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俳優の水谷豊さんと女優の伊藤蘭さんの長女・趣里さんが主演を務める映画「東京の日」(池田千尋監督)が31日に公開される。今作は、メガホンをとった池田監督自身初の演劇作品「東京の空」「東京の歌」の世界観を掘り下げたラブストーリーで、東京の片隅でただ過ぎていく毎日を送る男と勢いだけで上京してきた女が出会い、2人の恋愛模様を通じ恋愛の本質について描いている。若者たちの等身大の物語だけではなく、東京・下北沢界隈で撮影された風景も重要なファクターとなっている。
とあるカレーが評判の東京のカフェでアルバイトする28歳の本田祐介(佐々木大介さん)は、不思議と自然に人の心にスッと入っていけるような青年だが、誰にも本心を見せることはない。ある日、本田はスーツケース一つで上京してきた23歳の女性・アカリ(趣里さん)と出会い、思い詰めた様子の彼女を放っておけずに自宅のアパートへと連れて帰り、そのまま一緒に暮らすようになり……というストーリー。
温厚で人当たりがよく、常に相手を気づかっているような雰囲気を持つ“分かりにくい男”本田と、芯の強さを秘めた“分かりやすい女”アカリという対照的な2人が出会うことによる化学反応がとても興味深い。本田が“草食男子”を絵に描いたような存在であるだけに、煮え切らない態度を続ける姿にはイライラさせられるが、実は優しく真摯(しんし)な対応には好感が持てる。無鉄砲でピュアすぎるアカリとのぎこちない会話には、そこはかとなく愛情にあふれている。いわゆるダメ男と真っすぐな女の恋物語だが、その実、心の変化が丁寧に描かれ、登場人物たちが一歩踏み出そうとする姿には勇気がもらえる。スナックでのカラオケシーンなど昭和の風情を感じさせる雰囲気も心地よく、説得力十分のラストにはうならされた。ユーロスペース(東京都渋谷区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)
<プロフィル>
えんどう・まさき=アニメやマンガ、音楽にゲームなど、ジャンルを問わず活動するフリーの編集者・ライター。イラストレーターやフォトショップはもちろん、インタビュー、撮影もオーケーと、どこへでも行き、なんでもこなす、吉川晃司さんをこよなく愛する自称“業界の便利屋”。