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映画「ボクの妻と結婚してください。」について語った織田裕二さん
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映画「ボクの妻と結婚してください。」について語った織田裕二さん

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織田裕二:普段泣けない“昭和の男”が現場でボロボロ泣いた 映画「ボクの妻と結婚してください。」語る

 俳優の織田裕二さんが、映画「踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望」(2012年)以来4年ぶりに主演した映画「ボクの妻と結婚してください。」(三宅喜重監督)が5日に公開された。映画は、樋口卓治さんの小説が原作で、織田さん演じる、余命宣告を受けた放送作家、三村修治が、自分の亡きあと妻子が幸せに暮らしていけるように妻の再婚相手を探すという一風変わったラブストーリーだ。妻・彩子役を吉田羊さんが、彩子の見合い相手をお笑いトリオ「ネプチューン」の原田泰造さんが演じている。織田さんは、修治の考え方に「可能性としてゼロじゃない」と共感を示す。そこにはどんな思いがあるのか。織田さんに話を聞いた。

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 ◇修治は織田自身?

 ――ご自身の著書「脱線者」(朝日新聞出版)に、「僕は死ぬまで楽しく笑っていたい」とか、独身のころ、結婚している方に、結婚とは「会社を興すようなこと」と言われたことなどが書かれていました。映画の中の修治もまさに同様のことを言っていますが、織田さんご自身は修治に共感しましたか。

 正直なところ、僕は、修治の考え方を否定する気はまったくありません。可能性としてゼロじゃないと思いました。だから、「ボクの妻と結婚してください」なんていう突拍子もない考えにも違和感を覚えなかったんです。

 ――ご自分は修治に似ていると?

 考え方はありだと思いました。僕も修治も日本人なんで(笑い)、普段から、妻に「愛しているよ」と言ったり、「行ってきます」と言ってキスしたり、そういうことは照れ臭くてできないんですよ。奥さんの方にも、そんなことをされたら困る、みたいなところがある。もちろん、妻のことも子供のことも愛しているんだけれど、それを“伝える”ということをしていない。感謝の言葉も言っていない。そのことに修治は(余命宣告を受けて)気付くわけです。じゃあ、一緒になってくれて愛した妻のために何ができるのか。そう思ったことがきっかけになって、残された時間を妻の結婚相手を探すことに使うわけです。

 ◇これは生きる話

 ――修治には、残された時間を妻と一緒に過ごすという選択肢もあったはずですが。

 例えば、病院で余生を過ごすとなると、病人と看護人になっちゃいますよね。僕も経験があるけれど、病人って精神まで蝕(むしば)まれていくじゃないですか。あれは怖いもので、普段どれだけ前向きな人でも、どこかが痛いとイライラしっぱなしになるから、だんだんと人に当たるようになるんですね。修治は、それが嫌だったんだろうな。彼は放送作家として、いろんなものを見たり、聞いたりしているから、自分はそっちじゃない方向、たとえ死期が早まったとしても、正常な思考でいられる方を選んだのだと思います。

 実は、薬を飲んだり、苦しんだりする闘病シーンは、もうちょっとあったんです。でも、三宅監督と「それはやめましょう」とあえて削っていきました。というのも、これは病気で苦しんで死んでいく人の話じゃない。人は必ず死にます。修治は、たまたまその時期が早まってしまっただけで、じゃあ、その決められた時間の中で、愛する人のために精いっぱい前向きに生きるとどうなるかという“生きる話”なんです。だから、涙が流れても決して暗くならないし、むしろ、流した涙で普段の生活でついてしまった心の垢(あか)がパーッと洗い流されてすっきりしたみたいな、そんな感覚の映画になったらいいなと思ったんです。

 ◇結婚式の涙は予定外

 ――人生でこれほど泣いたことはないというぐらい現場で泣いたそうですね。

 僕、普段は泣けない人なんです。昭和生まれで、男が泣くとは何たることか、みたいな時代を生きて来ているので(笑い)。でも、今回は現場で何度も泣きました。

 ――結婚式のシーンで涙をボロボロ流していました。

 あそこは、本当は泣く予定じゃなかったんです。でも、止まらなくて、もうNGだなと思いながらも悔しくてやり切ったんです(笑い)。あの映画で台本に「泣く」と書いてあるのは一カ所だけでした。いろんなことが全部ばれちゃって、どん底の修治が「なぜこんなことになってしまったんだ」とノートに向き合う場面。だけど結婚式のシーンは、本人としては泣く気はまったくなかったんです。

 ――涙を手の甲で拭い、まさに男泣きでした。

 あそこはノーメイクでした。だから何をやってもよかったんです(笑い)。

 ◇最高の共演者たち

 ――彩子役の吉田羊さんとの初共演はいかがでしたか。

 すごくやりやすかったです。(吉田さんの奥さん役は)完璧でしたね。だから、「ヨーイ、スタート」なんていう言葉を待っていられなくて、カメラが回る前から自然と(吉田さんの)手を握っていました。僕は待ち時間の間、屋外にいたんですけど、冬だったので手が冷えちゃって。だけど彼女の手が温かいんですよ。生きるってこういうことなんだな、温かいんだな、と思えるし、彼女も、僕が投げた球を嫌な顔一つせずに受け止めてくれるんです。だから、その気持ちのまま撮影に臨めました。

