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窪田正孝:結婚で仕事中心だった美学に変化 「心の余裕ができ、視野が広がった」

 俳優の窪田正孝さんが、プライム・ビデオで10月21日から世界同時配信されるオムニバスドラマ「モダンラブ・東京~さまざまな愛の形~」に出演する。同作の中で唯一のアニメ作品「彼が奏でるふたりの調べ」で人付き合いの苦手な高校生・梶谷凛の声を演じた。「当時の自分も、人と交わることができないのが一番の悩みでした。人と接するのが緊張して苦手だったんです」と苦笑いする窪田さんに、近年の仕事の取り組み方の変化、そして、同作のテーマである愛についての気づきなどについて聞いた。(取材・文/服部広子)

 ◇変わることができたのは役者の仕事のおかげ

 アニメ作品の声を務めるのは同作で3度目。「声だけでキャラクターを出さなければならない難しさはありますが、今回は役者としての声を残そうすると、トゥーマッチになる気がしました」と振り返った。

 「普段、表情や体で表現している部分は制御されてしまいますが、今回はかえって、それがよかったのかもしれません。というのは、僕が演じた梶谷凛は、主人公の記憶の中に出てくるので、キャラクターを作って美化させたり、役を迎えにいったりするようなことはしないほうがいいと思ったんです。それよりも、まだ大人になりきれない青年の中から出てくる、うぶさみたいなものとか、人となじめないことでの悩み、葛藤の部分を大切にできたらと思いました」

 そんな窪田さんが10代のころに抱えていた一番の悩みも「人と交わることができないこと」だった。

 「人と接することが得意ではなくて、長時間、人と同じ空間にいることが耐えられないという感じだったんです。自分は人と交われない人間だって自分で決めつけていました。でも、自分はこうだと自分で決めつけてしまうのは、それ以上の広がりがなくなるし、そこで歩みを止めてしまうこと。僕が変わることができたのは100%、役者の仕事のおかげですね。

 進むか、止まるか、その人の選択次第ですけど、可能性は大事にしたほうがいいなと思います」

 ◇愛は感じようとすれば、そこにある

 ニューヨーク版の「モダンラブ」を見ていたという窪田さん。日本版にアニメ作品が入った意義を感じている。

 「愛をテーマにすると、エンターテインメントとしてのラブストーリー感が強くなることもあると思うんです。でも今回は、アニメだから成立することができる強みもあって、見る人を納得させるような特別な力を感じました。

 今回、この作品に関わることで、とても温かい気持ちになりました。やはり、愛を感じられる『人間』というものにフォーカスした作品だからだと痛感しました。映画の神様みたいなものが宿る感じがある。『モダンラブ』を見ていて思いました」

 今回、自分自身にとっての「愛」について、何か気づきはあったのだろうか。

 「愛は、目には見えないけれど、必ず存在するもの。それは人間だけではなく、全ての動物、物、目に映るもの全てに宿っている気がします。きっと神様みたいな存在なんですよね。感じようとすればそこに必ずあると思います」

 そう語る窪田さんは、「人と交わることができなかった」ことで悩んでいた人とは思えない。

 「結婚して180度変わったと思います。ずっと独身でいたらどうなっていたんだろう?って思いますね(笑い)。凝り固まった心をこじ開けてもらいました。独身のときは、役者という仕事に常にフォーカスするということに美学を感じていたんです。でも、それが30代になって、結婚して、改めて仕事に向き合ったとき、初めて“呼吸”ができたというか。息もつけずに生きていたんだと気づくことができたんです」

 そうした心境の変化は、演技にも影響しているという。

 「いい意味で、今までのような手応えがなくなったところがあります。ずっと自分の主観を頼りに芝居をしていた感じだったのですが、心の余裕ができたことで、少し視野が広がった。これまで、これが自分の武器だと思っていたやり方が薄れてきた感じです。

 芝居も“生きもの”だから、人や環境の変化でおのずと芝居も変わります。その変化を楽しみながら、これからもいろんなチャレンジをしていきたいと思っています」

 *……「モダンラブ・東京~さまざまな愛の形~」/2019年に米国で製作され話題を呼んだアマゾン・オリジナルドラマ「モダンラブ」の舞台を、東京に移し、新たな物語をオムニバス形式で描いた。忘れかけていた大人の恋心、息子や母親への愛、国境を越えて芽生える愛など7編。榮倉奈々さん、水川あさみさん、伊藤蘭さん、成田凌さん、永作博美さん、ナオミ・スコットさん、黒木華さんらが主演。監督を平栁敦子さん、廣木隆一さん、山下敦弘さん、荻上直子さん、黒沢清さん、山田尚子さんが担当した。

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