪れる。鹿野は美咲を新人ボラと勘違いし……というストーリー。
原作は、渡辺一史さんのノンフィクション「こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち」(文春文庫)。萩原聖人さんや渡辺真起子さん、宇野祥平さんがベテランボラを演じるほか、竜雷太さん、佐藤浩市さん、原田美枝子さんらが出演している。
主人公は深刻な病を抱えているが、映画はすこぶる面白い。笑いと涙のバランスが絶妙だ。印象に残る場面やせりふは数々あるが、心をつかまれたのはジンギスカンデートの場面。バンドの演奏に合わせて、車いすを操作しながら踊る鹿野は本当に楽しそうで、見ているこちらまでうれし涙が出た。
鹿野はわがままで図々しく、おまけにおしゃべり。でも、なぜか憎めない。それは、鹿野が言っていることすべてがまっとうなことだからだ。だからこそ、あれだけ熱意あるボラが集まり、鹿野を支えたのだろう。実際、鹿野の言葉には何度も背筋が伸びる気がした。
最大10キロ減量したという大泉さん。すてきな映画に仕上がったのは、大泉さんの熱演があったからこそだろう。鹿野の母・光枝を演じた綾戸智恵さんは、少ない出番ながら、息子に対する深い愛を表現した演技が光っていた。(りんたいこ/フリーライター)