 ――原田泰造さん演じる伊東正蔵がすてきでした。

 恥ずかしくなるぐらい完璧な男ですよね(笑い)。カッコいいから難しいんですよ。あんな二枚目を演じるのは、僕だったら絶対嫌だと思う。照れちゃってできませんよ。そういう難しい役を、原田さんは独特の間や表情で演じていらっしゃって、あの物語にリアリティーをもたらしてくれたんです。素晴らしいと思いました。

 ――印象に残るシーンはどこですか。

 一つじゃないんですよ。この作品結構いっぱいあって、それを考えると涙が出てくるので……今は泣かないですよ、昭和ですから(笑い)。どのシーンにもすごく思い入れがあるので、ここ、というのがすごく難しいんですが、最初、台本を読んだときは、原田さんの会社に行くシーンが一番印象的でした。監督に、最初に芝居を見せてくださいと言われたとき、涙が出過ぎて最後のせりふが言えなかったぐらいです。それから、息子に宛てた手紙の、最後の一言にやられました。あの言葉、ずるいと思いません? 僕は涙もろくないはずなんですけど、この作品って涙腺を刺激するツボがいっぱいあり過ぎちゃって、ダメなんです。さっき、僕の本の話をしてくださいましたが、やっぱりちょっと自分とリンクしちゃうんです。

 ◇修治と彩子は今の日本人夫婦の典型

 ――今回の作品に出演されて、織田さんご自身、生きるということ、あるいは、結婚観、夫婦観、家族観に対して改めて思ったことはありましたか。

 僕に限らず、日本人なら身につまされるところがあるんじゃないかと思いますね。欧米の人は、結婚して何年たっても奥さんに「愛しているよ」と言うとか、割と感情をオンにしているじゃないですか。でも日本人ってそういうことが苦手だから、特別な機会がないとそこを見つめ直せないというか。そういう、なんとなくズルズルときちゃっているところを、変えるなら今かもしれないと思えたかな。でも、だからといって、世のダンナさんが奥さんのことを大事にしていないというわけじゃなくて、陰で一生懸命やっているわけじゃないですか。それはそれで日本人の美しいところかなとも思いますね。

 ――夫婦で見るにはぴったりの作品ですね。

 修治と彩子は、今の時代の、よくある日本人の夫婦の典型かもしれない。だから、夫婦のラブストーリーと謳(うた)っているのにベタベタしているシーンが一切ない。せいぜい手をちょっと握るぐらい。それも面と向かってではなく、相手が寝ているとき(笑い)。でも、ラブストーリーになっているという作品なんです。

 ――公開を楽しみにしている人にメッセージをお願いします。

 寒くなってくると人恋しくなるじゃないですか。そんなときに見ると温泉に入ったように温まれるし、日ごろついたいろんな汚れや垢がデトックス(浄化)されて、すっきりできる作品だと思います。僕は、来年になっても、10年たっても、その(寒くなる)時期が来たら見たくなるような映画になったらいいと思っているんです。見て心が重たくなるような映画ではないですし、僕も真面目にやっていますんで(笑い)、ぜひ、ちょっと温まりに、デトックスしに(劇場に)来てください。

 ――最後に、みなさんにお聞きしているのですが、織田さんが初めてはまったポップカルチャーを教えてください。

 「ルパン三世」かな。テレビアニメの一番初期のころのシリーズで、ルパン三世が銭形警部にすごく屈辱的な捕まり方をして死刑になっちゃうという話。捕まったルパンは、「俺はルパンじゃない」ってずっと言い続けるんです。時間がたって、いよいよ死刑になるという日に、ルパンは伸ばしていた爪でひげを半分だけ剃って看守と入れ替わるんです。看守は当然、「俺はルパンじゃない」と言うわけですよ。で、ルパンは逃げて屈辱を晴らすという。その話はいまだに覚えています。小学生ぐらいだったかな。あのころの「ルパン三世」って大人のアニメだったんですよね。大人の世界への憧れが強かったのかな。だから、初めて買ったレコードも「ルビーの指輪」で、あと、中1ぐらいだったかな、CMで流れたジョージ・ベンソンの「Turn Your Love Around」もジャジーな感じがすごく好きでした。

 <プロフィル>

 1967年生まれ、神奈川県出身。87年、映画「湘南爆走族」で主演デビュー。91年の主演ドラマ「東京ラブストーリー」の“カンチ”役で大ブレークし、その後、「振り返れば奴がいる」(93年)、「お金がない!」(94年)などのドラマを経て、「踊る大捜査線」(97年)で主演。このドラマは映画化され、「踊る大捜査線 THE MOVIE 湾岸署史上最悪の3日間」(98年)をはじめ4作が劇場公開された。そのほかの出演した映画に「ホワイトアウト」(2000年)、「T.R.Y.トライ」(02年)、「県庁の星」(06年)、「椿三十郎」(07年)、「アマルフィ 女神の報酬」(09年)、「アンダルシア 女神の報復」(11年)などがある。主演ドラマ「IQ246~華麗なる事件簿~」(TBS系)が放送中。公式サイト(http://www.yuji-oda.com)。

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