映画「君がくれたグッドライフ」のメインビジュアル (C)2014 Majestic Filmproduktion GmbH/ZDF
不治の病を宣告された男性が、友人たちと出掛ける最後の旅を描いたドイツ映画「君がくれたグッドライフ」(クリスティアン・チューベルト監督)が21日から公開される。主人公の真意に共感できるか否かで作品への評価が分かれそうだが、トロントやスイス・ロカルノといった世界の映画祭では称賛された。さて、日本の観客はどう受け止めるだろう。
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年に一度、気心の知れた仲間6人で各地を巡る自転車の旅に出かけるグループがあった。15回目を迎える今回はちょっと様子が違う。メンバーの一人、ハンネス(フロリアン・ダービト・フィッツさん)が目的地として選んだのはベルギー。フライドポテトにチョコレート、「スマーフ」や「タンタンの冒険」、さらに、ジャン・クロード・ヴァン・ダムの故郷ぐらいしか名物がない(これだけあれば十分だが)ことをボヤく仲間たち。しかしハンネスには、そこを選ぶ理由があった……というストーリー。
ドイツからベルギーに至る約500キロの自転車の旅。美しい風景の中、6人の自転車が疾走する。彼らの胸に去来するものは、決して楽しいことばかりではない。一人は不治の病に苦しみ、一人は愛する夫の余命におびえ、もう一組の夫婦は最近、関係が冷え切っていることに不安を抱いている。さらに、女癖の悪い独身男は、相変わらず若い娘の尻を追いかけ、主人公の弟もまた、兄の姿に苦しんでいる。それぞれに悩みを抱えつつ、しかし、車列は進む。6人は互いを思い合い、楽しげに過ごし、彼らを取り巻く自然は、彼らの不安をかき消すようにどこまでも美しい。
そんな6人を見ながら頭に浮かぶのは、もし自分がハンネスの立場なら、果たして自分の死を親しい友に打ち明けるか、という問いかけだ。考えても、なかなか答えは出せない。ただ、一つ感じたのは、人生をいかに生きるかということ。死を目前にしたとき、自分は何をしたいのか、何を残したいのか。生前、自分は何を成し、何を得たのか。他人に何を与えられたのか。それらの答えが見つかった時、きっと人は幸せに死ねるのだと思う。実は、ハンネスがベルギーを選んだ理由を知ったときは、いくらなんでも身勝手過ぎやしないかと思った。しかし、映画を見終えてしばらくすると、友人の立場として、ハンネスに感謝したくなった。21日からヒューマントラストシネマ有楽町(東京都千代田区)ほか全国で順次公開。(りんたいこ/フリーライター)
<プロフィル>
りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションを経てフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。
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