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「借りぐらしのアリエッティ」(2010年)や「思い出のマーニー」(14年)で知られるスタジオジブリ出身の米林宏昌監督がジブリ退社後、初めて手がけた劇場版アニメ「メアリと魔女の花」が、8日にTOHOシネマズスカラ座(東京都千代田区)ほかで公開される。同じジブリ出身の西村義明プロデューサーが設立した「スタジオポノック」の長編第1作。「となりのトトロ」や「魔女の宅急便」「ハウルの動く城」などジブリの名作のいいところを凝縮した冒険譚(たん)。ほうきでの飛行シーンの爽快さや背景に広がる森や田園の緑の美しさに目を奪われる。
英国の女流作家メアリー・スチュアートさんが1971年に出版した児童文学「The Little Broomstick」が原作。赤い館の村に引っ越してきた背が低く、クセ毛の赤毛にそばかすの平凡な11歳の少女メアリは、猫のティブとギブに導かれ、森で7年に1度しか咲かない不思議な花「夜間飛行」を見つける。その花はかつて魔女の国から盗み出された禁断の「魔女の花」だった。一夜限りの不思議な力を手に入れたメアリは、雲海の中にそびえ立つ魔法世界の最高学府「エンドア大学」への入学を許されるが、メアリがついた一つのうそが大切な人を巻き込んだ大きな事件を引き起こす……という展開。
女優の杉咲花さんが主人公・メアリの声を担当。神木隆之介さん、天海祐希さん、小日向文世さん、満島ひかりさん、佐藤二朗さん、遠藤憲一さん、渡辺えりさん、大竹しのぶさんらが声優として出演する。4人組バンド「SEKAI NO OWARI(セカオワ)」が今作のために主題歌「RAIN」を書き下ろした。
ドワンゴの川上量生(のぶお)さん、カラーの庵野秀明監督、スタジオポノックの西村さんが設立した背景美術会社「でほぎゃらりー」が背景美術を担当。同社はスタジオジブリで数々の名作に美術監督として携わってきた男鹿和雄さんと武重洋二さんをアドバイザーに迎え、11人の絵描きで構成されている。今作では、ジブリの遺伝子を受け継いだ手描きの背景の重厚感と芸術品のような美しさにうっとりさせられる。その背景の中で、ほうきで魔法世界と現実世界を行き来するメアリの躍動感は、宮崎駿監督お得意の飛行シーンを彷彿(ほうふつ)させる。エンドア大学の中でのハラハラドキドキの展開も思わずスクリーンに引き込まれる。2時間に満たない長さの作品だが、内容が濃く、見終わった後、充実感に満たされた。(細田尚子/MANTAN)