取材に応じた天野佳代子さん
美容誌「美的GRAND(グラン)」(小学館)で、2018年の創刊以来、編集長を務めてきた天野佳代子さんが、9月12日に発売される同誌の秋号の表紙を飾る。最近では昼の情報番組「ヒルナンデス」(日本テレビ系)に美容評論家・ジャーナリストとして出演し、「奇跡の65歳」と注目されている。自ら表紙に登場することになった経緯を「会社の人たちに半ば強引に引っ張り出されて」と笑顔を見せる天野さんに、表紙撮影の裏話や、美容評論家として今後提案していきたいテーマ、女性の美容への意識の変遷などを聞いた。(取材・文/服部広子)
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◇目指すは「美容界の栗原はるみ」?
天野さんが世間の注目を浴びたのは、2018年にテレビ番組「マツコ会議」(日本テレビ系)に出演したのがきっかけ。60代とは思えない美肌と艶髪が話題を呼び、当時は「奇跡の61歳」と言われた。その後、自身の美容メソッドを詰め込んだ著書「何歳からでも美肌になれる!」(小学館)が大ヒットした。
「本を出してから、雑誌やテレビに呼んでいただくことが増えました。でも、それは全て雑誌のためと思って受けてきたこと。そうしたら、会社の人たちから、『もっと前面に出たほうがいい。美容界の栗原はるみさんになったら』と勧められて。最初は、冗談じゃない! 無理無理! って言っていたんですけど、どんどん形になってきちゃって、もうやるしかない!と(笑い)。私が表紙に出ることでまた、美容に関心を持つ方が増えたらいいなと思っています」
小雪さんや松嶋菜々子さんらの有名女優が表紙を飾ってきた「美的GRAND」。自分がその表紙を飾ることに気後れはなかったのだろうか。
「気後れしかなかったです。たぶん、これが最初で最後の表紙です。撮影に関しては、なんとかやり遂げられましたけど、ただ、撮影中にスタッフたちが、撮った写真をモニターで見ながらゴソゴソとしゃべっているのはダメでした。何、何? 何が問題なんだ!? ってすっごく気になってしまって。女優さんたちの気持ちが分かりました(笑い)」
◇強みは「加齢による悩みを克服してきたこと」
今夏、「美的GRAND」の編集長を退任。「エグゼクティブ・ビューティ・ディレクター」として編集の仕事に軸足を置きながら、今後は美容家であり、美容評論家としても本格的に活動していく。
「昨年、美容評論家として本格的にやってみたらというお誘いがあったんです。私にはその選択肢が全くなかったのでビックリしたんですが、美容評論家は、私がこれまで蓄えてきた美容の知識をより一層生かせる仕事。この年齢で新しいことにチャレンジできるなんてありがたいことだな、という考えに切り替えて、やります! と。やるかどうか悩んだのは、3日くらいですね」
雑誌を作るときは常に読者を意識してきたという天野さん。今後は、幅広い人たちに伝えることを心がけていきたいという。
「65歳という年齢は、美容評論家として活動している方の中では、もしかしたら最年長なのかもしれません。ですが私は、加齢によって生じる肌や髪のさまざまな悩みを克服してきました。更年期障害も含めて、実際に自分が経験したからこそ、みなさんに伝えられることがあります。それが美容評論家としてやっていく上での強みですね」
現在は「奇跡の65歳」と言われるが、「奇跡の」というキャッチフレーズを早く外したいとも。
「キレイを手に入れることは、奇跡ではなく、“必然”だと言いたいんです。キレイになるのはちょっとしたコツ。お金をかけなくても、努力すれば誰でもキレイになれることが伝えられたらと思います」
◇東日本大震災でメークも変化 本来の自分の美しさを大事に
2000年、美容専門誌「美的」の創刊とともにエディトリアルディレクターに就任。連載企画「カヨッキズム」など数々のヒット企画を連発してきた。この20年あまりで大人の女性が求める美しさや、美容への意識はどのように変化したのだろうか。
