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生田斗真さんが主演し、「かもめ食堂」(06年)の荻上直子監督が手がけた「彼らが本気で編むときは、」が25日から公開される。トランスジェンダーのリンコ(生田さん)と、育児放棄された少女、その叔父さんでリンコの恋人マキオ(桐谷健太さん)が共同生活を送る人間ドラマだ。晴れ渡る空の下、3人が本当の家族のようにピクニックをするなど温かいシーンが満載だ。
小学5年生のトモ(柿原りんかさん)は、母親ヒロミ(ミムラさん)と2人暮らしだったが、ヒロミが男性を追って行方をくらましてしまい、トモは叔父のマキオの家に世話になることになった。マキオは恋人のリンコと一緒に暮らしていた。リンコの手料理や掛けてくれる言葉の優しさに、トモは自分の母親以上の安らぎを感じ始める。リンコのある目標に向かって一緒に編み物をし、幸せな時間が流れていくのだが……というストーリー。
小池栄子さん、門脇麦さん、田中美佐子さん、柏原収史さん、昨年11月に亡くなったりりィさんら豪華俳優陣が出演。荻上監督のオリジナル脚本で、「レンタネコ」(2012年)以来5年ぶりの作品となった。荻上作品やドラマ「深夜食堂」(09~16年)でおなじみのフードスタイリストの飯島奈美さんが手がけるおいしそうな料理の数々も見どころだ。
生田さんと桐谷さんが、自然な雰囲気で恋人同士を演じている。「秘密 THE TOP SECRET」や「土竜の唄 香港狂騒曲」(共に16年)でのパワフルな役柄とはうって変わって、上品なスカート姿のトランスジェンダー役に挑んだ生田さんは美しいだけでなく、トモの本当の母親になれたらという複雑な胸の内も繊細に演じ切っている。一方の桐谷さんは、そんなリンコの母性を目の当たりにし、トモと3人で暮らす家庭を思い描くようになるさまを、確かな演技力で表現してみせた。ごちそうを囲む食卓、土手を走る自転車……日常の一コマ一コマに、普通に暮らす幸せが描かれている。 なお今作は、18日(現地時間)まで行われていた第67回ベルリン国際映画祭のパノラマ部門とジェネレーション部門で上映され、LGBT(性的少数者)を題材にした全37作品の中から優れた作品に贈られる「テディ賞」の審査員特別賞を受賞した。同賞創設(1987年)以来、日本映画では初受賞の快挙となった。映画は25日から新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほかで公開。(キョーコ/フリーライター)