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夏帆:濃密ラブシーンで新境地も「お芝居は難しい」 10年後も「求められる役者」に

 「お芝居は楽しいです。でも、ものすごく難しい。『演じることとは?』と聞かれると、分からないな、というのが今の正直な気持ち。でも、分からないから魅力があるとも思います」。そう語るのは、映画「Red」(三島有紀子監督、2月21日公開)で主演を務める女優の夏帆さん(28)だ。

 一流商社に勤める夫と可愛い娘に囲まれ幸せな家庭を築いていた主婦・村主塔子が、かつて愛した男・鞍田(妻夫木聡さん)と再会し、本当の自分に気付いていく……。直木賞作家・島本理生さんの同名小説が原作の大人のラブストーリー。数々の作品で幅広い役柄を演じてきた夏帆さんは、鞍田の危険な求愛に心を激しく揺り動かされる塔子を、繊細かつ大胆に演じ、新境地を切り開いている。

 妻夫木さんとの濃密なラブシーンも話題だが、「ベッドシーンだから緊張するということはない。そのシーンの間に塔子のいろいろな気持ちが渦巻いていて、それを表現することのほうが大変でした」と振り返り、「これは、恋愛というものが主軸としてある中で、塔子という女性の生き方を描いた作品だと思います」と語る。

◇「今までにない私を…」監督の思いに応え難役に挑戦

 幸せな家庭を築いているように見えるが、かつて愛した男・鞍田と再会し、激しく心を揺り動かされていく塔子は「今までやったことのない役」だったという夏帆さん。「彼女が抱えているものに、私が計り知れないものはきっとあると思う」としながら、「周りから求められることを優先してしまって、なかなか自分の気持ちを出すことができない彼女には、少なからず共感できるところはありました」と明かす。

 今回の出演を決めたのは、過去に映画「ビブリア古書堂の事件手帖」(2018年)で仕事をした三島監督との信頼関係がある。「今までにない私を、塔子という役を通して表現してほしいという思いがあったからだと思うんです。そういう三島さんの気持ちがとてもうれしくて、難しい役ではあると思いましたが、挑戦してみようとお受けしました」と当時の心境を振り返る。

 塔子と再会した鞍田には、ある“秘密”があり、物語は現在と過去が交錯しながら、誰も想像しなかった塔子の“決断”へと向かっていく。映画の結末は原作とは異なっており、夏帆さんは「自分のことよりも、周りから求められるものを優先して生きてきた彼女が、最後に自分の手で何かを選び取ったということに、とても意味があるのではないかと思いましたし、とても映画的なラストなのではないかと思いました」と手応えを明かす。

 「これは、恋愛というものが主軸としてある中で、塔子という女性の生き方を描いた作品だと思います。人は人生において、いろいろなことを選択していかなければいけませんよね。その中で、一体何を選んでいくのかを描いた作品だと思います。見てくださる方にも、そこからいろいろと感じていただけたらいいな、と思います」。

 ◇10年後も「求められる役者でいたい」

 2004年に12歳でCM「三井のリハウス」シリーズの11代目リハウスガールに抜てきされ、広く知られるようになり、2007年に初主演を務めた映画「天然コケッコー」(山下敦弘監督)では、みずみずしい演技が評価され、日本アカデミー賞はじめ数々の新人賞を受賞。その後も数多くの映画やドラマに出演してきた。

 そんな夏帆さんにとって女優という仕事とはどんな存在なのか。「これしかやってきてないですからね。他と比較ができないので分からないのですけど……難しい質問ですね……」としばし考え、「私にとって『芝居とは』と、今ここで言葉にすることはできないです。仕事でもありますし」と言葉を続ける。

 「お芝居は楽しい?」と質問を重ねると、「楽しいですね。楽しいです、すごく。でも、やってもやってもうまくできないというか、ものすごく難しい」と語り、「だから、『演じることとは?』と聞かれると、『分からないな』というのが今の正直な気持ちです。でも、分からないから魅力があるとも思います。一度経験してしまうと、なかなか抜け出せない。そういうものではありますね」と、丁寧に言葉を紡いでいく。

 10年後の未来像をたずねると、「10年後か……。全然想像がつかないですね。楽しくやっていればいいなと思います」と話し、「ただ、役者って、求められないと、どうしようもないので、求められる役者でいたいとは思います」と続ける。

 「だから、いろいろな役を演じてみたいです。そういえば、刑事だったり、医者だったり、そういう職業系の役はあまりやったことがないですね。個人的には日常の延長線にあるような作品が好きなので、そういう(日常的な)ものを演じたいとは思っています。でも、そればかりだと幅が狭くなってしまう。できるうちに、いろいろなことに挑戦したいと思っています」と真摯(しんし)に語っていた。

ヘアメーク:石川奈緒記 スタイリスト:清水奈緒美

<プロフィル>かほ。1991年6月30日生まれ、東京都出身。2004年に「三井のリハウス」11代目リハウスガールに起用され、注目される。「天然コケッコー」(2007年)で映画初主演にして、第31回日本アカデミー賞新人俳優賞など数々の新人賞を受賞。以降、多くの映画やドラマに出演。2020年には「架空OL日記」(2月28日公開)、「喜劇 愛妻物語」の公開が控える。

(取材・文・撮影/りんたいこ)

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