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「ラスト サムライ」(2003年)や「バベル」(06年)などを手がけ、米ハリウッドで活躍する日本人プロデューサー・奈良橋陽子さんがプロデュースした歴史大作「終戦のエンペラー」が27日に公開される。昭和史の中で埋もれていた米国人が主人公。今作を見ながら、日本の戦中・戦後の分岐点に立ち会うような体験ができる。なお、奈良橋さんの祖父にあたる関屋貞三郎宮内次官を、今年5月に亡くなった俳優の夏八木勲さんが演じている。
第二次世界大戦が終結した1945年8月、GHQを率いるマッカーサー元帥(トミー・リー・ジョーンズさん)が日本に上陸した。A級戦犯の逮捕が始まり、戦争責任者の追及が始まった。部下のフェラーズ准将(マシュー・フォックスさん)は日本文化の専門家で、戦争における天皇(片岡孝太郎さん)の役割を探るよう、マッカーサーから命じられる。連合国側は天皇の裁判を望んでいたが、マッカーサーの意見は違った。フェラーズは大学時代、日本人留学生アヤ(初音映莉子さん)と恋愛関係にあり、彼女が日本に帰国後もずっと思っていた。愛するアヤの国・日本を理解しようと必死なフェラーズだったが、調査がいき詰ってしまう……という展開。
天皇陛下とマッカーサーが並んだ有名な写真がある。あの写真に至るまでの道のりが、実在した米国人フェラーズの視点で描かれる。日本にとって重い歴史がフェラーズの恋愛物語と並行して進むエンターテインメント作だ。フェラーズが日本人の精神について理解を深めようとする姿が、愛する彼女への思いと重なって、自然に感情移入ができる。この主人公がいなかったら、一体どんな日本になっていたのだろうか。証人が口を閉ざしたり、自殺していくという困難が続く中、「天皇陛下に会うしかない」というマッカーサーの判断が下される。皇居を訪れるシーンは緊張感が張りつめたいいシーンだ。「ロード・オブ・ザ・リング」3部作でアカデミー賞美術賞を受賞したグラント・メイジャーさんが手がけた今作の美術がリアリティーを生み出していて、焼け跡の風景もリアルだ。ストーリーの描き方は感情におぼれていないのに、心が揺さぶられる映画だ。26日から丸の内ピカデリー(東京都中央区)ほか全国で公開。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、闘病をきっかけに、単館映画館通いの20代を思い出して趣味の映画を見まくろうと決心。映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。