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佐藤健:主演映画「るろうに剣心」再び 「自分にとっての代表作と呼べる作品ができた」

 和月伸宏さんの人気マンガを実写化した映画「るろうに剣心」(2012年)の続編「るろうに剣心 京都大火編」(大友啓史監督)が公開中だ。今作は、原作でも人気の「京都編」をベースに前後編の2部作で製作された前編にあたり、主人公・緋村剣心の後継者として“影の人斬り役”を引き継いだ志々雄真実(ししお・まこと)らとの戦いを描く。新たなキャラクターも多数登場する中、前作から引き続き主人公の剣心役を演じる佐藤健さんに、役柄や作品に対する思いなどを聞いた。

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 ◇超えなくてはいけないものが大きかった

 続編の製作が決定した時のことを佐藤さんは「前作を見てくださった方が『もっと見たい』といってくださったからこそできることですから、ありがたいですし、すごくうれしかった」と振り返る。「やるからには期待してくれている方たちのハードルを越えなくてはいけないですし、原作ファンの方も納得させられるようなものを作らなくてはいけない。超えなくてはいけないものが、すごく大きいと思っていた」というのだが、製作決定を聞いてからは、「いざやるとなったらどうしたら超えられるか、どうした成立させられるかを考えていました」と打ち明ける。

 超えなくてはいけない壁を感じていたと話す佐藤さんだが、「クランクインした時は不安な要素もあり、自信もないし、(このままで最後まで)行けるか分からなかった」と一抹の不安を感じていたという。撮影に入ってからは「台本に僕たちがお芝居とかでいろいろ付け加えたり変更したりさせていただきました」と大友監督と話し合いながら作業を進めていき、クランクアップを迎えるころには「行けると思いました」と仕上がりに手応えを感じたと語る。前作の公開は12年で2年ほど期間が空いたが、「クランクイン3カ月前からアクションの練習をしていたことがリハビリのようだった」といい、徐々に自分の中に剣心が戻ってきたという。

 ◇剣心は人生の師匠のような人物

 剣心役を演じる上では「僕も原作が好きなので原作ファンの方も納得してもらえるように意識し、注意しました」と語る佐藤さん。「時間的にも原作の通りにはできないので、特に(後編の)『伝説の最期編』はオリジナルストーリーなのですが、『原作の魂をちゃんとくんでいるか』を意識していました」と語る。剣心のイメージを「僕の中ではちょっと人間っぽくない」ととらえ、「達人とか仙人のような感じだったので、できるだけ無駄な動きをしないようにといったことは考えていました」と役作りについて明かす。自身と剣心を「剣心の言っていることが共感できるので思想とかは似ているのかな……」と分析し、「プライベートでも『こういう時に剣心ならどうするんだろう』と考えたりします。本当は『自分も剣心みたいに全部できたらいいのに』と思うけど、なかなかできないですね」と言って笑う。

 「るろうに剣心」の中で最も好きなキャラクターはという質問に、「やっぱり剣心」と即答し、「最強なのはもちろん、敵味方関係なく出会った人たちにすごい正しいことをいうところが好き。人生の師匠みたい」と理由を説明した。剣心以外のキャラクターについては、「前後編を見ていただければ分かると思いますが、メインの男たちが全員とにかく悲しいやつら」と評し、「みんな傷を背負って時代に順応できずに不器用に生きていく、すごい悲しいやつらの物語。そんなところが僕は原作も映画も好きなところです」と熱く語る。続けて、「時間をかけて悲しいバックボーンを描けなくても、悲しさが伝わってくるのは、役者さんが放つオーラの説得力」と強調し、今回やってくださった俳優さんたちは皆さん完璧で、原作ファンの僕からすると完璧なキャスティングでした」と絶賛する。

