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女優の真木よう子さん主演の映画「脳内ポイズンベリー」(佐藤祐市監督)が9日から全国で公開される。水城せとなさんの同名マンガが原作で、年下と年上、2人の男性との関係に悩む30歳女性の心情を、五つの思考の擬人化によって描き出すという一風変わったラブコメディーだ。真木さんは台本を読んだとき、「ちょっと変わった物語」だったため、オファーを受けるかどうかで悩んだそうだが、「今まで自分がやってきた役の中では珍しい役だったので挑戦してみたい」と気持ちを切り替え、ヒロイン役を受けることを決めたという。一体どんな役なのか。作品の見どころとともに話を聞いた。
◇自分の経験は否定したくない
真木さんが演じるのは、30歳の駆け出し携帯小説家の櫻井いちこ役。いちこは、年下の美大出身のアーティスト、早乙女(古川雄輝さん)との出会いに胸をときめかせる一方で、自分の小説を担当する年上の編集者、越智(成河=ソンハ=さん)からアプローチされる。2人の間で悩むいちこの脳の中にいるのが「ポジティブ」「ネガティブ」「衝動」「記憶」「理性」という五つの思考で、この五つが、ことあるごとにいちこの脳内で侃侃諤諤(かんかんがくがく)の議論を繰り広げ、彼女の言動を決めていく。ポジティブ担当の石橋を神木隆之介さん、ネガティブ担当の池田を吉田羊さん、記憶担当の岸さんを浅野和之さん、衝動担当のハトコを桜田ひよりさん、そして理性担当で会議の議長・吉田を西島秀俊さんが演じている。
真木さんは、いちこの心情は「理解できる」としながら、「私は、自分が生きてきたことや経験してきたことを否定してしまう言葉はあまり好きではないんです」と、自身と、自分を卑下しがちないちことの違いを指摘する。だからこそ、「自分を好きにならないと、そこから何も始まっていかないと希望を持つ決断をしたいちこには、すごく共感できた」と話す。
◇実は性格は「いちこ」寄り?
真木さんといえばこれまで、陰のある女性やカッコいい女性を演じることが多く、そのイメージが定着している。しかし本人は「何回も共演している西島さんが、『実は真木さんて、いちこに近いんだよね』と言ってくださるんですけど、本当にそうなんです。クールでカッコいいとおっしゃってもらえるのはすごくうれしいんですけど、実はものすごくふわふわしていて、何かを考えているようで、実は何も考えていないというか……(笑い)」と世間のイメージと素の自分のギャップに戸惑いの表情を見せる。
では、真木さんにとって今回のいちこは演じやすかったかというと、それはまた別のようで、真木さんによると「カッコいいとかクールとか、イメージが先行している役」のほうが、「お芝居もせばまってくるので考えやすい」のだという。それに対していちこは、「自分のやりたいことや好きな人のことを考えて、どちらかというと内気な性格。そういう女の子ってすごく多いと思うんです。そういう普通の子の役の方が、実は演じていて難しい」のだという。というのも、「どんなせりふ回しをしても、どんな表情をしても成立してしまう」からだ。それだけに今回のいちこ役は、「やってみると本当に面白いし、役の幅が広いからこそ役を作り上げていく楽しさもあるということを発見できた」と手応えを感じたようで、「これからもっとこういう役にチャレンジしていきたいです」と意欲を見せる。
◇「浮いていた」脳内メンバーとのランチ
撮影は、真木さんと、古川さん、成河さんの三角関係を中心にした“現実パート”を先に撮り、その後、“脳内パート”を撮るという順で進められた。真木さんが脳内メンバー5人と直接からむ場面は少なく、その5人はクランクイン早々に意気投合し、昼食は必ず5人そろってとっていたという。そんな5人に真木さんは、「楽しそうでしたよ。ものすごく仲がよくて」とうらやましそうな表情を見せる。真木さんも5人とランチを共にしたことがあったそうだが、「“黒いちこ”で登場したときに参加させていただいたんですけど、なにせ衣裳が衣裳なので脱げないんですね。そのままスタジオの食堂に行ったんですが、すごく浮いていて(笑い)。5人とはまだちょっと仲良くなれていないしで、おかしな光景だったと思います」と、いま一つ輪に入っていけなかったことが心残りのようだ。
生クリームが「あまり得意ではない」という真木さんだが、今回はケーキをしこたま、しかも一口で食べるシーンがある。そのときの撮影を振り返りながら「あれは大変でした」とぽつり。一口で食べたのは佐藤監督の演出ではなく、出されたのが一口サイズのケーキだったから。「これは一口でいった方がいいんだろうなと。しかもやけ食いというシーンだったので、一口でいっちゃおうと思って」と振り返る。結局、そのシーンで十数個のケーキを食べることになり、「結構きました」と苦笑した。
◇こんなに可愛い西島秀俊が見られるなんて…
真木さんに自身の脳内を分析してもらうと、一番活躍しているのは「ポジティブ」だという。そして「衝動」と言いかけ、「あ、でも最近、(衝動は)あまりなくなったかな」と笑い、「ポジティブが一番で、あとは並列」と言い直した。一番ポジティブと感じるのは、「失敗してしまったときや自分が落ち込みそうになったとき」に、「ちょうど劇中の神木君みたい」なキャラが、「いいじゃんいいじゃん、明日になれば忘れているよ」と言ってくれるのだという。
一番好きな脳内キャラに挙げたのは、西島さんが演じた「理性」。「西島さんとは何回か共演しているんですけど、こんな西島さんはなかなか見ない。だから見ていて、こんなに可愛い西島さんが見られるんだと思ってすごくよかった」と笑顔で見どころを紹介。そんな真木さんに改めて作品をアピールしてもらうと、男性には「『女の子ってなんでだろう』と思うようなところが、この映画を見たら、『なるほど、こんなことを考えているんだ』と感じ取ってもらえるんじゃないかと思います」と、女性には「共感できるところがたくさんあると思います。最後にいちこちゃんが未来に向けて進んでいくのも、きっと女性にはプラスのエネルギーを与えられると思います」と胸を張った。映画は9日から全国で公開。
<プロフィル>
1982年生まれ。千葉県出身。2001年、映画「DRUG」でデビュー。06年公開の「ベロニカは死ぬことにした」で初主演を飾り、「ゆれる」(06年)では、第30回山路ふみ子映画賞新人女優賞を受賞。ほかに「SP 警視庁警備部警護課第四係」(07年)や「週刊真木よう子」(08年)、「龍馬伝」(10年)、「最高の離婚」(13年)、「問題のあるレンストラン」(15年)などのテレビドラマに出演。映画は「モテキ」(11年)、「外事警察 その男に騙されるな」「つやのよる」(ともに12年)、「さよなら渓谷」(13年)、「そして父になる」(14年)、「風に立つライオン」(15年)などに出演。公開待機作に「劇場版MOZU」がある。
(インタビュー・文・撮影:りんたいこ)