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6月28日から公開中の映画「凪待ち(なぎまち)」(白石和彌監督)に出演している女優の西田尚美さん。映画はパートナーの女性とその娘と共に彼女の故郷の宮城県石巻市で再出発しようとする男を主人公に「喪失と再生」を描いた人間ドラマで、西田さんは香取慎吾さん演じる主人公・木野本郁男の恋人であり、恒松祐里さん演じる美波の母親でもある亜弓役を演じている。香取さん、恒松さんと“家族”として共演し、「せりふを言い合ったりする中で生まれる空気みたいなものが、すごく刺激になる」と語る西田さんに、映画の撮影エピソードや女優という仕事の面白さ、モチベーションなどを聞いた。
◇共演者と生み出す“空気”が刺激に
香取さん、恒松さんらと“家族”を演じる上で大きかったのは「その場の空気」だったという西田さん。「現場に入って、そこにいる香取さんと恒松さんとの空気でそう(家族のように)なった、という部分がすごく大きかったと思います」と語る。
共演者と生み出す「空気」は、今作のみならず、女優という仕事をしていく中で欠かせない大事なもののようだ。「今回、香取さんや恒松さんとは『初めまして』でしたけど、そんな方たちとも、いきなり出会って役で家族になったりする。いきなりがっぷり組んで演技して、そこで“何か”が生まれるんですよね。せりふを言い合ったりする中で、そこに生まれる空気みたいなものが、自分の中ですごく刺激になるんです」と語る。
さらに「作品は一人じゃ作れない。『対、人』で何かが生まれたりすると、やっぱりすごく楽しい。それで、やめられないでいる感じがするんですよね」と女優を続けるモチベーションを明かす。
さまざまな役を演じてきた西田さん。新たに挑戦してみたい役や作品などを聞いてみると、即座に「どんな役でも挑戦したいですよ」とほほ笑む。「それぞれいろんな役がある。今回のような役もあれば、コメディー的な役もあったりする。役によっていろんな人生を生きられる、本当に特殊な仕事だなと思うので、『いろんな役ください』って思います」と目を輝かせる。
◇白石組初参加の感想は…
白石監督の作品への出演は今作が初めてという西田さん。「もともと白石監督の作品はよく見ていましたし、(オファーは)ちょうど「孤狼の血」(2018年)を見た後だったので、すごくうれしかったですね」と喜び、「監督は欲しい画(え)が明確で、すごく決断が早くて気持ちよかったです」と撮影の感想を明かす。
取り返しのつかない事件をきっかけに、どこまでも堕(お)ちていく主人公・郁男の「喪失と再生」をテーマに描かれている。西田さん演じる亜弓は、郁男の恋人として、また美波の少し口うるさい母として、存在が失われてからも家族の記憶の中に生き続ける重要なキャラクターだ。「みんなの記憶の中で生き続けなければならないので、生きているときにどれだけ生き生きするか、という思いはありました」と西田さんは話す。
亜弓を演じるにあたって、事前に役をあまり作り込まなかったという。「作り込んでいくというよりは、その街の空気に助けてもらうことの方が多い気がします。とりあえずせりふさえ覚えておけば、あとはその土地が助けてくれると思って現場に入ることが多いです。特に、地方のロケの場合はそうですね」と語る。
今作の撮影中も、合間にロケ地となった女川や石巻の街を地元の人と車で見て回った。「おいしいものを出していただいたり、皆さんにすごくやさしくしてもらって。そういうことがあると、『そこに自分もいたんだ』と錯覚するというか……好きになるじゃないですか。そういう、人との触れ合いに助けられた部分はたくさんあります。『この街に自分が住んでいたんだ』という空気のようなものが感じられて、そこでロケをするというだけで、すごく味方をしてもらえる」とロケ地への思いを明かす。
劇中では、香取さん、恒松さんと生み出す“空気”を大事に、恋人役、母親役を演じ切った西田さん。改めて香取さんらと家族を演じた感想を聞くと、「本当に、普通に家族みたいに一緒にいました。6~7月の蒸す時期だったけど、撮影中はクーラーがつけられないので、逃げ場となる部屋を作ってもらって、終わったらみんなでそこになだれ込んで(笑い)」とエピソードを明かし、「普通に、ただそこにいただけだったけど、みんながそこに自然にいた感じがよかったのかなって思います。それをそのまま切り取って映してもらった気がしましたね」と振り返った。
「凪待ち」は、「クライマーズ・ハイ」「ふしぎな岬の物語」などの加藤正人さんが脚本を担当するオリジナル作品。毎日をふらふら過ごしていた郁男(香取さん)は石巻で亜弓(西田さん)や亜弓の娘・美波(恒松さん)らと暮らす中で平穏を取り戻しつつあるように見えた。だが、小さなほころびが積み重なり、やがて取り返しのつかない事件が起きてしまう。郁男は絶望的な状況から、次第に自暴自棄になり……というストーリー。
<プロフィル>
にしだ・なおみ。1970年生まれ、広島県出身。モデル活動を経て女優へ。主な映画出演作に、「ひみつの花園」(1997年)、「ナビィの恋」(1999年)、「南極料理人」(2009年)、「追憶」(2017年)、「友罪」(2018年)など。舞台やテレビドラマでも活躍中。映画は「五億円のじんせい」(文晟豪監督、7月20日公開)などの公開が控えている。