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女優の尾野真千子さんが、短編アニメ集「ちいさな英雄-カニとタマゴと透明人間-」の1編「サムライエッグ」(百瀬義行監督、16分)で声優を務めた。卵アレルギーを持った少年シュンとその家族が懸命に生きる姿を描いた「サムライエッグ」でママの声を担当した尾野さんは、今回アニメの声優にほぼ初挑戦で、改めて「深夜のアニメとか見るけれど、声優さんってすごいなと思った」という。そんな尾野さんに、レコーディング中のエピソードやアニメ作品について、今作の見どころなどについて聞いた。
「ちいさな英雄-カニとタマゴと透明人間-」は、スタジオポノックの短編アニメーションプロジェクト「ポノック短編劇場」第1弾。カニの兄弟の大冒険を描いたファンタジー「カニーニとカニーノ」(米林宏昌監督、18分)は、女優の木村文乃さんが主人公のカニーニ、鈴木梨央さんが弟カニーノを演じている。「サムライエッグ」は篠原湊大(そうた)君がシュンの声を担当。俳優の坂口健太郎さんも出演している。見えない男の孤独な闘いを描いたスペクタクルアクション「透明人間」(山下明彦監督、13分)は俳優のオダギリジョーさんが透明人間、田中泯さんが盲目の男の声を担当している。この短編3編とオープニング&クロージング(計7分)の映像で構成されている。
◇アニメの声優がキラキラして見えた
尾野さんは、自身が声優を体験してからアニメを視聴者として見てみると「例えば戦うシーンなどで、よく戦っているな、よくあんなにハアハアって言えるなっていう(笑い)。自分でやったあとって、すべてがキラキラして見えました」という。「深夜のアニメとかも見ていると、どうやって声を出しているんだろうと思って。吐息だとか何かしら声が出ているんですよ。でも自分でやるとどこで声を出していいのか、あいづちを入れていいのかとか、分からなかったりして、本当に難しかった」としみじみ語る。
尾野さんが演じた役はジャズダンスのインストラクターで、踊るシーンも登場する。尾野さんとダンスとの関わりを聞くと、「絶対にないでしょ。できるように見えますか?(笑い) ダンスの経験って本当にない。クラブで踊ってますという芝居とか、それくらいしかないので、ダンスとは無縁でしたね」という。踊っているときの声は、取材日にはまだ収録していなかったが、「とりあえず全速力で走って、(息を上げてから)スタジオに入ろうかな」と話していた。
せりふは大阪の岸和田弁で語られる。「すごくなじみ深くて、方言指導の方が入ってくださったんですけど、朝ドラ(尾野さんがヒロインを務めた2011~12年放送のNHK連続テレビ小説『カーネーション』)のときと同じ方なんです。でも、ちょいちょい直されましたね。関西弁はいいんですけど、やっぱり岸和田弁って独特の表現をするところがあるので、そのへんは教えてもらって」と話していた。
演じる上で大切にしたことは、「一生懸命すぎてあまり覚えていないんです(笑い)。でも、せりふを言うというよりは、気持ちから声を出したいなという願望もあったので、そこの境目で苦しんでいた部分もあるんですよね。生身が演じるものと、絵が演じるものとやっぱり全然違うし、自分の生身から出る声では通用しない部分もあったので、大変でした」と語る。
◇子供時代に楽しんだアニメは?
子供時代は決められた時間の中でアニメを楽しんだという。「時間が決められていましたけど、見たいものを親に言って見てましたね。マンガを買ってもらえない家だったので、友達が『週刊少年ジャンプ』とかで読んでいた作品を、うちではそれがアニメになったときにテレビで見るという感じでした」と明かす。
見ていた作品は「『ドラゴンボール』『スラムダンク』『YAWARA!』『シティハンター』、あと『小公女セーラ』とか。父が帰ってくるまでの夕方の枠と、父が帰ってくるとニュース番組を見るので、ちょっと寝ている間にチャンネルを回したりして、“戦い”でした(笑い)」と話す。最近は「アニメを見る機会が増えましたし、大人になって映画館に行けるようになったので(劇場版アニメを)映画館で見たりしています」と話す。
「サムライエッグ」の百瀬監督は、今年4月に亡くなった高畑勲監督の「火垂るの墓」(1988年)で原画を担当。13年の「かぐや姫の物語」では飛翔場面とラストのシーン設計を担当した。高畑監督の作品について、尾野さんは「『火垂るの墓』はもちろん『おもひでぽろぽろ』『かぐや姫の物語』も見ました。やっぱり。『火垂るの墓」が大きいですね。若い時に見たけれど、映像を鮮明に覚えています。何回も見たわけではないのに、頭の中にいろんなことを植え付けられたな、と。戦争というものを植え付けられたし、それこそ生と死について、悲惨さとか、その中に楽しさがあったり。あの作品一つで、すごくいろんなことが私の中に入り込んだと思います」と語る。
◇アニメの面白さは?
尾野さんが考えるアニメーションの面白さは? 「生身でできないことをやってのけることかな。アニメだと、魔法だったりしても、実際に起こっているかのようにすんなりと見せられる。魔法使いになってみたいという夢を持てたり。やっぱり生身では感じられない、演じられない、出せない魅力がありますね」と表現する。
「サムライエッグ」については「誰もが共感できるお話だなと思います。自分がアレルギーでなくても、身近にアレルギーの人がいらっしゃったりすることが多いので、共感しやすいと思います。あと、卵のようにそんな小さなもの一つで子供の命が奪われる、私が演じたのは子供を守っていく側ですけど、そんなふうに頑張って生きなきゃいけない、その気持ちがとてもよく分かる。私の声と共に、皆さんにも共感してもらえたらいいなと思いました」とメッセージを送った。
次回は、収録秘話や尾野さんの休日の過ごし方、生き方などについて聞く。
<プロフィル>
おの・まちこ 1981年11月4日、奈良県出身。河瀬直美監督に見いだされ主演映画「萌の朱雀」(1997年)でデビュー。河瀬監督と再タッグした主演映画「殯(もがり)の森」(2007年)はカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞。11~12年にNHK連続テレビ小説「カーネーション」でヒロインを演じた。今年の公開作に「素敵なダイナマイトスキャンダル」「クソ野郎と美しき世界」、19年の公開待機作として「影踏み」がある。