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冨永愛さん=NHK提供
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冨永愛さん=NHK提供

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冨永愛:「実際に“男女逆転”してみたらお互いの気持ちが分かる」 ドラマ「大奥」で徳川吉宗役

 モデルで俳優の冨永愛さんが徳川吉宗役で出演するNHKの連続ドラマ「大奥」(火曜午後10時)が1月10日にスタートする。冨永さんが時代劇に出演するのは初めて。数年前から時代劇に出たいという思いを抱き、殺陣を習うなど準備を始めていたという。昨年モデルデビューから25周年を迎えてもなお挑戦を続ける理由やドラマへの思いなどを聞いた。

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 ◇挑戦するのは“一歩踏み出した”先の自分への期待

 モデルとしてパリコレクションなど華々しいステージに立つほか、女優としても挑戦を続ける冨永さん。その原動力はどこにあるのだろうか。

 「いろいろなことに興味、好奇心があり、やってみたいことがたくさんあります。単に『やってみたい』だけでは挑戦する一歩は出ません。その一歩を踏み出すことで、自分の次がある。“一歩”の先に自分がどうなるのか、少し先を見据えて、動き出しています。何年も先のことを考えるタイプではないけれど、1年とか3年とか、それぐらいはなんとなく見ています」

 昨年は、モデルデビューした息子の冨永章胤(あきつぐ)さんとともに、ファッションブランドのキャンペーンモデルに起用されたことも話題になった。

 「(息子とは)仕事についてはあまり話しません。何か聞かれたら、もちろん先輩として答えることはありますが、押しつけるつもりはありません。仕事に対しての考え方などは、自分の経験で培っていくものだと思うので」

 次に挑戦したいことをたずねると、「今はキャパシティーがいっぱいなので、ない」と即答。「吉宗に全力投球。後悔したくないので、200%ぐらいの感じでやってます(笑い)。ちゃんと吉宗になれているのか、いつもドキドキしながら……。(初回放送の)1月10日は気が気じゃない。胃が痛いです」と思いを明かした。

 ◇現実社会で“男女逆転”したら…

 同ドラマで冨永さんが演じる徳川吉宗は、紀州徳川家の二代藩主・徳川光貞の3女で、姉2人が急死したため藩主に就任し、その後、徳川幕府八代将軍となる。大奥で吉宗の世話をするのは男性たちで、男女逆転の世の中を描く。

 「この『大奥』が、ジェンダーの問題や多様性が語られる今、ドラマ化され、NHKで放送されることは、大きな問題提起になると思います。“男女逆転”を見ることによって、女性の大変さ、男性の大変さ、それぞれに気付けるかもしれません。

 できることなら、現実社会でも実際に一回逆転したらいいと思います。そうしたらお互いの気持ちが分かるし、男性が出産を経験できたら考え方が変わるかも……」

 ◇海外に出て分かった「文化を知らない恥ずかしさ」

 「前から時代劇をやりたいと言っていた」という冨永さんは、同ドラマ出演のオファーを受けて、どの役を演じるか分からない状態で原作を読み、自身の役は「吉宗っぽいな」と思っていたという。

 「消去法で、家光は絶対にないし、綱吉もないな、と。パブリックイメージの冨永愛と吉宗のキャラクターは似てるなとも思いました。吉宗は英断するイメージがあり、冨永愛も男勝りでスパッとやりそうじゃないですか(笑い)」

 もともと歴史小説が好きだったというが、最初に興味を持ったきっかけは、家族旅行で白虎隊について知ったこと。「当時の自分と同じ10代そこそこで戦争に行っていたのか、と衝撃を受けたのが根底にあります」という。

 さらに、モデルとして海外で活動する中で、「海外の若者が自国の政治や文化についてよく知っているのに対して、自分はあまり知らないことに恥ずかしさを感じた」経験も、歴史への興味を深める一端を担ったようだ。歴史小説を読み、日本の文化に興味を持ち、文化を学ぶために着付けを習っていたという。

 歴史を知り文化を学ぶ中で、俳優の仕事もする冨永さんにとって「時代劇に出るのは自然な欲望だった」と話す。

 ◇ランウエーを歩いて気付いた「歩き方は生き様」

 時代劇に挑戦したいと思ってから、殺陣のけいこを始めた。

 「乗馬はもともとできましたが、時代劇用の乗馬の仕方など、いつか役が来たときのために準備をしていました。時代劇で、自分がどんなキャラクターを演じられるのか考えました。そもそも女性役だと着物の丈が足りないな、と。プライベートで仕立てる時も男性用の反物を使うので……。衣装で用意されている着物は絶対にサイズが合わないので、男役しかないと思っていました。例えば、歴史上の人物で、“男性とされているけど実は女性だった”説がある人など。だから殺陣を習ったんです」

 演じて一番難しかったのは歩き方。時代劇の歩き方は、モデルとして、ヒールの高いパンプスでランウエーを歩くのとは大きく違う。監督や所作の指導者と相談して吉宗の歩き方を決めていったと語る。

 「普段ランウエーを歩いていて感じるんですが、歩き方には性格や人物像、つまり生き様が表れます。吉宗は武術が達者で、そういう人なりの歩き方をマスターするのが大変でした。女々しさはないので、ちょっと歩幅を大きくするとか、自分の中で“吉宗っぽい”と思えるものを探りました」

 模索する中で、殺陣を習っていた経験が生きたという。「殺陣はつま先を使わない、常に重心を真ん中に置くので、習っていてよかったです」

 ◇大切にしているのは「ニュートラルでいること」

 ドラマでは、はやり病がきっかけで男女逆転の世の中になり、変化に対応せざるを得ない状況が描かれる。冨永さん自身は変化に対応するために心掛けていることはあるのだろうか。

 「柔軟でいることを大切にしています。ニュートラル、つまりゼロでいるところに、ヘアメーク、スタイリングされ、カメラマンが撮影して……と作品が生まれます。自分が前に出過ぎても、引っ込み過ぎても、写真はいい作品にはならない。ニュートラルの状態で、柔軟に変化していけるかどうか、それがモデルの仕事。そういう考えがあるから、時代の変化に対しても柔軟でいられる気がしています」

 40歳を過ぎて何か変化を感じたかを問うと「『40歳になった』という実感がなく、そもそもただの数字だし、あまり意識することはありません。20代と同じ量の仕事をしているとさすがに疲れますが……(笑い)」

 思い込みや数字に縛られることなく、柔軟に対応する冨永さんが、次にどんな一歩を踏み出していくのか、目が離せない。

<プロフィル>

 とみなが・あい 神奈川県出身。15歳でモデルデビューし、17歳でニューヨークコレクションでデビューし、話題となる。以後、世界の第一線でトップモデルとして活躍し、25周年を迎えた。モデルのほか、テレビ、ラジオ、イベントのパーソナリティー、俳優などさまざまな分野にも精力的に挑戦している。

 *……連続ドラマ「大奥」は、よしながふみさんの同名マンガが原作。マンガは江戸幕府の三代将軍・家光の時代から幕末・大政奉還にいたるまで、男女が逆転した江戸パラレルワールドを描いてセンセーションを巻き起こした。同ドラマの「8代・徳川吉宗×水野祐之進編」は、貧乏旗本の息子・水野祐之進がとある理由から大奥入りを決意。吉宗から、大奥で最初に声がかかるが……というストーリー。

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