11月に上演される「甘くない話 ~ノン・ドサージュ~」で初めて舞台の演出を手がける黒木瞳さん
11月に上演される「甘くない話 ~ノン・ドサージュ~」で、初めて舞台の演出を手がける黒木瞳さんに、舞台への抱負や、エンターテインメントの力について聞いた。
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◇始まりは「ツイン・ピークス」 怖くて笑える舞台に
「11月にすてきな劇場で舞台で演出してみない?と言われて、よし!と引き受けました」と語る黒木さん。「最初に謎解きがいいのではと思ったとき、大好きだったドラマの『ツイン・ピークス』を思い出したんです」。「ツイン・ピークス」といえば、1990年代に放映されて世界的なブームを呼んだデビッド・リンチ監督のドラマシリーズ。「あのドラマの音楽や、“怖いのに笑える”という絶妙さが大好きでしたので、今回、参考にしたんです」という。
ドラマ「ツイン・ピークス」がローラ・パーマーの死で幕を開けるように、今回の舞台も料理研究家の蘭子が死ぬところから始まる。1年後、彼女の一周忌に6人の男たちが集まる。すると突然「蘭子を殺した犯人はこの中にいる」という謎の声が聞こえて……。サスペンス調で始まるが、その後は「笑って泣ける謎解きエンターテインメント」になる予定だ。「決して甘くない時代に、悩みをかかえた若者たちが人のやさしさに触れて自己肯定感に目覚めていく話です」。
キャストは、ドラマやミュージカルなどで幅広く活躍する村井良太さんを主演に、元宝塚娘役トップスターの蘭乃はなさん、歌舞伎俳優の市川九團次さんなど、華やかな顔ぶれがそろった。「舞台は役者のものといいますが、そういう意味でも信頼できる人ばかりです。お客様にたくさん笑ってほしいので、振付はラッキィ池田さんに頼みました」とほほ笑む。
◇初めての演出は、私流で突き進みます
これまで映画やショーでは演出を手がけてきたが、舞台の演出は初めてになる。「“失敗したことがない人は、挑戦したことがない人だ”、というアインシュタインの言葉があって。私は彼のように天才ではありませんが、今回はこの言葉に励まされています」と語る。
女優業と演出業の違いについては、「女優の場合、監督やプロデューサーたちが求めている女性像になるというのが醍醐味(だいごみ)。演出の方は、私がやってほしいことを役者に要求できる面白さがありますね。私は映像の世界が長いのですが“お芝居で人に何かを伝える”ということは舞台も同じ。臆せず演出してみようと思っています」という。
また、「宝塚時代から始まって、蜷川幸雄さんや栗山民也さんなど素晴らしい演出家の方々と舞台でご一緒させていただいた。彼らの演出法を思い浮かべながら、私流に舞台を作っていきたい」と意気込んでいる。
◇人に元気を与えるエンターテインメントを届けたい
「芝居」に対する長年にわたる情熱の原動力には、これまで自分を育ててくれたエンターテインメントへの思いがあるとも。「子どものころに映画館で『風と共に去りぬ』を観(み)たんです。映画の最後にスカーレット・オハラが、家族を絶対に飢えさせない、と言うシーンがあるのですが、その時、私は初めて、たくましく生きるとはどういうことかを知ったんですね。そんな感情を教えてくれたエンターテインメントに感謝していますし、その思いを今度は自分の仕事を通して、還元していければと思っています」。
現在、社会はコロナ禍で演劇も厳しい状況。そのことについては、「映画でも演劇でも、エンターテインメントには人に頑張ろうと思わせる力があります。これからもそれを信じていきたいと思いますね。コロナ禍という時代だからこそ“世の中捨てたもんじゃない”と、この舞台を観て思ってほしい。たくさん笑って、前向きな気持ちになっていただけたらと思っています」と力を込めた。
(取材・文/NAOMI YUMIYAMA)
*……舞台「甘くない話~ノン・ドサージュ~」▽企画・演出:黒木瞳▽脚本:西田征史、吉崎崇二▽出演:村井良大/高崎翔太、馬場良馬、西野太盛、遊佐航、蘭乃はな/市川九團次▽上演:日経ホール(東京都千代田区)で11月3~7日、松下IMPホール(大阪市中央区)で11月13日▽問い合わせ/Zen-A(ゼンエイ) http://zen-a.co.jp/
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