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私が30歳のころ:南果歩さん 「乙女オバさん」はいくつになっても夢見ることを忘れない人 初の自伝エッセーを語る インタビュー3回目

 第一線で活躍する著名人の「30歳のころ」から、生きるヒントを探します。第3回は女優の南果歩さん。当時の思い出や、アラサー時代をより輝かせるためのアドバイス、2月4日に発売する自伝エッセー「乙女オバさん」(小学館)について聞きました。(全3回、編集・取材・文/NAOMI YUMIYAMA)

 「当初はフォトエッセーをやりましょうと言われたのですが、書くのであれば中身も充実させたいと、全部、書き下ろしたんです。初めてのことなので四六時中書いて、校正もギリギリ。編集者は大変だったと思います」

 そう言ってチャーミングな笑顔を見せる南さん。

 序文に「この本はタレント本でも、ゴーストライター本でもありません。(中略)『人は何度でも再生できることを実証する本』であります」と書かれた通り、現在、国際派女優として活躍する南さんが、人生のどん底から何度もはいあがり、再生してきたエピソードが真っすぐにつづられている。

 生死をさまよった出産、パートナーのスキャンダルによる重度のうつ病体験、突然の乳がんの宣告、大切な人との別れ……。どんな過酷な試練も乗り越えて、輝くような「今」を手に入れた南さんのポジティブな生き方は、読んでいて勇気をもらえるはずだ。

 ◇人は何度でも再生できる。苦しいときは逃げることも考えて

 執筆にあたり南さんは、「自分の体験や選び取ってきたことが、誰かの参考になればいいなと思いました」と語る。

 「たとえば乳がんのことなら、わたしは検査で見つかったので、みなさんにもぜひ検査をしてほしいという気持ちがあります。うつ病になったときに海外に逃げたことを書いたのは、今いる場所を思い切って変えたことで自分が変わったと体感できたからです」と心情を明かす。

 また、「苦しくて、ここからいなくなりたいと思うときは誰でもありますよね」と言い、「私自身、命以上に大事なものはないと、何度も何度も経験してきました。そんなときはどんな不義理をしてもいいから、その場から逃げてと伝えたい。生きていれば人は何度でも再生できるので」と真摯(しんし)に語った。

 ◇瀬戸内寂聴さんやオスカー女優……大切な人との知られざるエピソード

 エッセーには南さんに影響を与えた人たちとのエピソードも登場し、人生のヒントをくれる。映画の魅力を教えてくれた小栗康平監督やミロス・フォアマン監督。韓国のオスカー女優とのドラマ撮影での交流。被災地の人たちとの出会いで知ったこと……。苦しいときに支えてくれた作家の故・瀬戸内寂聴さんとの思い出もつづられている。

 「寂聴先生が亡くなられてから、本当に貴重な時間を過ごさせていただいたんだなと思いました」と、南さん。「生前、“第一に自分は物書きだ”とおっしゃっていたのですが、書くことへの情熱は最後まで失(う)せなかった。私が寂庵で遅くまでお話しした後も、机の前で書いていたと秘書の方にうかがいました。書くことへの情熱をたやさず、“生涯現役”として生き切った姿を近くで見せていただいたのは、すごく大きかった」と振り返った。

 ◇57歳の今は、「おひとりさま」ライフを満喫!

 題名の「乙女オバさん」は、「いくつになっても夢見ることを忘れない人」という、南さんが作った言葉。それは57歳の今も好奇心がいっぱいで、挑戦を恐れない彼女自身のことだ。ほかにも単身で挑んだカナダでのドラマ撮影、乳がんサバイバーとしての啓蒙(けいもう)、バンド活動や愛犬との生活など、充実した「おひとりさま」ライフもつづられる。年齢を問わず、悩んでいる人、苦しんでいる人の心にそっと寄り添い、背中を押してくれる一冊だ。

 ◇プロフィル

 みなみ・かほ 1964年生まれ。1984年に映画「伽や子のために」(「や」はにんべんに耶)の主役でデビュー。映画、テレビ、舞台などで活躍。2022年はAppleTVのドラマシリーズ「PACHINKO」、ブリランテ・メンドーサ監督の「GENSAN PUNCH」、ダニエル・デンシック監督の「MISS OSAKA」が公開予定。

 *……「乙女オバさん」(小学館)▽南果歩・著▽2度の結婚、突然の病、そして大切な人との別れ――女優・南果歩が書く、うつむきそうな全ての人にエールを送る自伝エッセー▽2月4日発売、1430円

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