 ◇藤原竜也と共同で作り上げたアクション

 藤原竜也さん演じる志々雄真実との激闘が見どころの一つだが、「アクションは戦うといってもすごい緻密な作業で2人の呼吸だから、協力して話し合って作っていきました」という。後編となる「伝説の最期編」では剣心と志々雄が一騎打ちする場面があり、「全然終わり方が見えず、『2人の戦いは最後どうやって終わらせるか』みたいな話は2人でしていました」とやりとりを明かした。「1週間ほどの撮影でしたが、最後の日のギリギリまで答えが出なくて話し合いを重ねていた覚えがあります」とアクションへのこだわりを明かす。

 度重なるアクションシーンのためか、「『京都大火編』はアクションばかりやっていたので、気が付いたら2週間くらいせりふを言ってなかった」と笑う佐藤さん。大人数を相手に立ち回るシーンでは、「360度囲まれて1人で倒すという1対多数のシーンは1対1より難しかった」と振り返る。「アクション作品の永遠のテーマだと思いますが、見る側も『囲まれているのに……』とおかしさを感じるだろうし、撮る側も難しい」と理由を語り、「できる限りリアルに近づけられるように僕も説得力を持った動きをするように意識してやっていました」と自然に見えるよう撮られ方を追求した。撮影では刀を当てにいったといい、「当たったらけがする可能性もあり、撮影がストップして最後まで撮りきれないこともあると思っていた。とにかく気を常に引き締めてやるしかなかったので、集中力をキープするのが大変でした」と打ち明ける。

 お気に入りのシーンは「『京都大火編』の冒頭、志々雄が登場するシーン」を挙げ、「『この世の終わりが来た』と感じましたし、開始5分ぐらいで『クライマックスが来ている』と思いました」と驚いたという。「原作の中で志々雄も大好き」と話す佐藤さんは、「残念ながら志々雄も理にかなったすごく正しいことを言っていたりする」と評すが、「『お前の自分勝手のためにほかの人が悲しんだりするようであれば、俺はそれを止める』と剣心が言ったことに尽きます」と剣心の考えに、より深い共感を示す。

 ◇日本人なら見ておくべき作品になった

 佐藤さんにとって剣心役とは? 「いろんな先輩方から『俳優はヒット作と代表作と呼べるものがなければだめだ』という話をしてもらっていて、自分にとっての代表作と呼べる作品ができたのではという思いです」と当たり役との出会いを喜ぶ。そして撮影を振り返り、「俳優人生の中で一生に一度あるかどうかぐらいの素晴らしい環境だなというのは常に感じていました」と感謝し、「スケールが全然違うし、どこを見渡しても明治時代で本当に“明治を生きている”ようになれる現場。すごくぜいたくで俳優としては本当に幸せでした」と言い切る。

 過酷なアクションシーンが多く、「最後まで撮り切れたこと自体が奇跡だと思います」と感慨深げな佐藤さんは、「すべては後編の最後、剣心と志々雄の戦いのためにあるような作品」と持論を展開し、「まずは本当に見てほしい」と自信をのぞかせる。「今までのエンターテインメントというジャンルで見たことのない作品になっていますし、ソード(刀)アクションということでいうと革命的なことをやっていると思います」と魅力を語り、「日本人ならとりあえず見ておくべき映画というのがあると思いますが、今回はそういう作品になったと思う。自分が出演しているからというわけではなく、日本の映画の歴史を変えると思っています」と力を込めてアピールした。前編「京都大火編」は新宿バルト9(東京都新宿区)ほか全国で公開中。後編「伝説の最期編」は9月13日公開予定。

 <プロフィル>

 1989年3月21日生まれ、埼玉県出身。2007年、「仮面ライダー電王」(テレビ朝日系)で初主演し、ドラマ「ROOKIES ルーキーズ」(TBS系)で注目を集める。「メイちゃんの執事」(フジテレビ系)ではドラマアカデミー賞助演男優賞を受賞。2010年のNHK大河ドラマ「龍馬伝」で時代劇に初挑戦し、12年には「ロミオ&ジュリエット」のロミオ役で舞台初出演にして初主演を果たす。12年に公開された前作「るろうに剣心」に主演しヒットを記録。「佐藤健写真集 ALTERNATIVE」(マガジンハウス)も発売中。

 (インタビュー・文:遠藤政樹)

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