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映画「レヴェナント:蘇えりし者」のメインビジュアル (C)2015 Twentieth Century Fox Film Corporation.All Rights Reserved.
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映画「レヴェナント:蘇えりし者」のメインビジュアル (C)2015 Twentieth Century Fox Film Corporation.All Rights Reserved.

注目映画紹介:「レヴェナント:蘇えりし者」 大自然と自らの運命にあらがった男の再生を描く重厚な作品

 米俳優レオナルド・ディカプリオさんに今年の米アカデミー賞で主演男優賞をもたらした映画「レヴェナント:蘇えりし者」(アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督)が22日に公開される。昨年の「第87回アカデミー賞」で「グランド・ブタペスト・ホテル」と並んで最多タイとなる4冠を獲得した「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」のイニャリトゥ監督最新作で、米開拓時代を舞台に、大自然と自らの運命に抗った男の再生を描く重厚な作品に仕上がっている。

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 「レヴェナント:蘇えりし者」は、19世紀前半に実在した猟師で探検家のヒュー・グラスの実体験を、イニャリトゥ監督が、前作「バードマン」と同様に撮影監督のエマニュエル・ルベツキさんとのタッグで映像化。ディカプリオさんに加えて「マッドマックス 怒りのデス・ロード」のトム・ハーディさんや「ハリー・ポッター」シリーズなどで知られるドーナル・グリーソンさんらも出演。大自然が猛威をふるう極寒の地で9カ月にも及んだ過酷なロケと、キャストの鬼気迫る演技、自然光のみを使った撮影・演出は高く評価され「第88回アカデミー賞」では主演男優賞に加え、監督賞、撮影賞の3冠を達成した。

 舞台は1823年の米国。広大な未開拓地を行くハンターの一団に息子のホーク(フォレスト・グッドラックさん)とともにガイド役として同行していたグラス(ディカプリオさん)は、原住民の襲撃を間一髪で逃れたものの、狩猟中に熊に襲われ瀕死(ひんし)の重傷を負ってしまう。ハンターの一人であるジョン・フィッツジェラルド(ハーディさん)は、隊長のアンドリュー・ヘンリー(グリーソンさん)の指示のもと、多額の報酬と引き換えにグラスを死ぬまで見届け、埋葬する役を買って出るが、一緒に残ったホークを自らの手で殺し、グラスのことも見捨ててしまう。だがグラスは奇跡的に一命をとりとめると、フィッツジェラルドに復讐(ふくしゅう)を果たすため過酷なサバイバルに身を投じていく……というストーリー。

 まさに「未開拓」と呼ぶにふさわしい大自然の中、照明に一切頼らず、時に日没後の数十分間の薄明の時間帯=マジックアワーさえも絶妙に切り取ったイニャリトゥ監督とルベツキさんの手による映像マジックにも圧倒される。だが、今作は何はさておき初ノミネートから22年越しの悲願だった初オスカーを手中に収めたディカプリオさんの演技に尽きる。文字通り地をはい、雨水でのどをうるおし、獣を食らいながら、虫の息の状態から少しずつその身に力を宿し、最後には自らの手で復讐を果たすことになる。ディカプリオさんは主人公の執念が乗り移ったかのように神がかった演技で、氷点下にもかかわらず雪原に埋まり、川にも流されと決して誇張表現ではない命懸けのロケがもたらした奇跡を目にしたような気分にもなった。

 ストーリーは至ってシンプル。それでいてこれだけ重厚感のある人間ドラマを描けているのは、もちろん主役一人の力だけではない。そういった意味では存分に敵役としての存在感を発揮したハーディさんの熱演も見逃せないが、やはり今作におけるディカプリオさんの鬼気迫る演技の前ではかすんでしまうのは致し方ない。もちろん原住民の描き方には多少不満は残るし、主人公が不死身すぎるきらいもあるのだが、それらを含めての“自然そのもの”と“生きる術(すべ)”を教えてくれる作品だ。映画は22日からTOHOシネマズ日劇(東京都千代田区)ほか全国で公開。(山岸睦郎/MANTAN)

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