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注目映画紹介:「ジョーカー」ジョーカー誕生の瞬間に鳥肌 顛末は奇抜だがテーマは普遍

 米DCコミックの人気キャラクター、バットマンの宿敵ジョーカーに米俳優ホアキン・フェニックスさんが扮(ふん)した映画「ジョーカー」(トッド・フィリップス監督)が、10月4日からTOHOシネマズ日本橋(東京都中央区)ほかで公開される。ジョーカーがいかにして生まれたかを、人間ドラマ、犯罪サスペンスの様相を呈しながら描いていく。これまでのハリウッドが作るアクションシーン満載のアメコミ原作映画とは全く異質の作品だ。

 「どんな時も笑顔で人々を楽しませなさい」という母の教えに従い、コメディアンを夢見る心優しいアーサー(フェニックスさん)。しかし、ピエロの扮装(ふんそう)で大道芸人をしながら母の面倒を見るアーサーは、決して満ち足りた生活を送れてはいなかった。そんな彼の唯一の楽しみは、カリスマ司会者マレー・フランクリン(ロバート・デ・ニーロさん)のトーク番組を見ること。いつかそこに自分もコメディアンとして呼ばれたいと願っていたが……。

 ずしりと腹にくるほど重い。アーサーという一人の男の内面に迫ったこの映画。ゆがんだ格差社会に押し込められた弱者が、抑圧され続け、限界を超えるとどうなるかを描いている。その顛末(てんまつ)は衝撃だが、決して人ごとではない。アーサーは私たち自身でもある。奇抜な内容だがテーマは普遍的。芸術指向の作品を好むベネチア国際映画祭(第76回)で最高賞・金獅子賞に輝いたのもうなずける。

 ジョーカーはこれまで、「バットマン」(1989年)や「ダークナイト」(2008年)、さらに「スーサイド・スクワッド」(2016年)にも登場していたが、今回、フェニックスさんが演じるジョーカーは、それらとは成り立ちも性格も異なる。しかし、アーサーが赤いスーツにピエロのメイクで振り返った時、その姿に、「ジョーカーの誕生だ!」と鳥肌が立った。(りんたいこ/フリーライター)

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