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南野陽子:金髪は「一度やってみたかった」 50代「緩やかに甘えて」無理しない生き方

 女優の南野陽子さんが出演する、吉永小百合さん主演の映画「いのちの停車場」(成島出監督)が公開中だ。4月に行われた同作の完成披露試写会に、金髪姿で登場して話題となった南野さん。金髪は、出演中のドラマの役作りがきっかけだというが、「一度やってみたかった」と明かす。そんな南野さんに、金髪に対する反響や、デビュー当時から変わらない独自の美容法、50代になって「緩やかに甘えつつ」という無理をしない生き方、「冗談みたいに笑って見送られたい」と語る自身の死生観などについて聞いた。

 ◇金髪姿に戸惑いも? 体形変化も「生活感のある女性でいたい」

 放送中の連続ドラマ「ネメシス」(日本テレビ系、日曜午後10時半)での「元すご腕の詐欺師で、現在はマジシャンの美しきコンフィデンスマン」の役作りで金髪にした南野さん。「一度やってみたかった」という大胆なイメージチェンジについて、南野さんは「『もう、(今後は)ないな』と思いました」と笑顔で語る。「鏡を見ても(金髪姿の自分に)あまりついていけない感じで。夫にも『カズレーザーさんがいるのかな』『假屋崎省吾さんかな』と言われ、私は『違う。内田裕也さん!』なんて言ってます」と笑う。

 南野さんといえば、「吐息でネット。」など数々のヒット曲で知られる1980年代を代表するアイドルの一人。映画化もされたドラマ「スケバン刑事」シリーズの印象も強いが、1992年公開の映画「私を抱いてそしてキスして」(佐藤純彌監督)ではエイズに感染したヒロインを熱演し、日本アカデミー賞主演女優賞を受賞。これまでに250作品以上ものドラマや映画に出演してきた。

 20代の頃の役作りについて「当時はストイックで、『私を抱いて~』に出ていた頃は、ウエストも50センチ近くまで絞りました」と振り返る。53歳になる現在は「その当時より15キロ近く増えて、ウエストもプラス数10センチです」とあっけらかんと明かす。それもすべて「役の幅を広げるためにも生活感のある女性でいたい」という芝居への思いからだ。

 「いつどんな役柄のオファーが来てもいいように、できるだけニュートラルな状態を保っている」といい、「今はこんなふうに金髪ですけど(笑い)、普段は髪色や髪形もできるだけ奇をてらわずに、割と緩めの“50代の女性の平均値”を目指しているんです」と説明する。

 無理をしない理由には「更年期の真っただ中」であることも関係しているといい、「あまり自分を追い詰めすぎないためにも、あえてほったらかしにしているところもありますね。『あ、また食べちゃった!』『スカートがきついなあ……』と日々いろいろと思うんですけど、『まあ、人生そんな時もあるでしょう』って、いまはちょっと緩やかに甘えています」と語る。

 ◇「運動しない」は今でも順守 アイドル時代は自ら衣装直しも

 2010年に出版された「南野陽子Beauty Book」(主婦と生活社)では、「ドライヤーは使いません」「基本、運動はしません」など、こだわりの美容法を明かしていた南野さん。11年たった現在も、美容法は「ほぼ変わっていない」といい、「『運動しない』はちゃんと守っています」ときっぱり。

 その理由は、「ジムに通ったりして急激にやせると、やめた途端に必ずリバウンドして、(出演していたドラマ)『半沢直樹』のせりふじゃないけど“倍返し”に遭うので(笑い)。買い物のついでにちょっと散歩をするとか、無理せず続けられることをやるのが一番」と自然体だ。

 同書には「イライラむしゃくしゃした時の解決法」として「家で独り言でブツブツ言う」とあるが、「今でも独り言はよく言ってますね。でも、たまに夫に『え?』って聞き返されて、『いや、(あなたには)関係ない!』と一刀両断しています(笑い)」と日常会話も飾らずに教えてくれた。

 アイドル全盛時代には「衣装も自分で縫っていた」といい、歌番組の控え室に自前のミシンを持ち込み、「生放送直前にヘアスタイルを整えてもらいながら、タタタタタとミシンをかけて襟回りのサイズ直しをすることもあった」そうだ。そのことが意外にも南野さんにとって「良い息抜きになっていた」と明かす。

 現在の役作りにおいても、「割と『使えるものは何でも使っちゃおう!』と考えるタイプなので、ヘアメークや衣装で老婆役に成り切ったりすることに、むしろ喜びややりがいを感じたりもしているんです」と、どんなことにも自らトライする「DIYの精神」が、南野さんが輝き続ける秘訣(ひけつ)の一つなのかもしれない。

 ◇理想の最期は「おいしいものに囲まれて」 棺には栗まんじゅう?

 映画「いのちの停車場」は、現役医師で作家の南杏子さんの小説が原作。救命救急センターに勤めていた医師の白石咲和子(吉永さん)が、ある事件をきっかけに、在宅医として故郷・金沢の診療所で働き始め、患者たちの願いや支える家族の思い、患者の心に向き合うことの大切さに気づいていく……というヒューマン医療ドラマだ。

 今作で小児がんを患う子供の母親役を演じた南野さんは、「娘が病に侵され、余命数日と言われたら、母親としては『なんとしてでも生かしたい』という一心で、『新薬を使わせてください』とも言うだろうし、それこそ、お祓(はら)いでも、おまじないでも、何でもすると思うんですよね」と共感を寄せる。

 「でも、吉永さんや広瀬すずさんらが演じる(在宅医療に携わる)『患者と向き合い、その家族に寄り添ってくださる』人たちとの出会いによって、『今を大切に生きること』を優先させるようになるんです」といい、「誰もが過去に何らかの形で経験していたり、きっとこれから経験するであろう状況を今回演じさせてもらって、気持ちも引き締まりました」と振り返る。

 改めて完成した映画を見て「私自身、普段ドキュメンタリー番組を見て、『自分だったら?』と見つめ直すことが多いので、『いのちの停車場』を見てくださった方たちも『自分が病気になったらどうするだろう?』『もし親だったら……』『もし自分の子どもや、近しい友人だったら……』と自分に置き換えながらいろいろと考えてくださるきっかけになればいいなと思いますね」と、思いを語る。

 自身の死生観も問われる作品だが、南野さん自身の「死生観」を尋ねると、「『あ~、面白かった!』『おいしかった~!』って思って人生を終えられたら、最高じゃないですか。もし自分が病気になって、治療中は食事を口からとれなかったとしても、最期はおいしいものに囲まれて旅立ちたいんです。だから棺には、きれいなお花よりも『栗まんじゅう』をいっぱい入れてほしい。焼いたらいい匂いがするとかね(笑い)。そういうのもいいじゃないですか。冗談みたいに、笑って見送られるのがいいなあって思います」とユーモアを交えて語る。

 そして、「私の母は68歳で亡くなったのですが、最後に手術室に向かうストレッチャーの上で、笑顔でピースをしたんですよ。娘としては『あのときこうしていれば……』とも思うけど、母自身としては良い終わり方だったんじゃないかな。本人が納得して逝くことが、誰にとっても一番幸せなような気がします」と自身も納得の表情で語っていた。

(取材・文・撮影/渡邊玲子)

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