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宮崎駿監督の「崖の上のポニョ」以来5年ぶりの監督作となる「風立ちぬ」が20日から全国で公開される。ゼロ戦の設計技師として知られる実在の人物、堀越二郎の半生を薄幸の少女・菜穂子とのロマンスを交えながら描いていく。二郎には、彼と同時代に生きた文学者・堀辰雄もエッセンスとして盛り込まれており、またイタリアの飛行機製作者ジャンニ・カプローニが、二郎を励ます師匠あるいは同士として、時空を超えて姿を見せる。二郎の声を「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズ総監督の庵野秀明さんが担当しているほか、菜穂子役の瀧本美織さんはじめ、西島秀俊さん、西村雅彦さん、大竹しのぶさん、野村萬斎さんらが声優を務めている。
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庵野さんはオーディションをへて決まったそうだが、これが思いのほかキャラクターに合っていて物語にスムーズに溶け込んでいた。溶け込んでいたのは効果音もだ。飛行機のプロペラ音や車のエンジン音、関東大震災の地響きの音などさまざまな音は、人間の声で表現されているという。知らされなければ何も感じず聞き流していたに違いない、それほどの溶け込みぶりだ。それでもときおり“それっぽさ”がにじみ出るところがあり、そこにむしろ温もりと味わいを感じた。
ロマンを感じさせる物語が、夢と現実の間を往来しながら、宮崎監督おなじみの画で描き出されていく。大げさな戦闘シーンや爆発的な感情のうねりを起こさせるような仕掛けはない。だから見終えたときには「感動」の二文字ともども、なんとなく自分が置き去りにされた感じがした。ところが不思議なもので日が経ち、映画について思いを巡らすと、なんともいえない郷愁にかられ、それからしばらく経つが、いまもなお、いい作品だったとしみじみと感じる。また、荒井由実(松任谷由実)さんの曲が、宮崎監督作「魔女の宅急便」以来24年ぶりに主題歌として使われており、その「ひこうき雲」を耳にするたびに条件反射的に涙腺が緩むようになった……。20日からTOHOシネマズスカラ座(東京都千代田区)ほか全国で公開。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)
<プロフィル>
りん・たいこ=教育雑誌の編集、編集プロダクションをへてフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。
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