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歌舞伎界の新世代スターとして人気の市川染五郎さん。17歳にしてミステリアスな魅力を放つ染五郎さんの素顔に迫った。(編集・取材・文/NAOMI YUMIYAMA)
◇「鎌倉殿」菅田将暉の言葉に喜び
歌舞伎俳優の松本幸四郎さんを父に、「高麗屋」のプリンスとして注目される染五郎さん。放送中のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に出演すると、凛々しく、美しい姿で視聴者の目をくぎ付けに。歌舞伎の殿堂・歌舞伎座(東京都中央区)で今年6月、17歳の若さで主役を演じたことも話題となった。
――大河ドラマの出演後、反響を感じましたか。
自分は特に変わりませんけど、反響はすごかったようでうれしかったです。父や母も見ていたし、叔母(松たか子さん)からもLINEをもらって。出演する回の放送が終わった時、(脚本の)三谷(幸喜)さんにお礼の電話をしたら、「良かったですよ」という言葉をいただきました。
――放送はご家族と見ていたんですか。
家で母がリアルタイムで見ていたので、録画したものを後で見ました。自分が出ている番組を誰かと見るのは絶対に恥ずかしいので、放送中はお風呂に入っていました。(見るときは)このシーンが使われたんだとか、こんなふうに映るんだとか考えながら見ていました。
――大河ドラマを撮影中、心に残ったエピソードは。
義経を演じた菅田将暉さんと撮影でご一緒したとき、以前、僕が演じた義経の舞台を見に来てくださったと聞いたんです。自分にとって「義経」は歌舞伎で3回演じた、思い入れのある役です。菅田さんが役を作る上で、少しでもその一部になれていたらうれしいなと思いました。
――歌舞伎座では史上最年少で主役に抜てき。「信康」で悲劇の武将・徳川信康を演じました。
最初は、祖父(松本白鸚=はくおう=さん)と二人でできる芝居をと、いくつか候補をいただいて、「信康」を選びました。舞台では本当に先輩方に助けていただきました。お芝居は基本的に相手との掛け合いですので、伝える対象を意識しないと自分一人では空間を作れません。すべてが学びで、刺激的な熱い時間でした。
――公演中、楽屋に必ず置いているものはありますか。
自分は歌舞伎座の初お目見えが2歳で、市川八百稔(やおとし)さんという方に化粧をしてもらっていました。「やおじい」とあだ名をつけて、いたずらばっかりしていたんですけれど、8年前に亡くなられて。一人で化粧をするようになってからは、楽屋にその方の写真を飾って、一回一回、恩返しをするつもりで励んでいます。
◇マイケルと乱歩、ジュリーを愛する17歳
静かで淡々とした受け答えの中に、仕事への強い情熱を感じさせる染五郎さん。私生活で好きなことの話になると、17歳らしい笑顔もこぼれた。
――プライベートで一番楽しいことは。
そうですね……飼っている犬をなでることですかね(笑い)。基本的には一人でいるのが好きなんです。ときどき妹と一緒にゲームをします。といっても自分はゲームが得意じゃないので、強いのは妹ですけど。
――読書はいかがですか。
本を読んで、リラックスすることもありますね。とくに江戸川乱歩は小さい頃から読んでいます。「石榴(ざくろ)」という中編が特に好きです。
――江戸川乱歩の本の魅力は。
子供時代は、明智小五郎とか、少年探偵団とか、子供向けでワクワクするような小説をよく読みました。最近は短編の方が好きで、乱歩らしさが出ているなと感じます。今の時代ではなかなか描けない、グロテスクさもある感じが好きなんです。
――最近、ハマっていることは。
今はマイケル・ジャクソンとデヴィッド・ボウイ、沢田研二さんにハマっています。彼らのビジュアルに対するこだわりと、生き方にインスパイアされますね。
――3人とも染五郎さんとは違う世代ですが、好きになったきっかけは。
マイケルは吉本新喜劇です。父がお笑い好きで、子供の頃よく見ていました。水玉れっぷう隊のアキさんが、マイケルの曲「Bad」で踊り出して、決めポーズの直前で辻本茂雄さんが電話を取ってコケるっていう(笑い)。その後、父が「これが本物のマイケルだよ」ってMV(ミュージックビデオ)を見せてくれました。
