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取材に応じた大竹しのぶさん
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取材に応じた大竹しのぶさん

私が30歳のころ:大竹しのぶさん 30代は子供の幸せが目標だった 自分との闘い、うれしかった息子の言葉を明かす インタビュー1回目

 第一線で活躍する著名人の「30歳のころ」から、生きるヒントを探します。第5回は女優の大竹しのぶさん。当時の思い出や、アラサー時代をより輝かせるためのアドバイス、24日から上演される舞台「ピアフ」などについて聞きました。(全3回、編集・取材・文/NAOMI YUMIYAMA)

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 ◇シャワーを浴びているとき「お芝居がしたい」と細胞が叫んだ

 16歳のときドラマで女優デビューし、連続テレビ小説のヒロイン役で、一躍、国民的な人気女優になった大竹さん。一度目の結婚は25歳のときだった。夫は17歳年上のテレビ局のディレクターで、周囲は反対したが自分の意志を貫いた。

 「人を好きになって結婚して子供を産むというのは、自然な流れでした。だから、反対されましたが、結婚することに迷いはまったくなかったです。自分の気持ちは自分が一番よく分かっていたし、自分の心に嘘(うそ)をつくことはできないと思いました」と、心境を明かす。

 2年後に長男を出産した後、がんで夫を亡くした。その後、31歳でドラマで共演した明石家さんまさんと再婚し、長女を出産した。子育てに専念した大竹さんだったが、その心に変化が表れたのは、仕事を休んで1年半後のことだった。

 「ある日シャワーを浴びながら、自分の細胞が塞がっている気がしたんです。お芝居がしたいと、細胞が叫んでいるんだと思いました。それで芝居を少しずつ始めました。子育てと仕事を両立させるのは大変ではあるけれど、結局は自分がやりたいか、やりたくないかであって。我慢はしたくないと思いました」

 ◇「パンツ、取り換えなくていい?」 子供からの電話に自分を奮い立たせて

 3年後にさんまさんと離婚した大竹さんは、2人の子供を育てるシングルマザーとして、女優の仕事を本格的に始めた。

 「離婚したので働かなくてはならない。もちろん、いい仕事をしたいとは思いますが、年齢的にはそうとばかりはいえない状況でした。ただ、どんなに仕事が忙しくても、夏休みは必死になって遊びました。おかげで超ハードスケジュールに。自分で車を運転して茨城に行ってから、そのまま高速を降りて違う友人と軽井沢へ行って、一日休んでそのまま海外へも海外に行くとか。体力的にはきつかったけれど、子供たちとの生活はすごく楽しかったですね」

 そう言ってほほ笑む大竹さんだが、働く母親として子供と一緒にいられないさみしさも感じていた。

 「ある日、娘がロケ先に電話をくれて、『パンツ、取り換えなくていい?』って聞いてきたんです。普通の母親ならすぐ家で聞けるのに、この子はわざわざ電話をして親に聞かなくちゃいけないんだ、と気づきました。ただそんな娘を『かわいそう』と思ってはいけないとも感じて……。自分との闘いでした。子供には、“お母さんが仕事をしているから、あなたたちはご飯を食べられるんだよ”と話して、働いている自分の背中を見せて」

 やがて大竹さんは、自分が思う以上に子供が成長していることを感じ始めた。

 「北海道でずっと映画の撮影をしていたときでした。1週間に2日は子供といると決めていたので東京に帰ったら、長男が『お母さんがこっちに戻る飛行機代は誰が出すの?』って聞くんです。『プロデューサーの人だよ』と答えたら、『それはかわいそうすぎるよ! 僕たちはおばあちゃんがいるから、戻らなくても大丈夫だから。プロデューサーさんにそう言ってあげて』って(笑い)。親の仕事を客観的に見ている息子の成長がうれしかったですね。さみしくもありましたけど(笑い)」

 子供たちも成長して社会へ羽ばたいた今、日本を代表する女優として活躍している大竹さんは語る。

 「振り返ると、30代は子供を幸せにするというのが大きな目標でした。もちろん、母親としては中途半端だったけれど、自分のできる範囲のことはやれたかなと思います。当時のママ友とは今もいい友達で、よく話すんですよ。この前も電話で、あの頃は本当に私たち必死だったね、って。でも、子供たちはそのことを全部忘れてる。本当に悲しいよねって!(笑い)。でも、子供と楽しい時間を過ごしたことは、自分の中には残ってる。そういうものよねって」

<プロフィル>

 おおたけ・しのぶ 1957年7月17日生まれ。東京都出身。1975年、映画「青春の門 -筑豊編-」のヒロイン役で本格的に女優デビュー。NHKの朝の連続テレビ小説「水色の時」に出演し、国民的ヒロインに。以降、映画、舞台、テレビドラマ、音楽などジャンルにとらわれず才能を発揮し、話題作に相次いで出演。2021年「母との食卓〜まあいいか3」(幻冬舎)を刊行。NHKラジオ第1で「大竹しのぶの“スピーカーズコーナー”」がレギュラー放送中。

 *……舞台「ピアフ」▽作:パム・ジェムス▽演出:栗山民也▽出演:大竹しのぶ、梅沢昌代、彩輝なお、中河内雅貴、上原理生、竹内將人、山崎大輝、川久保拓司、前田一世、たかお鷹ほか▽上演:シアタークリエ(東京都千代田区)で2月24日~3月18日 大阪公演、博多公演あり

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