取材に応じた米倉涼子さん
20歳で結婚し、英国王室のシンボルとして、世界中に熱狂を巻き起こしたダイアナ元皇太子妃。没後25周年を記念して、彼女にまつわる2本の映画「プリンセス・ダイアナ」「スペンサー ダイアナの決意」が公開される。それを記念した「ダイアナ・プロジェクト」のアンバサダーに就任した俳優の米倉涼子さんに、9月上旬、話を聞いた。(編集・取材・文/NAOMI YUMIYAMA)
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「ダイアナさんは女性が見てもカッコよくて、尊敬できる人。以前、別の映画で彼女の声の吹き替えをしたこともあって個人的にもご縁を感じていたので、アンバサダーに選ばれて光栄です」と米倉さんは語る。
「プリンセス・ダイアナ」(エド・パーキンズ監督、公開中)はダイアナ妃の半生を見つめたドキュメンタリー。20歳で英国皇太子と結婚して注目される一方、夫の不倫に苦しみ、離婚後、事故で亡くなるまで人道支援活動に取り組んだ姿が、貴重なアーカイブ映像で描かれる。
「20歳で王室に嫁いだときから、ダイアナさんの戦いが始まった気がします。王室と世間から常に見張られて、リラックスできる日なんて一日もなかったのだと思います。映画には“これを出しちゃうの?”と驚くような映像もたくさん使われていて、王室から孤立していたときの心情が、より身近に感じられました。人道支援をするようになってからは、自分の意志で生きていたんだとわかってうれしかったです」
もう1本の「スペンサー ダイアナの決意」(パブロ・ラライン監督、10月14日公開)は、王室のしきたりと皇太子の不倫に苦しむダイアナが、新たな決断をする3日間を描いた人間ドラマ。ダイアナを熱演した米女優クリステン・スチュワートさんが、アカデミー賞主演女優賞候補になったことも話題を呼んだ。
「クリステンさんの、ダイアナさんをほうふつさせる演技とブルーの瞳に引きこまれました。私も以前、ダイアナさんのように摂食障害になったことがあるんです。当時は、ほとんど毎日カーテンを閉めきって、気がついたらテーブルの上に食べ物がたくさんのっていて。今振り返ると苦しかったですね。私は彼女と世界はまったく違いますが、世間の注目の中で生きる厳しさはわかる気がします」
また、多くの試練に立ち向かったダイアナが、自分の意志で新たな人生を切り開いていく姿には共感を覚えたという。
「一人の少女だった彼女が、離婚をして、人の役に立ちたいという思いを世界中に届けた。本当にすごいことですよね。彼女は弱いところもある人だと思うんです。そんな自分を隠して感情の鎧(よろい)をまとい、人前に出て行動したところがカッコいいなって。彼女のやると決めたことを責任をもってやる姿に共感したし、私ももっと頑張ろうという勇気ももらえました」
◇人生の転機を迎え、それでも後悔はしたくない
ダイアナの映画は、自分の人生を見つめ直すきっかけになったという米倉さん。
「小さい時からバレエをやっていて、女性の中でずっと主役をとるために戦ってきました。何かがほしいなら、努力するのは当たり前の世界でしたね。その後、24、25歳で芸能界デビューして、失敗もたくさん経験しましたけど、『女性だから仕方ないよね』と周囲に言われるたびに爆発しそうになるほど怒っていました(笑い)。失敗に男も女も関係ないと思ったんです。当時は今よりも男社会だったので、よく『男になりたい!』って言っていました」
その後、挑戦を恐れずにキャリアを重ね、第一線で活躍。その成功の秘訣(ひけつ)は、やりたいことを口に出すことだと語る。
「デビュー当時は『3年後に絶対主役をやる』と言っていましたし、(主演するブロードウェーミュージカルの)CHICAGO(シカゴ)も、『やりたい』と言わなければできなかった。前事務所から独立して、自らの新しい事務所も設立しました。口に出すことで周囲もわかってくれるし、隠さない生き方が好きなんです。そうやって無意識に自分を追い込み、強くなろうとしたのかもしれません」
またプライベートでは、2019年に「低髄液圧症候群」であることを公表。昨年、再発したことも発表した。「CHICAGO」の降板を発表する直前となったこの日、病と付き合いながら仕事をする心情についても率直に明かした。
「いま、人生の転機なのかな。ここ3年ぐらい、時にはあきらめる決意も必要なのかなと思うこともあります。これって更年期障害なのかなとか。周囲は『あなたならできるでしょ!』と言ってくださるし、それに打ち勝ちたいと思うのですが、『止まることを恐れない自分を見つけられたらいいのに』と感じることもありますね」
だが、どんな試練があったとしても、「後悔はしたくない」と、力を込める。現実を真っすぐに受け入れ、常に前進しようとする生き方が、尊敬しているというダイアナのスピリットを感じさせる米倉さん。その情熱の原動力を尋ねた。
「これまで視聴率、視聴率と言われて苦しんだ時期もありましたけど、今は期待してもらえるような良い作品に巡り合い、こんな自分を支えてくれる役者さんたちにもたくさん出会えた。今後もそんな方々を大切にしてやっていきたいという強い思いがあります。
それに、隣の芝生は青い(笑い)。まだ自分に勝っていないというか、満足していない。役者はみんなそうかもしれないけれど、もっとうまくなりたいんです。そんな思いがある限り、この仕事を続けられると思います」
◇プロフィル
よねくら・りょうこ 1975年8月1日生まれ、神奈川県出身。1992年に芸能界入り。翌年よりモデルとして活躍後、1999年に俳優へ転身。代表作として、ドラマ「黒革の手帖」「Doctor-X~外科医・大門未知子~」など。最新主演作のAmazonオリジナルドラマ「エンジェルフライト」が2023年春に配信予定。
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