ディズニー映画「クルエラ」の日本版で声優を務めた柴咲コウさん
女優の柴咲コウさんが日本版の声優を務めたディズニー映画「クルエラ」(クレイグ・ギレスピー監督)が映画館・ディズニープラス プレミア アクセス(プレミア アクセスは追加支払いが必要)で公開されている。ディズニーの名作アニメーション「101匹わんちゃん」のヴィラン(悪役)・クルエラの誕生秘話をエマ・ストーンさん主演で実写化した作品。ディズニー史上最もファッショナブルで最も悪名高いとされるクルエラの声を演じ、「そういえば、私もクルエラみたいな反骨心を持ってたじゃん!」と気づかされたという柴咲さんに話を聞いた。
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◇縮こまろうとしていた自分に「カッコ悪!」 クルエラを演じ心境に変化
映画は、ファッションデザイナーを夢見る・少女エステラが、カリスマデザイナー「バロネス」との出会いによって、狂気に満ちあふれた「クルエラ」に変貌していくさまを描く。エステラは、1日でも早くデザイナーになろうと、身を削りながら働き続けるが、さまざまなことが積み重なって運命が大きく変わっていく……という物語。柴咲さんは日本版エンドソング「コール・ミー・クルエラ」の歌も担当した。
今年8月に40歳を迎える柴咲さん。クルエラになっていく若きエステラの姿に、「若い時は誰しも心の奥に抱えているものがあって、満たされなくて。でも、それを吐き出す場所も、受け入れてもらえる場所もない」と理解を示し、「そんな葛藤を抱えている姿に、自分自身の若い頃を重ねて共感するところがありました」と心を寄せる。
その姿は、今の自分の心境にも影響をもたらしたという。
「そういえば、私もクルエラみたいな反骨心持ってたじゃん! なんで、いい子になろうとしていたんだろう。やーめた! みたいな気持ち」とちゃめっ気たっぷりに告白。「私が映画に出始めたときから20年が過ぎ、年齢を重ねるなかで、ちょうど、なんとなく縮こまろうとしていたんです。そんな自分を『カッコ悪!』と思えるようになりました。今は新しいスタートのよう」と語る。
映画は1970年代のロンドン、パンク・ムーブメントの全盛期を舞台にしているものの、「今の時代にも通じる物語」だという。「クルエラ自身の白と黒に分かれた髪色のように、上流階級のための伝統的なファッションと、若者文化の象徴であるパンクファッションの両極を併せ持つのが作品の魅力。文化的背景が根付いているからこそ、変化していく楽しさがある」と見どころを語った。
◇「服は自分自身を楽しませてくれるもの」 自身のブランドに連なるヒントも
デザイナーを目指す少女の物語だけあって、劇中にはクラシックなムードのドレスから、パンクテイストのファッションまで、目を奪われるような華やかな衣装の数々が登場する。
柴咲さんは「『クルエラ』を観るとオシャレがしたくなる」とにっこり。「家にいる時間が長くなると『ラクな格好が一番!』になりがちですが、この映画を観て『そうじゃない!』と感じさせられました。誰かに見られるから着飾るのではなく、服は自分自身を楽しませてくれるもの。その日の気分で服を選べるというのは実はすごく贅沢(ぜいたく)なことです。せっかくそういう機会があるなら、楽しまなきゃ損だと改めて思いましたね」
お気に入りは、エステラがクルエラとして“開花”し、母のネックレスを取り返そうと計画するシーンで着ている、パンク風のブラックコーデ。「ウエストマークがギチッとしていたり、肩にポイントがあったりする、“キュッとしてフワッとした”メリハリのあるデザインの服が好き」という。
自身もアパレルブランド「MES VACANCES(ミヴァコンス)」をプロデュースしていることから、劇中のファッションは「視覚的な喜びはとても大切で、デザイン的にも大いに生かせる部分があります。今年の秋冬アイテムでは、差し色を入れて、遊び心も取り入れていきたいと思っていたので、発想のヒントにもなりました」と刺激を受けた。
一方で、サステナビリティー(持続可能性)を大切にする自身のブランドは「きらびやかな世界とは相反するところもあります。『そこから逃げることなく、課題解決につながる製品を生み出していきたい』という思いは揺るぎません」と力を込めた。
◇年齢は記号 自分を大切に「自然に生きていけたら」
これまで「闇の部分を隠さずに生きている人にひかれてきた」ことから、「『クルエラ』のように善と悪の両面が描かれる世界は、より魅力的」に映ったという柴咲さん。
「やっぱり『光と影』のバランスですよね。陰と陽、静と動の落差があった方が、よりいっそうワクワクする人生になるような気がします。普段の生活が落ち着いているからこそ、女優としてキャラクターを演じる時には、いつもの自分とは違うエッセンスを入れたいんです。今は優しいとか、すがすがしいキャラクターばかりではなく、意志がはっきりしているとか、強いとか、冷酷なキャラクターにも挑戦して、役の振り幅を広げておきたい」と女優としての新境地の開拓に意欲を見せる。
40代を目前にし、「年齢はあくまでも記号にすぎない」と言う。「実年齢よりも若く見られる方がいいなとは思いますけど、それを目指すより精神的に豊かな生き方を心がけていれば、外見にも内面の楽しさや充実が出てくるはず。私にとってはその方が大切」と考えている。
「人は、時代背景や育った環境、親からの影響や教育などさまざまな物事が作用して形成されるものだけれど、自分を一番コントロールできるのは自分。だからこそ、常に自分自身に問いかけ続けることが大切。『自分は何がしたいんだろう?』『何が好きなんだろう?』『何に興味があって何をしているときに、うれしいと感じるんだろう?』と考え続けることが、自分を大切にすることになるんじゃないかな」
現在は、東京と、北海道の2カ所を拠点に生活している。2拠点での生活は「いずれやりたい」と考えていたこと。「コロナ禍で仕事のペースがゆっくりになったことで、予定よりも早く実現しました。今は、何かが終わって、新しい何かが生み出される時期だと思います。そういった流れに、あまり抗(あらが)わずに、自然に生きていけたら」と凛とした表情で語った。
(取材・文/渡邊玲子)
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