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私が30歳のころ:吉田羊さん「30歳から始めた感謝帳が、今の私を作っています」 インタビュー第2回

 第一線で活躍する著名人の「30歳のころ」から、生きるヒントを探します。初回は女優の吉田羊さん。当時の思い出や、30歳をより輝かせるためのアドバイス、10月に上演される主演舞台「ジュリアス・シーザー」などについて聞きました。(全3回、編集・取材・文/NAOMI YUMIYAMA)

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 吉田さんに、30歳をより輝かせるためにおすすめの映画や本を尋ねたところ、最初に挙がったのは映画「ノマドランド」(2021)。キャンピングカー1台で暮らす、現代の“ノマド(遊牧民)”たちの生き方を描き、昨年のアカデミー賞3部門を受賞した人間ドラマだ。

 「映画館で観た後、涙が止まらなかった大好きな作品です。登場人物それぞれの人生を眺めながら、人生って何だろう、幸せって何だろう、これからの生き方って?と、いろいろ自分に問いかけました。また、30歳の時にこの映画を見たらどう感じたんだろう?とも思いましたので、ぜひ見てください」

 また、30歳のときに見て、役者として衝撃を受けた映画として、犬童一心監督の「ジョゼと虎と魚たち」(2003)も挙げる。

 「当時、私は自分の芝居をいかにアップデートできるかということに関心があり、どうしたらリアルで生々しい演技ができるのかを模索していました。その頃に見たこの映画の妻夫木聡さんの演技は、今も忘れられません。

 とくに彼が、池脇千鶴さんが演じる女性と結ばれるベッドシーン。その女性の裸を初めて見たとき、妻夫木さんが恥ずかしそうな、うれしそうな、愛(いと)おしそうな、いろんな感情が入り混じった表情でほほ笑むんです。あの表情は今も、ありありと目に浮かびますし、いつかこんな風に演じたいと思いましたね」

 次に吉田さんが30歳にやっておいてよかった、と思うことを尋ねると、「感謝帳です」と即答。

 「当時、いろいろなことに悩んでいた私を見た友人から、『おまえは感謝が足りない。いかに自分が感謝する環境にいるかを自覚するためにも日記をつけたほうがいい』と言われて始めたんです。タクシーに乗れてうれしかったとか、友達からお礼を言われたとか、夜寝る前にその日に感謝したことを、どんなに小さなことでも書くんです。

 するとだんだん、毎日感謝することはたくさんあるし、その日がいい一日だったと思えるようになったんです。

 また、続けていると、自分から感謝を見つけるようになり、感謝することが向こうからやってくるようになって……。

 ポジティブもネガティブも、気持ちというのは最終的に自分に帰ってくるということに気づくこともできました」

 役者は言葉を使う仕事でもある。その意味でも、人を幸せにする美しい言葉をつづる日記はよかったと言う。

 「日常生活でも、嫌な言葉よりは感謝の言葉を聞いたほうがいいですよね。ネガティブな言葉を使うと、それを最初に聞くのは自分の耳なので、脳が自分に言っているのだと勘違いしてしまうのだそうです。逆に美しい言葉を使うと、言っている自分自身もポジティブな気分になれます。

 この感謝帳は10年ぐらい続けましたが、これがあるから今の自分があるといっていいほど。勧めてくれた友達には本当に感謝しています」

 最後に、30歳のとき、これはやっておいた方がよかった、ということは?

 「語学の勉強です。とくに私の場合は英語なのですが、自分が何者なのかを自分の言葉で説明できればコミュニケーションが生まれますよね。そこから物づくりの発想も生まれるので、当時、もっと本気でやればよかったと思います。言葉は単なるツールではなく、新しい世界を生み出す種なんです。

 耳も記憶力がまだまだ若いアラサーのみなさんには、ぜひ語学を習得してほしいです」

 人生の先輩として、今すぐできそうなアドバイスをくれた吉田さん。次回は、吉田さんが新作舞台「ジュリアス・シーザー」への熱い思いを明かす。

 <プロフィル>

 よしだ・よう 福岡県生まれ。小劇場を中心に、舞台で約10年間活動した後、映像作品にも仕事の場を広げる。2014年の連続ドラマ「HERO」(フジテレビ系)で注目され、現在は、映画やドラマ、CMと幅広く活躍。主演作として映画「ハナレイ・ベイ」(2018年)、近年の出演作に映画「記憶にございません!」(2019年)、連続ドラマ「恋する母たち」(TBS系)、「生きるとか死ぬとか父親とか」(テレビ東京系)など。第24回読売演劇大賞優秀女優賞を受賞。

 *……舞台 パルコ・プロデュース2021「ジュリアス・シーザー」▽演出:森新太郎▽出演:吉田羊、松井玲奈、松本紀保、シルビア・グラブほか▽上演:PARCO劇場(東京都渋谷区)で10月10~31日、ほか地方公演あり▽公式サイト:http://stage.parco.jp

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