最初、マイケルは歴史上の人物ぐらい古い人だと思っていたんです。でも今見てもすごく新しいし、ファッションもかっこいい。こんなに革新的な人なんだと衝撃を受けました。
――沢田研二さんもお父さんの影響ですか。
いえ、「ビリー・ジーン」でマイケルが帽子を投げる演出が好きなのですが、沢田さんも「勝手にしやがれ」で投げているのを見て、興味が湧いたんです。最初はマイケルの影響かなと思って、調べてみたらマイケルより前だった。こんな革新的な人が日本にいたのかと驚きました。
――染五郎さんもファッション誌などで活躍されています。「装うこと」についてはどう思いますか。
「装うこと」は自分じゃない人になれるというか、表舞台に立つ上で必要な要素だと思います。自分の本名である普段の藤間齋(ふじま・いつき)は、すごく人見知りですし、人前に出ることなんてそもそもできないというか。衣装を着たりメークをしたりすることで、市川染五郎になるスイッチが入るんです。
◇アクションにも挑戦? シネマ歌舞伎への思い
8月12日からは、3年前に出演した舞台「三谷かぶき 月光露針路日本(つきあかりめざすふるさと) 風雲児たち」が映画館で上映される。三谷さんが演出・脚本を手掛け、江戸時代にロシアに漂流した船の乗組員たちが再び日本の地を目指す冒険コメディー。最も若い乗組員、磯吉役を演じた染五郎さんは、コメディーや初々しいラブシーンにも挑戦し、フレッシュな魅力を見せる。
――14歳で出演したシネマ歌舞伎は、三谷さんと初タッグの公演ですね。
あの頃は、セリフが現代的な舞台の経験がなく、三谷さんと八嶋(智人)さんから、細かくお芝居のことを教えていただきました。後に大河に出演するご縁を作ってくれた舞台でもあり、自分の役者人生において本当に大切な作品です。
――コメディーにも挑戦されていましたが、その時感じたことは。
コメディーはとにかく思いっきり恥ずかしがらずにやるということですね。照れが出ると笑えないんだと気づきました。歌舞伎座の2000人のお客さまたちに、自分のアクションやセリフでドカンと笑ってもらえて、これ以上気持ちのいいことはなかったです。
――この年齢ならではの、染五郎さんの魅力が満載です。
舞台はもちろん生が一番ですけれど、シネマ歌舞伎では生の舞台の熱量が感じられるし、映画館ならではの楽しさを味わえると思います。歌舞伎を見たことのない人も、堅いイメージをもたずに見ていただきたいです。
――今後なりたい、理想の大人像はありますか。
理想像というか……もっと明るくなりたいと思うことはあります。小さい頃はやんちゃだったのですけど、声変わりを機に、それまで出ていた声がでないことにショックを受けて、変わったんだと思います。子供の頃の性格のまま成長していたら、もっと楽しかったんじゃないかなと思います(笑い)。
――今後も、歌舞伎以外のジャンルに挑戦する意欲は。
そうですね。大河は時代劇でしたので、現代を舞台にしたドラマに挑戦したいです。あとやってみたいのは、アクション。「ジョン・ウィック」という映画が好きなので、いつかあんなゴリゴリのガン・アクションをやりたいですね。
ただ、やっぱり自分の肩書は、歌舞伎役者・市川染五郎です。一番は、歌舞伎の舞台にたくさん出させていただくこと。そしてこれからもいろんな役に挑戦することです。
最後はきっぱりと、大好きな歌舞伎への思いを語った染五郎さん。未来の歌舞伎を背負う、美しさと才能を備えた17歳から目が離せない。
<プロフィル>
いちかわ・そめごろう 2005年3月27日、東京都生まれ。2007年6月、歌舞伎座「侠客春雨傘」で初お目見え。歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」の第3部「弥次喜多流離譚(やじきたリターンズ)」に出演中。
*……シネマ歌舞伎「三谷かぶき 月光露針路日本 風雲児たち」は映画館で8月12~18日(東劇のみ9月1日まで)。大人2200円、学生・小人1500円。舞台の進行に合わせて、物語の見どころなどを音声で解説するアプリ「シネマ歌舞伎イヤホンガイド」(500円)に対応。