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俳優の鈴木亮平さんが主演を務めるNHKの大河ドラマ「西郷(せご)どん」。物語は13日放送の第18回から奄美大島や沖永良部島といった“南の島”に舞台が移り、新章がスタートした。鈴木さんは、心酔していた“殿”こと薩摩藩主の島津斉彬(渡辺謙さん)と、思いを共にしてきた京の僧侶・月照(尾上菊之助さん)を亡くし、精神的にどん底の状態で島流しにされる主人公・吉之助について「気持ちは死に向かっていた」と推測する。また島での暮らしを、のちに維新を成し遂げる「西郷隆盛」を形作る「不可欠なピース」とも語る鈴木さんに話を聞いた。
「西郷どん」は、明治維新150年となる2018年放送の大河ドラマ57作目。薩摩の貧しい下級武士の家に生まれた西郷隆盛(吉之助)の愚直な姿にカリスマ藩主・島津斉彬が目を留め、斉彬の密命を担い、西郷は江戸へ京都へと奔走する。勝海舟、坂本龍馬ら盟友と出会い、革命家へと覚醒。やがて明治維新を成し遂げていく……という内容。
◇島のスタートは「絶望と自己嫌悪」 愛加那のタメ口にキュンキュン?
6日放送の第17回の最後で、幕府に追われ、藩にも裏切られ、月照と2人、海に身を投げた吉之助。その後、一人奇跡的に助かったものの、生きる気力を失った吉之助は「菊池源吾」と名を変えて、奄美大島に身を隠すことになる。
島で暮らし始めたころの吉之助の心境について、鈴木さんは「絶望と自己嫌悪です。自分だけが生き残り、気持ちは死に向かっていましたね」と推測し、「つらいことも、つらいと感じないぐらいゼロだった。何も感情がなく、自然の美しさも、人の優しさも感じず、島の風習さえも見下す。今までの吉之助と違っていたので、驚きながら演じていました」と振り返る。
そんな吉之助を変えたのが、2番目の妻となる島娘・とぅま(愛加那、二階堂ふみさん)との出会いだ。「二階堂さんが演じる愛加那さんは、吉之助さんに遠慮がないんです。吉之助さんは母親からも敬語を使われていましたが、愛加那さんはタメ口で来るわけです。吉之助さんの中では『おっ!』という“キュンキュン”ポイントでした」と笑顔を見せる。
愛加那役の二階堂さんについても「感受性の塊で、客観的に状況を見ながら、アイデアを出すなど演技に対してストイック。自分より年は下ですが、かなり引っ張っていただきました。もう『二階堂さんの感性に染まるほうがいい』と思いました」と信頼を寄せる。
◇薩摩の搾取と支配構図を知った吉之助は… 妻子への愛と葛藤「生々しさ出せたら」
第18回では、島民たちが薩摩からの搾取に苦しんでいることをとぅまから聞いたものの、自分で目にしたことさえも信じられず、怒りに震えるシーンもあった。それは民のために働いてきたと自負する吉之助を根底から覆すような出来事で、「吉之助さんは政治に関わっていたけれど、すべての民を平等に扱えるかは別問題。ただこの時期の吉之助さんは『こんなことはあってはならないこと』と思いましたね」と思いを重ねる。
一方で鈴木さんは、本国からは見えない、薩摩の搾取と支配構図を知ったことは「吉之助が広い視点を持つきっかけになった」といい、「昔は殿(島津斉彬)についていくだけだったのが、世界を見る視点になった。島ではこれまで見えなかった国のことが見えてくるわけで、どっしりした存在感につながったんじゃないか」と考える。
加えて、この時期は「吉之助から西郷隆盛になっていくための時期」で、「のちに頼もしくなるのは、島での幸せな生活と過酷な体験だと思います。島での暮らしは西郷隆盛を形作る不可欠なピース」と断言する。
また島で吉之助は、愛加那との間に子供をもうけるが、やがて藩から帰還命令が届く。「愛加那さんから見たら悲しいことで、妻子を置いて出ていく葛藤はありますが、自分の中で正当化させすぎず、美化することなく演じたい。武士の使命は強かったと思うのですが、でも同じ人間ですから、妻や子への愛情を持っていたでしょうし、生々しさを出せたら」と力を込めた。
大河ドラマ「西郷どん」はNHK総合で毎週日曜午後8時ほかで放送。