映画「フレンチアルプスで起きたこと」のワンシーン(C)Fredrik Wenzel
ある出来事から、自ら父親の信頼を失墜させた男とその家族の姿を描き、2014年のカンヌ国際映画祭「ある視点」部門で審査員賞に輝いた映画「フレンチアルプスで起きたこと」が4日から公開される。リューベン・オストルンド監督はスウェーデン人。人間の社会的行動を的確かつユーモラスに描くことに長け、その鋭い洞察力から「北欧のミヒャエル・ハネケ」といわれている。そのオストルンド監督の日本初の劇場公開作だ。
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スウェーデンからフレンチアルプスに5日間のスキーバカンスにやってきた家族4人。普段、仕事に忙しい父トマス(ヨハネス・バー・クンケさん)は、ここぞとばかりに家族サービスに精を出す。久しぶりのトマスとのひとときに、妻エバ(リサ・ロブン・コングスリさん)も、2人の子供たち(クララ&ビンセント・ベッテルグレン姉弟)もうれしそう。そんな中、“事件”は起きた。トマスの父としての威信はあっけなくついえ、妻子との間に亀裂が入る。トマスは“理想のパパ”の座を取り戻そうと必死にあがくが……というストーリー。
最初は、何が起こるのか予測がつかなかった。ドキュメンタリーかとさえ思った。それほど独特の空気をかもし出していた。「1日目」のテロップが現れ、5日間の物語である今作における、トマスの危機的状況の“カウントダウン”が始まる……。ときおりゲレンデでは大砲のような爆発音が鳴り響き、それがまた家族に多大な影響を与えることになる。家族仲よくスキーに出掛けたのに、そこでの出来事によってあっさり父親の威信は失われ、必死にそれを取り戻そうとするがどんどんドツボにはまっていくトマス。幼い子供たちもあきれ顔。妻は「なんでこんな人と一緒になったの」的な表情で夫を見る。人間、危機的状況に陥ると本性が出るものだが、それにしてもトマスがとった行動はあんまりだ。その一方で、自分だったらどうするだろうと考えてしまう。他人事で済まされない話を、緊張感を持続させながら描いている。なるほどオストルンド監督は「北欧のミヒャエル・ハネケ」といわれるのもうなずける。なお、米国で今年の米アカデミー賞で作品賞など4部門に輝いた「バードマン」の製作スタジオによるリメークが決定しているという。4日からヒューマントラストシネマ有楽町(東京都千代田区)ほか全国で順次公開。(りんたいこ/フリーライター)
<プロフィル>
りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションを経てフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。
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