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俳優の鈴木亮平さんが主演を務める2018年のNHK大河ドラマ「西郷(せご)どん」(NHK総合で日曜午後8時ほか)が7日、スタートする。誰もがその名を知る明治維新のヒーロー・西郷隆盛(吉之助)を演じる鈴木さんだが、「吉之助さんの魅力は共感力。すごく泣きますし、いつの時代でも相手の立場になって考えられる、当時としては女性っぽい繊細さを兼ね備えた人で、ある種“草食系”に寄っているかもしれない」と明かす。また上野の銅像をはじめとする一般的なイメージや原作に描かれた“目力”についても「あえて気にせず、意識しないようにしています」とあくまで自然体を貫く鈴木さんに、ドラマへの思いを聞いた。
◇男にも女にもめっぽうモテた西郷どん 一番の魅力は「共感力」
「西郷どん」は、明治維新から150年となる18年に放送される57作目の大河ドラマで、林真理子さんの小説が原作。薩摩(現在の鹿児島県)の貧しい下級武士の家に生まれた西郷隆盛(吉之助)の愚直な姿に、カリスマ藩主・島津斉彬が目を留め、西郷は斉彬の密命を担い、江戸へ京都へと奔走する。勝海舟、坂本龍馬ら盟友と出会い、革命家へと覚醒し、やがて明治維新を成し遂げていく……という内容。
今作で描かれるのは、男にも女にもめっぽうモテて、周囲から親しみを込めて「西郷どん」と呼ばれたという“人間・西郷隆盛”だ。鈴木さんは「すごく人間力があって、愛された方という印象があります。目の前にいる人の痛みを自分の痛みのように感じてしまう、僕は『共感力』って呼んでいるんですけど……。とにかく考えるより先に行動する。当たって砕けろ精神を生まれたときから持っている人。すごくうらやましいですし、僕もそうありたい」と明かす。
西郷隆盛といえば東京・上野の銅像や弟の従道をモデルに描かれたという肖像画が有名だ。鈴木さんは、役作りへの真摯(しんし)な姿勢で知られるが、今作に限れば「あえて気にせず、意識しないようにしています」と話す。原作で強調されている“目力”についても、「文献を見ると、西郷さんって目が異常に大きくて、黒目に吸い込まれそうだって書かれていて、かたや僕は正反対の目をしている。最初そこは悩みましたが、今までも肖像画に似ても似つかない人はたくさんいたわけで、自分が持っていないものを追いかけてもしょうがないので、吉之助さんの慈愛に満ちた目を意識しながらやっています」と説明する。
◇薩摩の男たちの逆境の物語 薩摩弁には苦戦?
ドラマには西郷隆盛の盟友・大久保利通(正助)をはじめ薩摩の男たちが数多く登場する。彼らが逆境を乗り越え、愛と勇気で時代を切り開いていく姿も見どころとなる。「考えるよりまず動くっていう、そういう部分を“美徳”とする精神は薩摩には昔からあって。実行力、行動力は本当にすごいなって思います。吉之助さんはすぐ安請け合いし、すごく身分の高い人に意見して危ない目に遭ったりする。でも動かないと見えてこない世界、出会うことのない人がいて、西郷さんの財産に後々なっていくので、無鉄砲でいいから当たってみるのは大事なことなんだなって学んでいます」と語る。
また当時の薩摩にあって、実は「男が泣く」ことが一つの美徳でもあったいい、「人に感動して泣く、悔しさで泣くってことは美徳のうちだったって歴史公証の先生に聞いて。僕らが思う男らしさってことにこだわらず、人間くささを強調しながら今はやっています。時代によって男らしさの尺度が変わることはあると思いますけど、特に男らしさはあまり意識はしていないです」ときっぱり。
さらに「男らしい社会の中でもいろいろなキャラがいて、吉之助さんは当時としては女性っぽい繊細さを兼ね備えた人で、ある種“草食系”に寄っているかもしれないです。あの時代にしては珍しいっていう、そこを生かしながら演じることができれば」と演技プランを披露する。
一方で、薩摩弁には苦戦中で「短い文章なら大体アクセントの位置が分かってきたんですけど、長い文章になると、自分で想像していたものと、(学習用にせりふが吹き込まれた)テープを聴いたときの、差がすごくあって。こんなにやっていてもまだ分からないものかっていうくらいです。せりふはすぐ覚えることはできるんですけど、アクセントの位置を覚えるのに、普段の何倍も時間がかかり、台本と向き合っている時間がすごく多いです」と苦労を明かした。
◇島津斉彬役・渡辺謙から“金言” 相撲シーンは「本番一発」
薩摩藩主・島津斉彬役の渡辺謙さんからは、顔合わせのときに「とにかく気にせず、前だけを向いて、前のめりに突っ走って、転んでもいい、それを俺たちが全力でサポートするから、心配ごとは全部俺らに預けて、お前は突っ走っていけ」と声を掛けられたという。「これぞ自分が目指すべき道というか、尊敬できる先輩に改めて出会えました」と充実の表情を浮かべる。
鹿児島ロケの思い出を聞くと、「仙巌園(鹿児島市)でずっと撮影をしていたんですけど、景色もよくて、世界遺産の庭園に土俵を作って、御前相撲をやらせていただいて。あれは特別な経験でしたね、ずっと晴れて、地元の大きな力にも歓迎されているのかなって感じましたね」と振り返っていた。
中園ミホさんの脚本については、「せりふがグッとくるものが多いです。自分が言うせりふより、言われたせりふが印象に残るんですけど、一つ一つが吉之助さんや視聴者の気持ちに残るような強烈なせりふで、いちいちグッとくる。あと愛情の描き方っていうのが、中園さんらしいと思います。女性的というか、男女の恋愛のように、主従や親友の関係を描いていて、より濃い人間関係になっている。それが当時の薩摩の気風にマッチしているような気がしていて。男が男にほれるっていう、本当に素晴らしくて、演じがいがあります」と心酔していた。
NHK大河ドラマ「西郷どん」は、7日から毎週日曜午後8時にNHK総合ほかで放送。