映画「影裏」のメインビジュアル(C)2020「影裏」製作委員会
綾野剛さん、松田龍平さんの共演映画「影裏」(大友啓史監督)が、2月14日からTOHOシネマズ日比谷(東京都千代田区)ほかで公開される。原作は、沼田真佑さんの芥川賞受賞同名小説。慣れない土地に転勤してきた男と、そこで出会った同僚との交流、同僚の突然の失踪劇などを通して描き出すヒューマンミステリー。不在中に初めて見えてくる事実……友の本当の姿とは? 人の内面がじっくりとあぶり出される。
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今野秋一(綾野さん)は、埼玉から盛岡に転勤し、会社で出会った日浅典博(松田さん)に次第に心を許していく。日浅との交流は、まるで遅れてきた青春のようで、今野は居心地の良さを感じていた。しかし、日浅が突然会社を辞め、今野は戸惑いを隠せない。しばらくして再会したが、日浅はまた行方をくらましてしまう……。
綾野さん、松田さんのほか、日浅の父親役に國村隼さん、今野と日浅の同僚役に筒井真理子さん、日浅の兄役に安田顕さんが扮(ふん)している。今野の旧友、副島和哉役の中村倫也さんが、存在感あふれる芝居で印象を残す。
男2人の友情の日々が回想されていく。今野の部屋で酒を酌(く)み交わし、光あふれる緑の美しい川で釣りをし、語り合って笑い合う。他愛のない日々を、平穏に幸せに過ごす2人の姿が丁寧に描き出され、見ていて心地良い。綾野さんは内向的な雰囲気の今野、松田さんはつかみどころのない日浅、それぞれ役にピッタリとはまり、今野の目線から日浅という人物のさまざまな顔が見えてくる。
釣り場の穏やかな川の流れから、降り続ける雨音、海の轟音(ごうおん)まで、水の音が今野の心象風景として記憶に残り、時間の経過も感じさせる。日浅とはいったい、どんな男なのか。家族と何があったのか。今野が抱えていることとは……人の多面性が少しずつ見えてきて、最後までスクリーンに吸い寄せられる。
「るろうに剣心」シリーズなどの大友監督が、自身の出身地・岩手を舞台にして撮った。美しい渓流釣りのシーンや、さんさ踊り、レトロな書店やジャズ喫茶など、現地のさまざまな顔をとらえている。音楽は、大友監督とドラマ「白洲次郎」(NHK、2009年)以来のタッグとなる、「あまちゃん」(2013年)などの大友良英さん。(キョーコ/フリーライター)
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