(C)2014「太陽の坐る場所」製作委員会
直木賞作家・辻村深月さんの同名ミステリー小説が原作の「太陽の坐る場所」(矢崎仁司監督)が4日から公開される。水川あさみさんと木村文乃さんをメインキャストに、同級生同士の関係を見せながら、誰もが経験したことのある友達への羨望(せんぼう)と嫉妬や悪意、心の痛みを繊細に浮かび上がらせる。矢崎監督は、辻村さんと同じ山梨県出身で、ほとんどが山梨で撮影された。
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高校卒業から10年。響子(水川さん)は地元の地方局アナウンサーとして活躍するものの、満たされない日々を過ごしていた。地元ではちょっとした有名人だが、クラス会で話題になるのは、東京で女優として活躍する今日子(木村さん)の方だった。高校時代、響子にとって今日子は自分の陰にいるべき存在だった。学校の人気者でクラスの女王として君臨していた響子(古泉葵さん)は、同じ名前の転校生の今日子(吉田まどかさん)に「リンちゃん」というあだ名を与える。いつもそばにいた2人だったが、ある事件をきっかけに関係が少しずつ変化していく……。同じく同級生で今は地元銀行の東京支店に勤める島津(三浦貴大さん)は、幹事として毎年クラス会を催してきた。女優の今日子に出席してもらいたく、自ら交渉に出向く。交流が途絶えていた響子と今日子は、クラス会で再会を果たすのか……という展開。
同じ名前を持つ2人の女性を軸に、人間の成長にともなう嫉妬や羨望の感情を浮き彫りにしていく。高校時代、みんなの上に立って欲しいものを手に入れてきた響子は、今や過去のオーラを失っている。一方、陰の存在だった今日子は、キョウコという芸名で女優になった今、堂々として風格さえ漂わせている。水川さんと木村さんのキャスティングが絶妙だ。過去から続いている心のわだかまりが見え隠れし、2人の間に緊張感が漂う。高校時代を演じる新人女優の古泉さんと吉田さんも魅力的。「勝ち負け」にこだわる女性ならではの心のドス黒さともの悲しさが、ほとんど内に秘められた形で描かれた末、白日の下にさらされる。その衝撃は、光あふれる映像の中で残酷で痛々しい。身近な存在に抱いてしまう虚栄心。女性同士のヒエラルキー(マウンティング)。誰もが経験したことのある人間の負の感情を真正面から見つめ出し、見る者の心を揺さぶってくる。主題歌は藤巻亮太さんの「アメンボ」。有楽町スバル座(東京都千代田区)ほかで4日から公開。(キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。最近心が震えた映画は、メキシコの女性監督クラウディア・サントリュスのデビュー作「マルタのことづけ」(10月18日公開)。
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