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映画「人間失格 太宰治と3人の女たち」について語った蜷川実花監督(左)と小栗旬さん
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映画「人間失格 太宰治と3人の女たち」について語った蜷川実花監督(左)と小栗旬さん

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小栗旬:「太宰と一緒にいないときの3人の女性の強さ」に感服 蜷川実花監督の演出のこだわりとは…

 蜷川実花監督がメガホンをとった映画「人間失格 太宰治と3人の女たち」(9月13日公開)で、作家・太宰治(本名・津島修治)を演じる俳優の小栗旬さん。小栗さんが映画の中で対峙(たいじ)するのは、宮沢りえさん、沢尻エリカさん、二階堂ふみさんという個性も美しさも三種三様の女優たちだ。宮沢さんは太宰の正妻・津島美知子、沢尻さんは太宰の愛人であり弟子の太田静子、二階堂さんは太宰の“最後の女”、山崎富栄を演じる。蜷川監督と小栗さんに、「3人の女たち」の演出や、三女優との共演について、また健康法や10年後について聞いた。

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 ◇女性が自分たちの物語だと感じてもらえる作品に

 女性3人のキャラクターについて蜷川監督は、「今の私たちが見ても共感できるところを(脚)本の段階からなるべく入れていきました」と話す。例えばそれは、「(沢尻さん演じる)静子と太宰がいちゃいちゃしている朝のシーン」や、「太宰が上に乗っているときの、(宮沢さん演じる)美知子さんの冷めた顔」、あるいは「(二階堂さん演じる)富栄が自分でパンツを脱いで自分で切なくパンツをはくシーン」。そうした、「誰にでもなんとなく思い当たる節があって、実際に彼女たちがそういう行動に出てもおかしくないようなところ」は現代を生きる女性たちが、「自分たちの物語だと感じてもらえるといいなと思いながら演出していたかもしれません」と説明する。

 小栗さんは、そんな三女優との共演を、「三者三様にすごい瞬間はいくつもありました」とした上で、「美知子さんには、太宰は基本的に一つもかなわないので、いつもいいものを宮沢さんからいただいていると感じながら過ごさせてもらいました。ふみちゃんはふみちゃんで、すごく愛情を持って修治(太宰の本名)さんと一緒にいてくれたので、とてもありがたかったですし、沢尻さんは沢尻さんで、『本当に楽しかったわ』と言って帰っていってくれたから、それはそれでよかったなあと(笑い)」と振り返る。

 さらに、完成した映画を見て小栗さんが強烈に感じたのは、「太宰と一緒にいないところでの、女性たちの強さ」だった。蜷川監督も「そこは結構こだわったところ」で、「明確な演出意図がありました」と明かす。

 静子が、千葉雄大さん演じる弟・太田薫といるときや、成田凌さん演じる編集者・佐倉潤一に迫られたときの富栄の反応などは、演出部の男性スタッフから「こんなにキャラが変わっていいんですか」と言われたという。しかし蜷川監督は、「好きではない男性の前では女性はそうですよ」と説明し、理解を得たそうだ。

 それを受けて小栗さんが「美知子さんが子供を前に、『お母さん、もうだめかも』と言って涙するところは、ああ、きついって思いながら(映画を)見ていましたし、弟といるときの静子だったり、佐倉といるときの富栄さんだったり、あのへんが、みんなの気が狂い始めたところなので、その場面を見ると、(太宰がいないところでは)みんな、こんなことをしてくれていたんだと思いました」としみじみ語る。すると蜷川監督は、「通常は見られない“裏側”を、(完成した作品を通じて)見ている小栗君を見ているのは楽しかったです(笑い)」と監督ならではの役得を語っていた。

 ◇小栗の健康の秘訣は「ランニング」

 今回、小栗さんは、太宰を演じるにあたり10キロ以上の減量に挑み、最終的には60キロ台前半まで体重を落とした。そんな小栗さんが、健康維持のために行っていることは「ランニング」。2日に1度、10キロほどの距離を1時間かけて走るという。

 食事に関しては、仕事柄、今回のように「食べたいものが食べられないことが結構ある」ことから、「普段(食べてもいいと)許しているときはなんでも食べる」そうだ。ちなみに、一番好きな食べ物に挙げたのは「日本そば」。なお、太宰を演じるために落とした体重は、今は「すっかり元に戻った」という。

