著書「50歳の棚卸し」を発売し取材に応じた住吉美紀さん 撮影/大坪尚人(講談社写真映像部)
<インタビュー後編>16年ぶり書籍は「うまくいかないことを抱える人の応援歌に」
フリーアナウンサーの住吉美紀さんが、過去の恋人や不妊治療の経験などについて赤裸々につづった、16年ぶりとなる著書「50歳の棚卸し」(講談社)を出版した。NHKのアナウンサーを辞めたときのことや、選択するときに大事にしていることを聞いた。(前後編の前編)
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◇幼少期から身についた「トライアンドエラー」な生き方
「自分の人生で起きたことを見返したり、分析したりするのが好きなタイプ。棚卸しが好きなのかも」と笑う住吉さん。父の仕事の関係で、幼少期から海外を含めて何度も引っ越しを経験したことで、“トライアンドエラー”のマインドが生まれたのではないかという。
「アメリカに連れて行かれて、関西に戻って、またカナダに行って……と3、4年おきに人生がガラガラポンされて変わってしまう。子どもなりに、例えば『あの中学に行きたい』とプランを立てていても、まったく違う都市で進学することになるし、あんまり先のことを考えても仕方ない、なるようになっていく、トライアンドエラー的な生き方にたどり着きました。
英語がまったくわからないのに現地の学校に放り込まれたこともあります。でも、行ってしまえばどうにかなるし、行ったなりの発見はあるんです。そして、実際に経験してみると、不得意だろうと思っていたことが意外と楽しいと気づくこともあるし、まさに『やってみないとわからない』ことだらけ」
住吉さんが26歳の時、54歳の父を突然、交通事故で亡くしたことも「トライする」気持ちを後押しする。
「父の死で、人生なんて、どのくらいの猶予があるか、誰にもわからないんだなぁって思ったんです。だから、本当に今を大事に、やりたいことをやるとか、会いたい人に会うとか、楽しいことをしておかないと」
◇37歳でNHKを辞め独り立ち 決断は「直感」で
37歳のとき、大学卒業後からずっと務めていたNHKを辞める決断をした。
「入社以来、アナウンサーとしてさまざまな経験をさせていただき、この組織の中で自分ができることはし尽くしたかも、と思ったタイミングでした。それに、『NHKです』という看板があれば、取材がスムーズにできることもありましたが、丸裸の自分でどこまで暮らせるのか試してみたかった。
15年務めたNHKを辞めて、ちょうど15年たちました。今となっては、『残っていればあの番組も担当できたかも』と考えたこともあります。でも、そっちの道は選んでいないから、どちらの方が良かったかなんて、わからないんですよね」
選択肢がある時、どちらの道に進むかは「直感」で決断する。
「英語でいう『Pros and Cons(プロズ・アンド・コンズ)』、情報は一応集めて、メリットとデメリットを比較するんです。でも、集めた文字情報では心が動かなくて。だから自分の直感の感覚を研究しています。心が動くとき、おなかの下の方から泡のようにワクワクが沸いてくる感覚があるんですが、自分の体の内部と対話して、『こっちの選択肢の方が、考えるだけでウキウキする』と観察して、決めることが多いですね」
自分の決断がいい方向に向かうと、「来た来た来た~!」と自分自身で盛り上げながら、自分が引き寄せたと思い込んでワクワクしている。
「もしかしたら、反対の道を選んだ方がものすごくお金を稼げたかもしれないし、すてきな人に出会えていたかもしれません。でも,“もしも”の結果どうなるのかなんて分からないのだから、結局は選んだ方を正解にしていくのが人生だと私は思っています。そのためには正解にするぞという気概とか、正解にしたいぞっていう自分のエネルギーが大事になってくるので、その意味でも直感をすごく大事にしてますね」
◇気持ちの切り替えは独り言で 「声に出して強制的に」
また、うまくいかずに落ち込んだ時は「仲の良い友人に聞いてもらう」ことで切り替える。
「うなずいて聞いてもらうだけで癒やされるし、違う人の視点で言葉をかけてもらうとすごく救われる。もともと切り替えが下手だったんですけど、トレーニングで身につけました。目の前でパンパンと手をたたき、箱を横にどける動作をしながら、無理やり意識的に切り替えることもあります」
特にフリーランスになってからは、1人で仕事をしている時間も多く、切り替えざるを得ない瞬間もある。
「夫にもよく言われるんですけど、ちょっとおかしなくらい独り言が多いです。『これは終わりで、次にやらなきゃ行けないのがこれで』と自分の思考を声に出して確認しながら、強制的に切り替えているんだと思います」
<プロフィール>
すみよし・みき 1973年4月5日生まれ、神奈川県出身。大学卒業後、1996年にNHKに入社。「プロフェッショナル 仕事の流儀」「スタジオパークからこんにちは」など数々の番組を担当。2011年3月にNHKを退社し、フリーに。
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