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取材に応じた寺島しのぶさん
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取材に応じた寺島しのぶさん

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私が30歳のころ:寺島しのぶさん「役者としてやっとスタートできた」 インタビュー第1回

 第一線で活躍する著名人の「30歳のころ」から、生きるヒントを探します。第2回は女優の寺島しのぶさん。当時の思い出や、30歳をより輝かせるためのアドバイス、12月4、5日に放送される「2夜連続ドラマスペシャル 山崎豊子『女系家族』」などについて聞きました。(全3回、編集・取材・文/NAOMI YUMIYAMA)

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 山崎豊子の不朽の名作を豪華キャストでドラマ化した「2夜連続ドラマスペシャル 山崎豊子『女系家族』」(テレビ朝日系)が、12月4、5日午後9時から放映される。大阪を舞台に、四代続く「女系筋」の老舗問屋の長女・藤代を演じる寺島しのぶさんにとって、30歳はキャリアの転機だった。

 ◇「役者としてやっとスタートという感じになれたのが、30歳のころでした」

 目が覚めるように美しいピンク色の装いで、おだやかに語る寺島さん。名門の歌舞伎一家に生まれ、幼いころから芝居を見て育ったが、「女は歌舞伎座の舞台に立てない」ことを知ったときから、自分探しが始まる。大学在学中の20歳で女優となり、映画や舞台、ドラマにも出演したが、これだという役にはめぐり合わず、もがいていた。

 「20代はなんでもやりました。そんなにいい役ももらえなかったですし、だからこそ、いろんな役をやって、多くの経験をしようと思ったんです」と、当時を振り返る。

 そんなある日、寺島さんは運命を変える本と出会う。作家・車谷長吉の直木賞受賞作「赤目四十八瀧心中未遂」だ。衝撃を受けた寺島さんは、中に入っていた読書カードに自ら「映画化されたら主役を演じたい」と書いて、出版社に送った。

 「読んでいくうちに、これだけは絶対やりたい、という思いが湧いてきたんです。もちろん手紙を送ったってそれが実現することって難しいですよね。それでも私がやらないとこの役は成り立たないと思ってしまったんです」

 20代で培った直感と情熱に突き動かされ、自ら行動を起こした30歳のとき。それがきっかけとなり、念願の出演オファーが舞い込んできた。

 ◇苦悩の果てに挑んだ映画が人生を変えた

 「赤目四十八瀧心中未遂」(2003年)で演じたいと願った役は、背中に極彩色の入れ墨をした情婦・アヤ。社会のドン底のような世界を舞台にした物語には煽情的な場面もあり、ヌードシーンもあった。周囲は出演を猛反対し、寺島さんも葛藤した。

 「親ともけんかして、どうしようかと迷った時、『欲望という名の電車』の舞台で一緒だった大竹しのぶさんに相談したんです。大竹さんは、『しのぶちゃんがやりたいなら演じた方がいい。後でどうなろうと、自分が決めたという責任で絶対に乗り切れるから。やれるのにやらなかったという方が後で苦しいと思うよ』と、おっしゃってくれて。(演出家の)蜷川幸雄さんの、『しのぶは汚い役をやった方が美しい』、という言葉にも励まされました」

 苦悩の果てに挑んだ映画は、その芸術性の高さと寺島さんの鮮烈な演技で、映画界にセンセーションを巻き起こした。

 「撮影は驚くほど予算がなくて、スタッフと死にもの狂いで作った作品でした。だからこそ、公開していろんな映画賞を受賞したときは、みんなの顔が浮かんで……。アンダーグラウンドな映画で日本アカデミー賞を獲(と)るって、なかなかないこと。本当にうれしかったです」

 ◇どんな時も「私にしかできない役」を求めて

 同時期に、女優人生を変えたもう一本の映画「ヴァイブレータ」(2003年)も公開された。旅先で出会った男女の行きずりの愛を描いた作品で、寺島さんはアル中のルポライターをリアルに演じて、批評家からも絶賛された。

 「20代のころから、私にしかできない役を演じられたらと思っていました。それが『赤目~』だったし、『ヴァイブレータ』でした。この2本がきっかけで、自分のいろんな可能性やビジョンがはっきりしてきたんです」

 30歳での挑戦は、国際派女優として活躍する彼女の原点として、今も輝いている。

 <プロフィル>

 てらじま・しのぶ 1972年12月28日生まれ、京都市出身。父は歌舞伎役者の尾上菊五郎さん、母は女優の富司純子さん、弟は歌舞伎役者の尾上菊之助さん。文学座を経て舞台・映画・ドラマで活躍。荒戸源次郎監督の「赤目四十八瀧心中未遂」(2003年)と廣木隆一監督の「ヴァイブレータ」(同)で国内外の映画賞の女優賞を数多く受賞し、若松孝二監督の「キャタピラー」(2010年)ではベルリン国際映画祭銀熊賞(女優賞)を獲得し、平柳敦子監督の「OH LUCY!(オー・ルーシー!)」(2018年)ではインディペンデント・スピリット賞主演女優賞にノミネートされた。出演近作に「Arc アーク」「空白」「ヤクザと家族 The Family」「キネマの神様」(いずれも2021年)がある。私生活では2007年にアート・ディレクターのローラン・グナシアさんと結婚。1児の母。

*……2夜連続ドラマスペシャル 山崎豊子「女系家族」▽監督:鶴橋康夫▽出演:宮沢りえ、寺島しのぶ/役所広司(特別出演)、奥田瑛二ほか▽テレビ朝日系で12月4、5日午後9時から2夜連続放送。

*……次回は、アラサー女性へのアドバイスを聞く。11月29日掲載予定。

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