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俳優の松坂桃李さん主演の映画「居眠り磐音(いわね)」(本木克英監督)が、17日から丸の内ピカデリー(東京都千代田区)ほかで公開される。人情味あふれるエピソードと緊迫感みなぎる殺陣のシーンが盛り込まれ、緩急のある展開に引き込まれた。映画の時代劇で侍を演じるのは初めてという松坂さんの、主人公の心情が表れた刀さばきにも注目だ。
原作は、累計2000万部を突破する佐伯泰英さんの人気シリーズ。坂崎磐音(松坂さん)は江戸での勤番を終え、幼ななじみの小林琴平(柄本佑さん)と河出慎之輔(杉野遥亮さん)と共に、3年ぶりに故郷・豊後関前藩に戻る。ところがある事件が起き、磐音は琴平の妹で許嫁(いいなずけ)の奈緒(芳根京子さん)を残し脱藩、浪人となる。江戸で長屋暮らしを始めた磐音は、昼はうなぎ屋、夜は両替屋・今津屋の用心棒として働く。やがて幕府が流通させた新貨幣を巡る陰謀に巻き込まれていくというストーリー。
ほかに木村文乃さん、佐々木蔵之介さん、谷原章介さん、中村梅雀さん、柄本明さんらが出演する。
江戸に来てからの磐音は、はた目にはのほほんと暮らしているように見えるが、実は心に深い悲しみと後悔を宿している。自身が置かれた状況を「地獄」と表現し、それを受け入れ粛々と日々を過ごす姿は、見ていて切なくなる。と同時に、その秘めたる強さにシビれた。松坂さんの壮絶な斬(き)り合いに圧倒される一方で、対峙(たいじ)する人間への心情が表れた刀さばきと表情に魅了された。
磐音を取り巻く女性たちにも魅力がある。磐音との祝言を目前にしながら、それがかなわなかった奈緒の決断からは、磐音を愛しているからこその女の意地が伝わり、心を動かされた。磐音をそばで見守る、長屋の大家・金兵衛(梅雀さん)の娘おこん(木村さん)もさばさばした性格が気持ちよく、共感する人は多いのではないか。
磐音の活躍がこれ1作で終わるのは惜しい。「釣りバカ日誌」シリーズでメガホンをとったこともある本木監督で、原作もシリーズ化されている。ここは一つ、映画もシリーズ化を望みたい。(りんたいこ/フリーライター)