「じんじん」の一場面 (C)2013「じんじん」製作委員会
個性派俳優の大地康雄さんが企画を担当し、主演を務めた感動作「じんじん」(山田大樹監督)が13日から公開される。北海道の上川地方北部にある剣淵町を主な舞台に、「絵本の心」をテーマにして作られた今作。地味ではあるが、人々の優しさやぬくもりが、それこそ“じんじん”と伝わってくるすてきな作品に仕上がっている。
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大地さん演じる立石銀三郎は、宮城県松島に住む大道芸人。彼が、北海道の幼なじみの高峰庄太(佐藤B作さん)の農場に毎年恒例の手伝いに行くと、そこには都会から農業研修で来ていた4人の女子高校生がいた。彼女たちは、開けっぴろげな態度の銀三郎と徐々に打ち解けていくが、日下部彩香(小松美咲さん)という少女だけは心を開こうとしない。やがて銀三郎は、彩香の秘密を知ることになる……というストーリー。
劇中で、大人たちの読み聞かせに真剣に耳を傾ける子供たちが何度も映る。そのキラキラしたまなざしを見ながら、子供たちのまっさらな心に、悲しい、うれしい、楽しい、怖い、そうした感情を最初に植えつけていくのは絵本なのかもしれないと、その大切さに改めて感じ入った。その一方で、田植えの風景や日本三景の一つ「松島」の美しい景色、大地さんの粋な着流し姿を目にしながら、日本のよさも実感させられる。銀三郎が精魂込めて作る絵本「クロコダイルとイルカ」(作:ドリアン助川さん)。そこに託された銀三郎の思いを知ったときには、胸がキュンとなり目頭が熱くなった。
坂上かつえさんの脚本にほれ込んだ、「あらしのよるに」などで知られる絵本作家のあべ弘士さんが、映画の題字や劇中使用する小道具の絵、さらに大地さんの絵本指導などを担当したことも特筆すべき点だ。そのほかのキャストに、28年ぶりの映画出演となった中井貴恵さん、村田雄浩さん、若村麻由美さん、板尾創路さん、手塚理美さんら。映画は7月13日からシネマート新宿(東京都新宿区)、27日から有楽町スバル座(東京都千代田区)ほか全国で順次公開。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)
<プロフィル>
りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションを経てフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。
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