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綾野剛さん主演の映画「楽園」(瀬々敬久監督)が、10月18日からTOHOシネマズ日比谷(東京都千代田区)ほかで公開される。杉咲花さん、佐藤浩市さんら豪華キャストが集結。地方の町で起きた少女失踪事件を軸に、閉ざされた社会で追い詰められていく人間の姿を描くサスペンス作だ。
「悪人」「怒り」などのベストセラー作家、吉田修一さんの「犯罪小説集」(角川文庫)から、「青田Y字路」と「万屋善次郎」を組み合わせ、「64-ロクヨン-」の瀬々監督が原作にはいない紡(つむぎ)を登場させ、時間経過を巧みに描き出した。
夏祭りの日。偽ブランド品を売る母(黒沢あすかさん)と、手伝う息子の中村豪士(綾野さん)が男たちからいちゃもんをつけられる。そのいざこざを仲裁した藤木五郎(柄本明さん)は豪士を気にかけてくれていた。間もなく、近くのY字路で五郎の孫・愛華が失踪する事件が起こる。
12年後。愛華とY字路で別れた親友の湯川紡(杉咲さん)は、事件を抱えたまま成長し、ある夜、豪士と偶然出会う。一方、田中善次郎(佐藤さん)は、Y字路に続く集落で、亡き妻の面影を追いながらひっそりと暮らしていた……。
ほかに、紡に思いを寄せる幼なじみの野上広呂に村上虹郎さん、善次郎に好意を寄せる女性、黒塚久子に片岡礼子さん、そのほか、根岸季衣さん、石橋静河さんらが出演している。
女の子2人の運命の分かれ道のようなY字路。美しい光にあふれた印象的な風景として映し出される。一人は失踪し、一人は成長したが、心の奥底で事件を引きずっている紡は、孤独を抱えて生きる豪士と共鳴し合う。このことが希望の光になるのかと思いきや、物語は急展開を見せていく。
途中からY字路の先に住む男・善次郎の物語が始まる。人のいい善次郎は、年寄りばかりの集落の中で頼りにされていたが……。
豪士、善次郎を孤独から狂気へと追い立てたものは何だったのか。普通の人間のドス黒さと集団心理の恐ろしさをあぶり出しながら、坂道を転げ落ちるような人生の急展開に衝撃を受ける。綾野さん、佐藤さん、杉咲さんの迫真の芝居に息もつけない。
主題歌は、上白石萌音さんの「一縷(いちる)」。劇場版アニメ「君の名は。」(2016年)や「天気の子」(2019年)の音楽を手掛けたRADWIMPSの野田洋次郎さんがプロデュースした。(キョーコ/フリーライター)