映画「太陽の家」にシングルマザー役で出演した広末涼子さん
女優の広末涼子さんが出演する映画「太陽の家」(権野元監督)が、1月17日に公開された。シンガー・ソングライターの長渕剛さんが、「英二」(1999年)以来、実に20年ぶりに主演を務めた今作で、広末さんは保険会社の営業ウーマンをしながら8歳の息子を育てるシングルマザーの池田芽衣を演じている。広末さんに、長渕さんとの共演のエピソードや息子役の潤浩(ゆんほ)君のこと、さらに女優の仕事について聞いた。
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◇演じた役に共感
「女性は共感できるし、感情移入できる内容なので、大きな役作りはいらない。むしろ素直な気持ちで役と向き合おうと思いました」と今回の役作りを振り返る広末さん。
もっとも、出会ったばかりの長渕さん演じる大工の棟梁(とうりょう)・川崎信吾を自宅に招いたり、どんな人間かも分からない信吾に子供を預けたりと、芽衣の行動には「いくらいろんな事情があるとはいえ、結構無理があるな(笑い)」と思ったのも事実。
しかし、そういった非常識なところはありながらも、「そこまでして保険の契約を取ろうとしたり、他に(子供を)預ける人がいなかったり、彼女のご両親や家庭環境などいろいろ考えると身につまされる思いでした」と芽衣の境遇をおもんぱかり、「そんなときに手を差し伸べてくれる(信吾のような)人がどれだけありがたかったか。そう思ったら余計に胸が熱くなりました」と共感を寄せる。
息子役の潤浩君にも助けられた。「役の龍生のシャイな部分が、たぶん潤浩君本人とリンクしているところがあると思います。すごくナチュラルに役に入っていて違和感がなかったし、すごく子供らしくて可愛かった。この子が自分の子で、この子と離れなければいけないんだと思っただけで胸がいっぱいで、涙をこらえるのに必死でした。潤浩君に現場で癒やされながら、すんなり役に入ることができました」と語る。
◇子役との共演は大変
現在39歳。30代になってから母親役を演じることが多くなった。芝居の世界では「子供と動物には勝てない」とよくいわれるが、広末さんもそれを認める。「他の映画を見ていても思うのですが、無条件に涙腺を刺激する子供の力ってなんだろう。無垢(むく)さなのか、生命力なのか、計算のなさなのか……。子役の子と向き合うときは、なるべくフラットに仲良くなって、彼女、彼らがお芝居しやすいような環境を作るのが自分の役割」だと思い、撮影現場では子役の子と遊ぶことで関係を深めているという。
その一方で、子役との共演の大変さは身に染みている。「大人と違うので、眠いとかおなかが空いたとか、そんな中で仕事をさせなければいけないことは本当なら嫌です。でも、一番近くでコントロールしてあげないといけないということも含めて、大人が振り回されるくらい頑張るからこそ、作品の中で子供の魅力も引き立てられるのだと思います」と語る広末さんに母親の顔がのぞく。
◇台本にない長渕のシーンに「これなんですか?」
映画には、長渕さん演じる信吾が、作業場でストイックに筋肉トレーニングに励む場面がある。その筋肉隆々の肉体は、これが63歳の体かと驚くほどだ。実は、そのシーンは台本にはなく、広末さんも映画の打ち上げでダイジェスト版を見て驚き、長渕さんに「これなんですか(笑い)」と聞いてしまったという。
すると長渕さんは、信吾の心の葛藤を表現するために必要だと監督に自ら進言し、入れてもらったと説明したといい、「長渕さんご自身が、何かに迷ったり、つまずいたり、答えが出ないときに、ああやって自分の体と向き合って追いつめる方なんですよね。だからきっと棟梁(信吾)もそうするんだ、と言われて納得しました。でも、長渕さんの年齢を考えるとすごいと思います。そういう方だからこそ、みんなの憧れであり、時代を背負い続けていけるのでしょうね」と長渕さんの魅力を分析する。
◇役を自然にできるよう入念な準備を重ね…
その長渕さんが演じる信吾は大工の棟梁だ。自分の持つ技術を最大限駆使して仕事にあたる職人。俳優という仕事にも、そういった職人的なものを感じることがあるのだろうか。その問いに、「せりふを覚えるとか役の感情になるのは前提で、それを自然体でできるように、そこまでの準備を重ねて形作っていくところは、役者の職人的な部分なのかなと思います」と答えた広末さん。
実際、広末さんも、和服の所作や点字の勉強、弦楽器の三線(さんしん)や、果てはポールダンスなど、「身に着けなければいけないものをフル装備」して役に挑んできた。1月に公開されるもう1本の映画「嘘八百 京町ロワイヤル」(武正晴監督、1月31日公開)では、人生で初めて体験した茶道を披露している。
「私自身、基本的なことが身に着いていないと不安で、集中できないので、感情が入らなかったりします。そこは時間をかけてでもレッスンしていきたいと思っています」と語る言葉に、女優としての職人魂がのぞいた。
映画「太陽の家」は、大工の棟梁・川崎信吾(長渕さん)が、保険会社の営業ウーマンをしながら8歳の息子・龍生(潤浩君)を育てるシングルマザー、池田芽衣(広末さん)と出会い、2人のために一肌脱ぐ姿を描いた人情物語。信吾の妻役で飯島直子さん、娘役で山口まゆさん、愛弟子役で瑛太さんらが出演する。
<プロフィル>
ひろすえ・りょうこ 1980年7月18日生まれ。高知県出身。1994年にCMでデビュー。1995年、「ハートにS」(フジテレビ系)でドラマ初出演。1997年、「20世紀ノスタルジア」で映画初主演。主な映画出演作に「鉄道員(ぽっぽや)」(1999年)、「秘密」(同)、「おくりびと」(2008年)、「ゼロの焦点」(2009年)、「鍵泥棒のメソッド」(2012年)、「はなちゃんのみそ汁」(2015年)、「ミックス。」(2017年)、「終わった人」(2018年)など。公開待機作に「嘘八百 京町ロワイヤル」(1月31日公開)、「ステップ」(4月3日公開)がある。また、WOWOWオリジナルドラマ「ワケあって火星に住みました~エラバレシ4ニン~」が1月24日から放送スタート。
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