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注目映画紹介:「さよなら、アドルフ」 ナチス高官を父親に持った少女の終戦後の旅路を描く

 2013年米アカデミー賞外国語映画賞のオーストラリア代表となった「さよなら、アドルフ」が11日、公開された。第二次世界大戦ドイツ敗戦後、ナチスの高官を父親に持った少女が、幼い妹弟を守りながら旅する過程を、その成長とともに描き出す。ヒロイン役のサスキア・ローゼンダールさんは「ベルリン国際映画祭シューティングスター2013」に選出された。原作はブッカー賞最終候補となったレイチェル・シェイファーさんの「暗闇のなかで」で、オーストラリアの俊英、ケイト・ショートランド監督が手掛けた。

 1945年春、14歳のローレ(ローゼンダールさん)と妹リーゼル、双子の弟とまだ赤ん坊の弟は、ナチス幹部だった父親が逮捕されて、母も拘束され、身を寄せていた家からも追い出されてしまう。ローレは幼い妹弟たちを連れて、900キロ離れたハンブルグにある祖母の家を目指すが、ナチスの子どもであるローレたちに手を差しのべる大人はいなかった。ある日、連合軍兵士に呼び止められたローレたちを、通りがかりの青年(カイ・マリーナさん)がとっさに「兄のトーマスだ」と助けてくれた。その身分証には、ユダヤ人であることを示す「黄色い星」がはさまれていた……というストーリー。

 旅の過程で人物の成長を描く映画はたくさんあるが、今作の主人公ローレの旅路はかなり過酷だ。敗戦で、特権階級から滑り落ちただけでなく、たった14歳で4人もの幼い妹弟たちの世話をしながら、その途上でナチスが行っていたホロコーストについても知ることになる。そこに手助けしてくれる青年が加わって、信じていたものが次々にひっくり返されていく。価値観が崩れ去る様が思春期の少女というヒロインの力を借りて、より増幅する。ローレは14歳の少女らしいとがった刃先のような心と、真実を知りながらも突き進む強さ、女性としてのたくましさも兼ね備えている多面的なキャラクターだ。ローレ役のローゼンダールさんは、少女が性に目覚める姿も熱演している。クローズアップを多用した映像で、少女の心が透けて見えるかのような印象を受けた。11日からシネスイッチ銀座(東京都中央区)ほかで順次公開中。(キョーコ/フリーライター)

 <プロフィル>

 キョーコ=出版社・新聞社勤務後、闘病をきっかけに、単館映画館通いの20代を思い出して映画を見まくろうと決心。映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。

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