 ◇蜷川監督「体より頭のリフレッシュを優先」

 一方の蜷川監督。今年は、今作や「Dinerダイナー」が立て続けに公開され、さらに2020年配信予定のNetflixドラマ「FOLLOWERS」の制作、キルト作家として活動する母・蜷川宏子さんとの二人展の開催、さらに、2020年東京五輪・パラリンピック競技大会組織委員会理事の仕事と、自身が「この1年ぐらい、ちょっとやばい(笑い)」と認めるほど、自由になる時間がなかなか取れない状態だ。そのため、食べ物には「多少気をつけている」といい、撮影現場では「眠くなるのを避けるために炭水化物をとらないようにしています」と語るも、「でも、あんまりできていないかも」と苦笑する。

 蜷川監督の多忙ぶりは小栗さんも感じていて、「それなのにインスタ(グラム)とかを見ていると、いきなり海外とかに行ったりしているでしょう。行かずに休んだらと思うんだけど(笑い)」と気遣うと、蜷川監督は「私の場合、体の休みより気持ちを切り替える方が、優先順位が高いみたい(笑い)。休んだ方がいいのは分かっているんだけど、頭をリフレッシュさせたくなっちゃう。だから常に動いていますね」と笑う。

 それを聞いた小栗さんが、「活動的だな」とつぶやくと、蜷川監督はふと顔を上げ、「あ、ストレスをためないこと。それしか思い当たる節がないな、この元気さは(笑い)。すごく大変ではあるんですけど、やりたいことしかやっていないから」と、蜷川監督流の健康の秘訣(ひけつ)を教えてくれた。

 ◇それぞれの10年後は…

 そんな2人に、10年後の自分の姿を想像してもらうと、現在36歳の小栗さんは「46歳か。未来ってあんまり思い描かないんですよね。だからといって、『今を生きる!』みたいなカッコいい感じではないんですけど……。こんな答えでいいんでしょうか」と恐縮しながら答えた。

 蜷川監督は「将来的にこうしたいというよりは、常に、自分には無理かも、できないかもということをやり続けたいと思っています。2匹目のどじょうを狙った方が楽なんでしょうけど、そうするとやっぱり面白くなくなっちゃう。老後はハワイでゆっくり……みたいなのは全然ないんです。現役でずっと走り続けたい、それが夢ですね」と笑顔で言い切った。    映画は、作家・太宰治(本名・津島修治)が、身重の妻・津島美知子と2人の子供がいながら、作家志望の太田静子や、美容師・山崎富栄と愛人関係を結び、遂に「人間に失格した男」の物語に取りかかる姿を描いていく。太宰を小栗旬さんが演じるほか、美知子を宮沢りえさん、静子を沢尻エリカさん、富栄を二階堂ふみさんが演じる。そのほか成田さん、千葉さん、瀬戸康史さん、高良健吾さん、藤原竜也さんが出演する。

 <蜷川実花監督のプロフィル>

 にながわ・みか 10月18日生まれ、東京都出身。写真家としても活躍。映画「さくらん」(2007年)で監督デビュー。他の監督作に「ヘルタースケルター」(2012年)、「Diner ダイナー」(2019年)がある。Netflixドラマ「FOLLOWERS」が2020年に配信予定。母でキルト作家の蜷川宏子さんとの企画展「蜷川実花・蜷川宏子 二人展-写真とキルトが生み出す極彩色の世界-」が福井・金津創作の森 アートコアで開催中(2019年9月29日まで)。

 <小栗旬さんプロフィル>

 おぐり・しゅん 1982年12月26日生まれ、東京都出身。ドラマ「GTO」(1998年)で連続ドラマ初レギュラー出演。最近の主な出演映画に「信長協奏曲」(2016年)、「ミュージアム」(2016年)、「追憶」「銀魂」(共に2017年)、「銀魂2 掟は破るためにこそある」(2018年)、「Diner ダイナー」、劇場版アニメ「天気の子」(共に2019年)。「罪の声」(2020年)、ハリウッド版「ゴジラ vs キングコング(邦題未定、原題:Godzilla vs. Kong)」(2020年)が公開待機中。

 (取材・文・撮影/りんたいこ)

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