取材に応じた藤間爽子さん
<インタビュー後編>母のダメ出しに言い訳も「心の中で受け止めて生かしています」
俳優、そして日本舞踊家の“三代目 藤間紫”としても活動し、日本舞踊紫派藤間流の家元も務める藤間爽子さん。NHK連続テレビ小説(朝ドラ)「ブギウギ」や、連続ドラマ「silent」(フジテレビ系)への出演で話題になり、現在は連続ドラマ初主演となる「つづ井さん」(読売テレビ、木曜深夜0時59分)が放送されている。11月1日に公開された黒木華さんの主演映画「アイミタガイ」(草野翔吾監督)にも出演する注目俳優に、中学時代の自身についてや、30歳を迎えた心境などを聞いた。(前後編の前編)
◇最初に演じたのは“ねずみ” 芝居をすることで明るくなった
映画「アイミタガイ」は、ウエディングプランナーとして働く梓(黒木さん)が、ある日突然親友の叶海(かなみ、藤間さん)を事故で失う。いつも一番の味方でいてくれた親友との別れを受け入れられず、立ち止まってしまう。誰かを想ってしたことは、見知らぬ誰かをも救い、自分の元に返ってくるという“相見互い”の助け合いの心が、出会うはずのない人々を繋げ、小さな奇跡を起こしていく……というストーリー。中條ていさんによる同名小説が原作。
劇中では、梓と叶海の中学時代の出会いも描かれる。自身の中学時代は「今の私が出来上がった頃」と振り返る。
「小学生の前半はすごくおとなしくて、怖がりでまじめな子どもでした。4年生ぐらいから明るくなってきて、中学時代が明るくなったピーク。そのきっかけは芝居です。小学生から演劇部に入り、芝居をするようになって、学芸会でみんなに褒められた経験などで、明るくなっていきました」
最初に演じた役は“ねずみ”。
「レオ・レオニ原作の『フレデリック』という作品です。セリフはすごく少なかったですが、ちゃんとオーディションを受けて選ばれて、『楽しい!』って思えたんです。あのとき手を挙げてオーディションを受けていなければ、俳優の道に進んでいなかったかもしれません」
◇俳優と舞踊家の両立は「人一倍頑張らなきゃいけないのは当たり前」
俳優業と日本舞踊家の両立の大変さを聞くと「物理的に時間が足りない」という。
「いま映像の作品にたくさん出させていただいていますが、そうすると踊りに割ける時間が減ってしまう。二つをやると決めたときにそれは分かっていたことなんですが、改めて『もっとここに時間をかけられたら』と思ってしまうこともあります。自分で選んだことだから、人一倍頑張らなきゃいけないのは当たり前なんですけどね」
両立の強みは「いろんな人との出会いがあること」。
「どちらかしかやっていなければ出会えない人、作品、演じることで得られる感情などに出会えています。舞踊も演じる心は大切だし、芝居も体の状態の意識は踊りと共通することがあります。両方やって大変だけれど、その分、強みを生かしていきたい」
◇30代の自分に期待 「スケジュールいっぱいで楽しく」
忙しい日々の中で、癒やされるのは「旅行」。
「空き時間を見つけては旅行に出かけます。どんなに忙しくてもリフレッシュは必要。家にいると家のことをしちゃうし、踊りのことを考えちゃうので、強制的に家から出るんです。旅行先でもいろんなツアーに参加するなど、予定を詰め込んじゃうタイプ。友人からも『爽子ってよく出かけるね』『忙しければ忙しいほど、隙(すき)を縫って旅行に行くね』と言われる。仕事でもプライベートでも、スケジュールは埋まっていたほうが安心できます(笑)」
今年の始めにはイギリスとフランスに行ったのが楽しかったという。これから行ってみたいところも尋ねた。
「8月に30歳になりました。30の節目で親友と『行くぞ!』と気合を入れないと行けないようなところに行きたいと話しているんです。フィンランドに行ってみたいし、アフリカにも行ってみたい。親友とは3~4年前から相談していたのに、あっという間に30歳になってしまって……。来年の誕生日までには行かなきゃいけないんです!」
そう力強く宣言し、マネジャーの顔をちらっと見て笑顔を見せた。
「24歳から俳優の仕事を始めて、いろいろな作品に出演することができ、『たった5年でこんなに人生が変わるんだ!』と日々、感じています。29歳までは『もうすぐ30歳になるのか……』とドキドキしていました。30代になって友人たちの中には結婚、出産など、プライベートな部分で変わる人も増えてきました。私自身も想像できないことが待ち受けているのかな、どうなっていくのかなと楽しみです。スケジュールをいっぱいにして、楽しく過ごしていきたいです」
<プロフィル>
ふじま・さわこ 1994年8月3日生まれ、東京都出身。2017年、NHK連続テレビ小説 「ひよっこ」で俳優デビュー。2021年2月、三代目藤間紫を襲名。連続ドラマ「silent」(フジテレビ系、2022年)、NHK連続テレビ小説 「ブギウギ」(2023~2024年)、連続ドラマ「つづ井さん」(読売テレビ、2024年)などに出演。
<インタビュー後編>母のダメ出しに言い訳も「心の中で受け止めて生かしています」