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玄理:念願の村上春樹原作作品で初の声優に挑戦 父の死で「確実に何かが変わった」

 作家・村上春樹さんの短編小説を原作とする劇場版アニメ「めくらやなぎと眠る女」(ピエール・フォルデス監督、公開中)で初めての声優に挑戦した俳優の玄理さん。「村上作品が大好き」と語る玄理さんに演じた役どころや20歳のころの自身を振り返ってもらった。(前後編の前編)

 ◇「ノルウェイの森」に心を奪われた高校時代

 「物心ついた時から、村上春樹さんの作品や言葉がすごく自分の深いところに響いたり、日常で隣にあったりっていう存在でした」という玄理さん。「明言したことはないけど、自分の中ではぼんやりと『村上さん原作の映像作品に出られたらいいな』と思っていました。それが初めての声のお仕事でかなうっていうのも、またとてもうれしいな」と笑顔を見せる。

 村上作品で一番心に響いたのは高校生の時に読んだ「ノルウェイの森」だという。

 「(登場人物の)直子のせりふがとにかくすごく当時の私に響いて。韓国の演技学校に留学していた時に、直子の長ぜりふを韓国語に翻訳して、モノローグの授業で練習したこともありました。よく考えてみれば、村上春樹作品なんて絶対に韓国語訳の本があるんですけどね(笑い)。わざわざ自分で翻訳したかったほど、私の中で大きな存在です」

 ◇20歳の頃は韓国留学でガムシャラに勉強中 「彼氏を作る時間もなくて」

 映画は、村上春樹さんの六つの短編を再構築し、2011年の東日本大震災後の東京を舞台に、人生に行き詰まった人物が遠い記憶や夢をさまよいながら自身と向き合い、ゆるやかに解放されていく、というストーリー。

 玄理さんが演じたキョウコは、大地震のニュースを5日間見続けた後、夫を捨てて家を出るという人物、作中では、20歳の誕生日を迎えた日のことも描かれる。

 「キョウコは17歳、20歳、35歳と、それぞれ変化のある姿で登場するんですが、出てくるシーンの前後に、恋人の死や震災など大きな経験をしています。なので、彼女に起こったことを年表に書いて、自分の中で整理しました。二十歳って若い年ではあるんですけど、彼女はすでに恋人の死というのを経験していて、でも好奇心は捨てきれないっていう絶妙な存在だったのが、演じてみて楽しい部分でもありました」

 玄理さんは20歳の頃、韓国に留学中だったという。

 「私は東京生まれで、20歳はちょうど韓国に留学して、演技学校に通い始めた頃だったので、とにかくガムシャラでした。午前中は大学に行って、午後から演技学校に行って、夜はバレエとジャズダンスのクラスに行って、という感じで、人生で一番頑張っていた期間かも。恋人を作る時間も全然なくて、真面目な学生でした」

 ◇父の死は「自分の中では紀元前・紀元後ぐらい」の大きな出来事

 同作について「再生、リスタートがテーマの一つになっていると思っています」と語る玄理さん。

 「登場人物がそれぞれいろんな形で再生をしていくんですが、その中でキョウコは震災をきっかけに、このままじゃダメだ、変わるならもう今しかないんじゃないかと、唯一能動的に自分の人生を変えようとした人だと思うんです。そこにひかれたし、『めくらやなぎと眠る女』というキョウコを彷彿(ほうふつ)させるタイトルになってるのかなって。

 私たちそれぞれに震災にまつわる思い出ってあると思うんです。そんな中で、キョウコと同じことを考えて、同じような行動をとった人が、 もしかしたら日本のどこかにいるかもしれないっていうリアリティーを、フランス人の監督が描いたっていうのがすごいなと思います」

 キョウコは、震災という大きな出来事を機に結婚生活をやめるという選択をしたが、玄理さん自身が経験した大きな出来事について尋ねた。

 「昨年、父が亡くなって、自分の中では紀元前・紀元後ぐらい、確実に何かが変わった気がします。だからといってキョウコのように、それがトリガーになって何か行動を起こしたかというと、さすがに、家を飛び出すみたいなことはなくて、健康に気を遣うようになったぐらいなんですけどね(笑い)」

<プロフィル>

 ひょんり 1986年12月18日生まれ。東京都出身。日本語、韓国語、英語のトライリンガル。2014年、映画「水の声を聞く」(山本政志監督)に主演し、第29回高崎映画祭最優秀新進女優賞などを受賞。2017年、ソウル国際ドラマアワードでアジアスタープライズを受賞。近年の出演ドラマに「Eye Love You」(TBS系、2024年)、「院内警察」 (フジテレビ系、2024年)、「TOKYO VICE Season2」(WOWOW、2024年)など。日本語版声優として参加した映画「めくらやなぎと眠る女」が公開中。

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