「創刊当初は、藤原美智子さんや嶋田ちあきさんなど有名メーキャップアーティストが柱になって情報を発信するような企画が主流でした。彼らが提案するメークはモード系でどちらかというと、メーク感が強くて、その華やかさに読者も憧れていたんです。
それが、東日本大震災を契機に一気にナチュラル志向になりました。当時、雑誌を出すこと自体がいいのかどうか話し合いがありましたが、表紙に“すっぴん”という言葉を入れたら、完売したんです。世の中の気分が、本来の自分の美しさを大事しようという流れになって、それは今もずっと続いていると思います」
2018年、「美的GRAND」創刊時に天野さんたちが雑誌の方向性として考えたのが、「今の年齢を楽しもう」だった。
「年齢にあらがうのではなく、楽しんでいきましょう! という気持ちが根幹にありました。肌のくすみやシミが見えてもいいじゃないか! と。その代わりに、髪の毛に艶があったり、目に輝きがあったりすれば、シミなんて気にならない。ちょっとくらいシミがあっても、目の輝きがあれば全然分からないんですから」
◇スキンケアは「朝しっかり、夜あっさり」
表紙を飾るのは「最初で最後」と語った天野さん。そんな特別な撮影の前にスペシャルケアをしたかと聞くと「ファスティングをやりました。でも、私は痩せすぎるとしぼんじゃうので、ある程度のところでやめました。お肌はふだんどおりの手入れで、特別なことはしなかったですね」と答える。
そんな天野さん自身が日常のスキンケアで大切にしていることを聞くと……。
「一番大事なことはクレンジングと洗顔。“落とす”ケアを丁寧にしています。朝は、酵素パウダーなどを使って角質ケアをして、ターンオーバーが“正常”になるように整えて、夜はクレイ(泥)洗顔。あと、目元のケアはとても大事です。今、シワ改善美容液のいいものがたくさん出ているので、せっせとつけています」
そして、「朝しっかり、夜あっさり」でいいと言う。
「夜は眠いし、疲れているので、お風呂につかりながらパックやトリートメントをするのが精いっぱい。もちろんクリームやアイクリームはつけますけれど、夜はあっさりでいいんです。
朝は酵素洗顔の後、プレ美容液、化粧水、シートマスク、美白美容液、シワ改善美容液、クリームを使います。そして、コントロールカラーでお肌の色をワントーン上げて、ファンデーションはとにかく薄めに塗る。厚化粧に見えないように仕上げるのが重要ですね」
本を出版した3年前と大きく違うのは、白髪染めのカラートリートメントがたくさん発売されるようになったこと。50代を超えると、お肌よりも白髪や薄毛など髪の毛の悩みを訴える女性が多いという。
「サロンで白髪染めをしても、やっぱり頭皮や髪が傷むんですよ。だから、ヘアカラーをやる間隔をなるべく空けるほうがよくて、その間は自宅でカラートリートメントを使用しています。なかなか染まらないという方もいるんですが、時間を置けばきちんと染まります」
天野さんの美しさの源は「自分を好きでいたいし、楽しい気持ちでいたい」という思い。
「小学生のころからクセ毛で悩んだり、中学生のときに太ったのが嫌だったり、自分を嫌いな時期が長かった。正直、今でもコンプレックスだらけです。でも、メークって本当にすごいんですよ。新しいリップをつけるだけで気分がグッと上がります!」
<プロフィル>
あまの・かよこ 1957年、東京都生まれ。ジャーナリストとして音楽業界や女性ファッション誌などで執筆。28歳で美容ジャーナリストとしての活動をスタートした。2001年、美容誌「美的」(小学館)の創刊とともにエディトリアルディレクターに就任。2018年9月から、大人の女性向け美容誌「美的GRAND」(同)の編集長を務めた。
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