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注目映画紹介:「かぐや姫の物語」 プレスコで声、表情、動きが一体化 生き物の美しさを描く

 スタジオジブリの最新作で、「ホーホケキョ となりの山田くん」(1999年)以来14年ぶりの高畑勲監督作は、日本の古典「竹取物語」を原作に、8年の歳月を費やして完成したという劇場版アニメ「かぐや姫の物語」だ。誰もが知っているかぐや姫の「心」を描き出し、地球という地で生きる喜びを照らし出した。音楽の久石譲さんは、高畑監督作には意外にも初参加。かぐや姫の声は、オーディションで選ばれた女優の朝倉あきさんが担当した。なお、翁の声を担当した地井武男さんはこれが遺作となった。色彩豊かな絵、繊細な動きをする人物、物語展開、圧巻の2時間17分だ。

 竹取の翁(声・地井さん)と媼(声・宮本信子さん)は、田舎の一軒家で2人暮らし。ある日、翁が竹やぶで仕事をしていると、1本の光る竹を発見。近寄ってみると、竹の中に神々しいお姫様(朝倉あきさん)がいた。「天からの授かりもの」と思った翁は、手のひらに乗せて大切に連れ帰る。「姫」と呼ばれて2人の愛情を浴びてすくすくと育つ女の子。近所の子どもたちに「たけのこ」と呼ばれ、一緒に楽しい時間を過ごす。さらに竹やぶから黄金や美しい着物が出てきて「天のおぼし召し」と感じた翁は、姫の生きる場所はこんな田舎ではなく都だと強く思い、3人で都に引っ越すことにする。大きなお屋敷で姫には教育係がつき、高貴な姫君になるための稽古(けいこ)が始まった……という展開。

 繊細に描き出した日本の野山を背景に、子どもたちが本当に子どもらしい躍動感ある動きで遊び回る。この光景に序盤から心をわしづかみにされた。先に声を入れる「プレスコ」の手法を取っているため、声、表情、動きが一体化している。生前の地井さんの声を聴けるだけでも胸がジーンとするのだが、子育て最中の場面に翁の深い愛情を感じ、地井さんの声が胸に深く刻みこまれた。お陰で、都に出てからの姫の気持ちを無視した翁の「行き過ぎ」な行動にも、「翁なりに姫を思ってのこと」ととらえることができる。高畑監督のテレビアニメ「アルプスの少女ハイジ」や「赤毛のアン」を想起させるような、天真爛漫(らんまん)で現代的なヒロイン・かぐや姫。根は実直で、他人とは異なる神秘性、孤独をたたえ、喜怒哀楽さまざまな表情で見る者を魅了する。姫に求婚する殿方たちにはそれぞれに人間の滑稽(こっけい)さが描かれ、思わず笑いがこみ上げる。かぐや姫を通して、地球にすむ生き物の美しさ、人間の優しさ、おかしさ、悲しさ、すべてが見えてくる。TOHOシネマズ日劇ほか全国で公開中。(キョーコ/毎日新聞デジタル)

 <プロフィル>

 キョーコ=出版社・新聞社勤務後、闘病をきっかけに、単館映画館通いの20代を思い出して、映画を見まくろうと決心。映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。

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