女優の長澤まさみさんの主演映画「コンフィデンスマンJP 英雄編」(田中亮監督)が公開された。2018年に放送された連続ドラマから続く人気シリーズの最新作。頭脳明晰(めいせき)で底抜けに明るい信用詐欺師のヒロイン、ダー子を演じた長澤さんに、最新作の見どころや、自身が考えるすてきな女性、暮らしの中で大切にしている時間について聞いた。(全3回)
◇ダー子は簡単には作れない ブレないのは周りを信じる気持ち
ダー子は壮大かつ奇想天外な計画で、欲望にまみれた人間から大金をだまし取る。今回が3作目の劇場版で、長澤さんは自分にとっての「英雄」はダー子だと自信を見せる。
「日本のドラマや映画界において、ダー子のような女性が主人公の作品はこれまであまりなかったし、ダー子がここまで多くの皆さんから愛されるキャラクターに育ったのも画期的なこと。これから新たに似たようなキャラクターを作り上げようとしても、そう簡単には作れないと思うんです」
最新作の舞台は、街全体が世界遺産に登録されているマルタ共和国の首都ヴァレッタ。ダー子は同シリーズおなじみのメンバーや、新たに加わったメンバーとともに迫りくる警察の包囲網をくぐり抜け、壮大な“だまし合いバトル”を繰り広げていく。
「ダー子は周りのみんなを翻弄(ほんろう)しているようで、当たり前のようにみんなのことを信じている人。ずっとそこだけはブレていない気がします。『英雄編』のダー子からは、どこか母のような温かい印象を受けました」
今回は長澤さんはもちろん、出演者全員が「なにか初めてのことにチャレンジした」と言う。
「物語には、みなさんの期待を裏切らないような仕掛けがふんだんにあしらわれています。演じる俳優たちも、さまざまな国の言葉を話したり、いろいろな職業に扮(ふん)したり」といい、「撮影中も新しいことを習得するために、出演者は練習に打ち込んでいました。そんな姿が、私はとてもいいなと感じていました」と振り返った。
◇10代から知る監督との仕事 「お互い着実に前に進んでいる」と喜び
同シリーズでは「台本を読むと、今回はこういう笑いが求められているんだろうなと見えてきますし、できない気がしなくて」とにっこり。笑いを生み出すには「グルーヴ感が欠かせない」といい、「間(ま)が悪いと面白くならないので、(共演者やスタッフの)みなさんと呼吸を合わせることが最も大事」だと話す。
「ポップなコメディーを作るのが得意で、その笑いのセンスを私は信じている」と全幅の信頼を寄せる田中監督は今から約22年前、長澤さんがヒロインを務めた連続ドラマ「優しい時間」(フジテレビ)の助監督だった。「コンフィデンスマンJP」シリーズでドラマから演出、監督を務めている。
「10代の頃からお世話になっている監督と、こんなに長く一緒にお仕事をさせていただいて、お互いに年齢を重ねて着実に前に進んでいることを感じられることもうれしいです。ドラマのころから同じなじみのスタッフで、キャストも仲が良くて、全員がファミリーのような関係なんです」
「また続編をやりたいなという気持ちはありますね」と笑顔を見せた。
(取材・文/渡邊玲子)
*……次回はすてきな女性について聞く