「あさイチ」に出演した神奈川歯科大学特任教授の川嶋朗さん
NHKの朝の情報番組「あさイチ」(総合、月~金曜午前8時15分)の「すぐにポカポカに!温活術SP」(1月21日放送)に専門家として出演した、冷え研究の第一人者で“温活”の名付け親と話す、神奈川歯科大学大学院特任教授で医学博士の川嶋朗さん。番組では、冷え症の人に向けて、身近な道具を使ったり、手ぶらですぐにできる“温活術”を伝授した。川嶋さんに、番組では語れなかった入浴時のアドバイスやすぐにできる冷え対策などについて独自に聞いた。
◇「温活」の提唱者が「即効温活術」を伝授 タオルやドライヤーを使う方法も
大学進学前から鍼灸や漢方薬に興味があったという川嶋さん。医師になると「冷え」のような未病対策に興味が湧き、「冷え外来」をしているうちに第一人者といわれるようになった。外来では更年期女性の「冷えのぼせ」などの悩みに対して、「温活」を勧めてきたという。
「温活」とは、体を温めることで体温を上げ、体調を整える活動のこと。川嶋さんが“温活”という言葉を言い出したのは2011年7月。「ある企業さんと一緒に『血めぐり研究会』というのを作って」提唱し始めたと話す。そこから世間に一気に広がった。この状況に自身でも驚いたというが、「商標など取っていませんので(笑)、皆さんの健康増進に使っていただければ」と穏やかな口調で語る。
番組では、冷えを感じたときの「即効温活術」として、フェイスタオルの両端を両手で持ち首に掛けて、首の後ろに当てて10秒揺らす方法や、ヘアドライヤーでくるぶしから指4本くらい上の「三陰交」などのツボに温風を当てて刺激する「ドライヤー温灸」が紹介された。
また、道具を使わずに座ったままですぐにできる方法として、両手の指を第一関節で内側に組み、軽く握って1分ほどキープする「指組み」と、片方の手の親指と人さし指(親指を起点に別の指も)の腹を合わせて押しながら、もう片方の手で人さし指の爪の両側を軽く交互に押す「指もみ」も紹介。
川嶋さんはこれらの方法によって、「血を巡らすことが大事なんですね」と話していた。
◇「おなかマッサージ」や「呼吸法」も手軽にできると紹介
冷え対策として、「くび」と付く部位を温めると良いといわれており、「首」「手首」「足首」に加えてもう一つ、おなかの「くびれ」も温めてとアドバイスする。
川嶋さんは「血流の多いところを温めることが効率よい温め方です。とはいえ万民共通のマニュアルなどはなく、それぞれが気持ちいいと感じるように温めることが重要です」と話す。
特に日頃から温めたほうがいいのは「おなか」だといい、起き抜けの布団の中で脇の下の温度とおなかの温度に差があり、おなかが冷えている場合は「おなかマッサージ」を勧める。
マッサージは、おなかが少しへこむくらいの強さで時計回りに「の」の字を書くように優しくなでる方法を伝授する。日頃から寝る前に寝床でゆっくり4~5分間続ける方法がおすすめだという。
呼吸法も手軽にできる方法で、おへその下に両手を当て、鼻から5秒間、息を吸い、10を数えながら鼻からでも口からでも息を吐くのを1日10回ぐらいやってみると良いという。「吸うときにはおなかが膨らむように、吐くときはおなかがへこむように」とアドバイスする。これをすることで、「吸う時間の倍の時間をかけて吐くとリラックスする神経が優位になって、胃腸の血流が増えるんですね」と話す。
◇ぬるめの温度での入浴は「メリットだらけ」
川嶋さんは「入浴は一番いい“温活”だと思ってます」ともいい、「実は日本人が入ってる温度は高いんですよ。だから、40℃を上回らないような温度で入っていただきたい」とアドバイスする。
「お湯の温度は38、39℃が良いですが、物足りない人は40℃くらい。低くてもゆっくり温まりますから最低でも10分くらい、できれば30分ぐらいつかっていただく、しかも寝る直前くらいがいいんです」
寒い時期が危険といわれるヒートショックを起こさないためにも、「風呂はぬるい方がいいし、低い温度のお風呂はメリットだらけなんですよ。故安保徹先生によれば、リラックスする副交感神経が優位になるとリンパ球という免疫細胞が活発に働きがんやウイルス感染の予防にもなるそうです」と話す。
◇自身が実行する“温活”は? 30、40代の女性に向けてアドバイスも
現在67歳の川嶋さん自身が実践している“温活”は「定期的な運動、朝の白湯、漢方薬」だという。
「僕は毎日、片道40分ぐらいかけて往復25キロの道のりを自転車通勤しているんです。ジムには週1回は行って筋トレと、1キロ泳ぐようにしてます。朝は60℃くらいの白湯を飲みますね。内臓を温めますし、体にスイッチが入ります。あと、毎朝漢方を飲んでいます」
視聴者に向けて、「自分の不調って実は自分で作ってるんですね。ですから不調が起こったら、あれ、何かいけないことしなかったかなって、ちょっと生活を振り返ってみて、思い当たることを自省してもらえれば」と呼びかける。
さらに「現代人で一番問題なのはおそらく運動不足ですので、ちょっと苦手だなと思っても日常生活で少しだけ負荷をかけてみてください。僕が最近よく言うのは『階段を見たら無料のジムだと思え』ということ。使わないと損するなっていう感覚になっていただければ、皆さんやってくれるかなと思って、そう呼びかけるようにしています」という。
30、40代の女性向けては、「温活って誰でも手軽にできて健康増進に役立ちますから、ぜひやってください。健康で生きていこうと思ったら、体を温めるということはやって損はないので」とアドバイス。
さらに冷えで悩んでいて、医者にかかりたいけれど、どこに行ったらいいか分からないという人に向けて、「ネットで検索すると、漢方医学なら東洋医学会のホームページを見るとそこに専門医が紹介されています。また鍼灸師さんはもともとそういうことも学んでいますから鍼灸ネットで調べるのもいいですね。気になったところに連絡をして、冷えで悩んでいるんですと言っていただければ。快く受け付けてくれるようなところだったら行ってみるといいと思いますね」とアドバイスした。
<プロフィル>
かわしま・あきら 神奈川歯科大学大学院統合医療教育センター長、統合医療学講座特任教授。医師・医学博士。北海道大学医学部医学科卒業。東京女子医科大学大学院医学研究科修了。ハーバード大学医学部マサチューセッツ総合病院、東京女子医科大学附属青山自然医療研究所クリニック所長などを経て現職。冷え研究の第一人者。主な著書に「心もからだも『冷え』が万病のもと」(集英社新書)、「キレイが目覚めるドライヤーお灸」(現代書林)、「毎日の冷えとり漢方」(河出書房)などがある。幼少期に子役として活躍。1970年放送のNHKドラマ「へこたれんぞ」で主演を務めた。